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第3章 打倒、聖フランチェスカ教国編
16 結界、破れる
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今大神殿の前に教国に反旗を翻えそうとしているアーレス、ヘラ、ウィンディ、朱雀、青龍、玄武、そして中央大陸と大神殿を守る結界の要である黄龍が揃っている。
アーレスは未だ目を覚まさない黄龍を見ながら考える。
「さて、あまりゆっくりしている暇はない。青龍、まずこの結界を解くために黄龍を起こしてもらえるか?」
「畏まりました。では失礼して」
青龍は横たわっていた黄龍の上半身を起こし、両肩に手を置き深呼吸する。
「──ハァッ!!」
「ひぐっ!? え? え? な、なにが??」
「おぉ、さすが武道家青龍だ! 腕は落ちとらんな」
「武道家……青龍は武道家だったのか」
ようやく目を覚ました黄龍だが、突然人に囲まれ、外にいた事で混乱していた。
「何で外に!? 私暗い部屋にずっと繋がれてたのに!?」
「私達が救い出したのですよ、黄龍」
混乱する黄龍の前に青龍と玄武が並ぶ。
「黄龍よ、ワシらが教国に協力していた理由はわかるな?」
「あ、玄武……。うん、私達は絶滅しかけているから……教国に守ってもらうために……」
「ボクの仲間は一回殺されたけどね」
「あ! 朱雀!」
青龍、玄武の隣に朱雀も並ぶ。
「殺されたって……」
「そ。ボクがアーレスに負けて塔を失ったからってね。一緒に来た火鳥族五人は汚され、殺され、見せしめに磔にされたんだよ」
「そんな……!」
黄龍は火鳥族の最後を知り悲しみを浮かべる。
「でもアーレス様が生き返らせてくれて今は魔王国にいるんだっ」
「え?」
「それに、アーレス様は全部片付いたら私達を魔王国で守ってくれるって言ってくれたんだよ」
そこに玄武も続く。
「ワシの仲間も地下牢で息絶えておった。これでワシは教国に抱いていた不信感を確実なものにしたわ」
「……」
黄龍は黙り玄武の言葉を待つ。
「この世界に巣食う悪は聖フランチェスカ教国じゃ! 精霊神様を崇拝するふりをし、それを理由に罪なき者を断罪しておるっ! さらに! ワシらを守ると言ってはおるが、実際は危険な魔物が棲家とする森の中に押し込んだだけじゃ!」
「そうですね。守ると言えば聞こえは良いですが、あれはただ隔離しているだけに過ぎません」
「黄龍ちゃん、ボク達が幸せに暮らせる場所は教国には作れないよ。さあ、結界を解いて!」
「……わかり……ました」
その時だった。豪快な笑い声と共に空から大きな塊が飛来してきた。
「ガハハハハハッ! 見つけたゼェェ……侵入者! それとぉぉぉ……裏切り者がっ! エサが雁首揃えて何してやが──」
「うるさい。お前は死ね」
「はれ? 何で地面が迫っ──」
登場し一秒、白虎の首は地面に転がり身体は大きな音をたて地面に倒れた。アーレスが接近を許すはずもなく、その場にいた玄武と黄龍はアーレスの力を初めて目の当たりにし、その強さに身震いした。
「白虎は粗暴な奴じゃが……それなりに強かったはずなのじゃがな」
「す、凄い……。何をしたか全然見えなかった!」
「強い? 雑魚だろあんな獣。それより黄龍。ほら、結界を解いてくれ」
「え? あ──」
黄龍は少し悩み、アーレスに問い掛けた。
「あのっ!」
「ん?」
「あなたが……あなたが目指す世界はどんな世界ですか!」
「俺の目指す世界?」
「はいっ!」
黄龍はアーレスに真剣な眼差しを向ける。
「聖フランチェスカ教国は精霊神の教えを広め、世界を平和に導き、争いのない世界を目指すと言ってました!」
「……はぁ。嘘と欺瞞、従わない者は皆殺しにする国がよく言ったな」
「だから私は教国に手を貸しました。私は……争いのない世界を見てみたい!」
「……黄龍、甘いよお前」
「え?」
アーレスはヘラを見ながら言った。
「黄龍、世界から争いが消えてなくなるなんて事は決してない」
「……」
「神の世界、天界でさえ争いがあるんだ。人が二人いたら意見は食い違い争いは必ず起きる。それが摂理だ」
「で、でも!」
「だから俺は争いを失くすなんて言わない。争いたければ争えば良いし、止めはしない。だが、俺や俺の愛する者に害を与える奴は容赦しない。必ず裁きを与え、愚かさを自覚させる。俺はな、俺が愛する者と俺を慕う者、付き従う者だけが幸せに暮らせる世界を目指している」
黄龍は開いた口が塞がらなかった。
「そんなの……教国より性質が悪いじゃない!」
「ああそうさ。俺は悪人だ。だが正義を押し付ける気はない。綺麗言で希望をもたせる事もない。俺は職業のせいで追放され、魔族と出会った。だがな、職業差別を生み出したのは教国だ。だから潰す。これ以上俺のような不幸を生まないためにだ」
「……職業……か。そうだね、私の職業も──」
そこでアーレスは疑問を抱いた。
「待て黄龍。お前……まさかそのナリで二十歳超えて……」
「私大人だもん! こう見えても二百年は生きてるんだからね!」
「に、二百年!? 嘘だろ!?」
驚くアーレスに青龍が耳打ちした。
「アーレス殿、黄龍の言葉は事実でございます。黄龍は……百九十年前から今の姿なのですよ」
「は……それはまた……」
改めて見ても少女にしか見えない。
「なに? まだ二十年ちょっとしか生きてない子どもが何か文句でも?」
「……文句なんてないさ。見た目は人それぞれだからな。そうか、職業か。まさかお前の職業は……」
「そう、私の職業は【結界師】よ」
「なるほどな。じゃあ……結界を解いてくれ。この国を滅ぼした後にお前の望みを叶える」
「……絶対だよ。嘘ついたら魔王国だけ外に出られない結界を張るからね!」
「ああ、それで構わないよ」
黄龍は大神殿の方を向き手をかざす。
「五行結界……解除!」
するとガラスが割れるような音が聞こえ、大神殿を包んでいた結界が崩壊した。無理矢理解除したわけではないため、大神殿が浮き上がる事もない。
「よし、解けたな。これで敵は大神殿の中だけだ」
「アーレスちゃん、どうする?」
アーレスは言った。
「母さん達は地下牢に囚われている者を救い出し、港に避難してくれ」
「死体も回収しとく?」
「ああ。死後時間が経過し過ぎていなければウルスラの力で何とかなるからな。捕まってる奴らと協力して運び出してくれ」
「わかったわ。じゃあ私達は下ね。朱雀、青龍、玄武に黄龍ちゃん?」
「黄龍ちゃんじゃなぁぁぁぁい! って……あれ? 雰囲気が……」
ヘラが邪神ヘルに変わる。
「私は邪神ヘルよ。さっさと終わらせてゆっくりしたいんだから手間取らせないでよね」
「じ、邪神……ヘルですか。精霊神に逆らいし三柱が一柱では……」
「ちなみに酒呑童子も降りてるわよ。みんなアーレスちゃんが大好きなの。アーレスちゃんの敵は私達の敵、覚えておいてね?」
「「「ははは……はい」」」
青龍達は真っ青になり、ヘルに頭を下げるのだった。
アーレスは未だ目を覚まさない黄龍を見ながら考える。
「さて、あまりゆっくりしている暇はない。青龍、まずこの結界を解くために黄龍を起こしてもらえるか?」
「畏まりました。では失礼して」
青龍は横たわっていた黄龍の上半身を起こし、両肩に手を置き深呼吸する。
「──ハァッ!!」
「ひぐっ!? え? え? な、なにが??」
「おぉ、さすが武道家青龍だ! 腕は落ちとらんな」
「武道家……青龍は武道家だったのか」
ようやく目を覚ました黄龍だが、突然人に囲まれ、外にいた事で混乱していた。
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「私達が救い出したのですよ、黄龍」
混乱する黄龍の前に青龍と玄武が並ぶ。
「黄龍よ、ワシらが教国に協力していた理由はわかるな?」
「あ、玄武……。うん、私達は絶滅しかけているから……教国に守ってもらうために……」
「ボクの仲間は一回殺されたけどね」
「あ! 朱雀!」
青龍、玄武の隣に朱雀も並ぶ。
「殺されたって……」
「そ。ボクがアーレスに負けて塔を失ったからってね。一緒に来た火鳥族五人は汚され、殺され、見せしめに磔にされたんだよ」
「そんな……!」
黄龍は火鳥族の最後を知り悲しみを浮かべる。
「でもアーレス様が生き返らせてくれて今は魔王国にいるんだっ」
「え?」
「それに、アーレス様は全部片付いたら私達を魔王国で守ってくれるって言ってくれたんだよ」
そこに玄武も続く。
「ワシの仲間も地下牢で息絶えておった。これでワシは教国に抱いていた不信感を確実なものにしたわ」
「……」
黄龍は黙り玄武の言葉を待つ。
「この世界に巣食う悪は聖フランチェスカ教国じゃ! 精霊神様を崇拝するふりをし、それを理由に罪なき者を断罪しておるっ! さらに! ワシらを守ると言ってはおるが、実際は危険な魔物が棲家とする森の中に押し込んだだけじゃ!」
「そうですね。守ると言えば聞こえは良いですが、あれはただ隔離しているだけに過ぎません」
「黄龍ちゃん、ボク達が幸せに暮らせる場所は教国には作れないよ。さあ、結界を解いて!」
「……わかり……ました」
その時だった。豪快な笑い声と共に空から大きな塊が飛来してきた。
「ガハハハハハッ! 見つけたゼェェ……侵入者! それとぉぉぉ……裏切り者がっ! エサが雁首揃えて何してやが──」
「うるさい。お前は死ね」
「はれ? 何で地面が迫っ──」
登場し一秒、白虎の首は地面に転がり身体は大きな音をたて地面に倒れた。アーレスが接近を許すはずもなく、その場にいた玄武と黄龍はアーレスの力を初めて目の当たりにし、その強さに身震いした。
「白虎は粗暴な奴じゃが……それなりに強かったはずなのじゃがな」
「す、凄い……。何をしたか全然見えなかった!」
「強い? 雑魚だろあんな獣。それより黄龍。ほら、結界を解いてくれ」
「え? あ──」
黄龍は少し悩み、アーレスに問い掛けた。
「あのっ!」
「ん?」
「あなたが……あなたが目指す世界はどんな世界ですか!」
「俺の目指す世界?」
「はいっ!」
黄龍はアーレスに真剣な眼差しを向ける。
「聖フランチェスカ教国は精霊神の教えを広め、世界を平和に導き、争いのない世界を目指すと言ってました!」
「……はぁ。嘘と欺瞞、従わない者は皆殺しにする国がよく言ったな」
「だから私は教国に手を貸しました。私は……争いのない世界を見てみたい!」
「……黄龍、甘いよお前」
「え?」
アーレスはヘラを見ながら言った。
「黄龍、世界から争いが消えてなくなるなんて事は決してない」
「……」
「神の世界、天界でさえ争いがあるんだ。人が二人いたら意見は食い違い争いは必ず起きる。それが摂理だ」
「で、でも!」
「だから俺は争いを失くすなんて言わない。争いたければ争えば良いし、止めはしない。だが、俺や俺の愛する者に害を与える奴は容赦しない。必ず裁きを与え、愚かさを自覚させる。俺はな、俺が愛する者と俺を慕う者、付き従う者だけが幸せに暮らせる世界を目指している」
黄龍は開いた口が塞がらなかった。
「そんなの……教国より性質が悪いじゃない!」
「ああそうさ。俺は悪人だ。だが正義を押し付ける気はない。綺麗言で希望をもたせる事もない。俺は職業のせいで追放され、魔族と出会った。だがな、職業差別を生み出したのは教国だ。だから潰す。これ以上俺のような不幸を生まないためにだ」
「……職業……か。そうだね、私の職業も──」
そこでアーレスは疑問を抱いた。
「待て黄龍。お前……まさかそのナリで二十歳超えて……」
「私大人だもん! こう見えても二百年は生きてるんだからね!」
「に、二百年!? 嘘だろ!?」
驚くアーレスに青龍が耳打ちした。
「アーレス殿、黄龍の言葉は事実でございます。黄龍は……百九十年前から今の姿なのですよ」
「は……それはまた……」
改めて見ても少女にしか見えない。
「なに? まだ二十年ちょっとしか生きてない子どもが何か文句でも?」
「……文句なんてないさ。見た目は人それぞれだからな。そうか、職業か。まさかお前の職業は……」
「そう、私の職業は【結界師】よ」
「なるほどな。じゃあ……結界を解いてくれ。この国を滅ぼした後にお前の望みを叶える」
「……絶対だよ。嘘ついたら魔王国だけ外に出られない結界を張るからね!」
「ああ、それで構わないよ」
黄龍は大神殿の方を向き手をかざす。
「五行結界……解除!」
するとガラスが割れるような音が聞こえ、大神殿を包んでいた結界が崩壊した。無理矢理解除したわけではないため、大神殿が浮き上がる事もない。
「よし、解けたな。これで敵は大神殿の中だけだ」
「アーレスちゃん、どうする?」
アーレスは言った。
「母さん達は地下牢に囚われている者を救い出し、港に避難してくれ」
「死体も回収しとく?」
「ああ。死後時間が経過し過ぎていなければウルスラの力で何とかなるからな。捕まってる奴らと協力して運び出してくれ」
「わかったわ。じゃあ私達は下ね。朱雀、青龍、玄武に黄龍ちゃん?」
「黄龍ちゃんじゃなぁぁぁぁい! って……あれ? 雰囲気が……」
ヘラが邪神ヘルに変わる。
「私は邪神ヘルよ。さっさと終わらせてゆっくりしたいんだから手間取らせないでよね」
「じ、邪神……ヘルですか。精霊神に逆らいし三柱が一柱では……」
「ちなみに酒呑童子も降りてるわよ。みんなアーレスちゃんが大好きなの。アーレスちゃんの敵は私達の敵、覚えておいてね?」
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