現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第1章 再誕

04 弱すぎじゃね?

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 初めての対人戦。この世界では初めてだが、この程度の人数なら地球で何度も経験している。そして俺は人を殺める事など何とも思っちゃいねぇ。
 取り敢えず目の前には破落戸ごろつきが五人。どいつも短剣は持っちゃいるが、その構え方も握り方もまるで素人だ。体捌きもどんくさい。これなら俺の背中を長ドスで貫いてくれたあの極道の方がまだマシなレベルだ。

「おっらぁぁぁっ! 真っ赤に裂いて死んじまいなぁぁぁぁぁっ!」
「お前がな。空中に飛んでどうすんだ? 隙だらけだよ、バカが」
「……あ……あ……れ?」

 短剣を頭の上に構え頭上から俺を貫こうと飛び掛かってきた破落戸を俺は横凪ぎ一閃。両腕もろとも胴体から首をお別れさせてやった。

「「「「ひぃっ!?」」」」

 頭部を失った胴体は鮮血をまるで噴水の様に吹き出し、地面にぐしゃりと落下した。俺の全身は真っ赤に染まり、人を殺った事で気分が高揚し始めた。

「くくっ、くはっ。お前らの血も紅いのかぁぁぁ……。くくくっ、くははははっ! 良いねぇ……、紅は俺が最も好きな色だ……。そしてこの香り……! すぅ~……。くくくっ、どんな高級な酒だろうがこの香りには勝てねぇ……。ひははっ、楽しいなぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「こ、こいつ……! く、狂ってやがるっ!」
「ひはははははっ! 残る血袋は四つかぁぁぁ……。おい、逃げんなよ? もっと俺を楽しませろやっ!」
「「「「う、うわぁぁぁっ!」」」」

 先ほどまで殺る気満々だった破落戸共は一人殺られた途端に怯え、俺に背を向けて逃げ始める。

「逃げんなっつってんだろうがよぉぉぉぉっ!」
「がっ!?」

 俺は最初に殺った破落戸が持っていた短剣を拾い上げ、逃げる男の頭部目掛けて投擲した。短剣は男の頭蓋骨を貫き、脳を破壊する。頭に短剣が突き刺さった男は両目両耳から血を垂れ流し地面に転がった。

「さあ、残りは三人だ。次に死ぬのはどいつかなぁぁぁぁぁ?」
「「「う、うわっ! だ、誰か助けてくれぇぇぇぇぇっ!」」」 

 破落戸共は必死に声を張り上げ周りに助けを求めるが、誰一人として俺達と目を合わせようとしなかった。

「そ~ら、追い付いたぁぁぁぁ!」
「うわっ! うわぁぁぁぁぁぁっ!! あっ……がはっ……!」

 俺は逃げる破落戸の両足を切り離してやった。

「あ、足ぃぃぃぃ……っ! お、俺の足がぁぁぁぁっ! た、頼むっ! 治してくれよぉぉぉぉっ!」
「治す? ……ああ、まさか魔法とやらがあるのかここには……」

 俺はなおも逃げる二人の破落戸に向かって叫んだ。

「お前ら止まれっ!! 今止まれば逃がしてやるよ!」

 その声に破落戸二人はピタリと足を止めた。

「ほ、本当か? 逃がしてくれんのか?」
「ああ、ただし……こいつを治して見せろ。お前ら仲間なんだろ? 俺は仲間を捨てて逃げる奴が大嫌いでなぁ? 俺の目の前でこいつを治せたら特別に見逃してやる。どうだ? 悪い取引じゃねぇだろ?」

 破落戸二人は慌てて首をふった。

「む、無理だ! 俺の信仰心じゃあ止血は出来ても切断された足を繋ぐ事なんて出来ねぇよ!」
「お、俺もだ! 切断された足を繋ぐなんて高位の僧侶じゃなきゃ無理だっつーの!」
「た、助けてくれよぉぉぉぉっ! 血が……血が止まらねぇんだよぉぉぉぉっ!」

 俺は両足を失った男の背を踏みつけている。

「なら止血だけでもしてやれよ。そんでそこに転がってる両足持ってその僧侶んトコに駆け込みな」
「そ、そんな金あるわけねぇだろうが!」
「そうだ! んな金あったらこんな場所に住んじゃいねぇよ!」

 どうやら治療には金がかかるらしい。それもおそらく大金がだ。

「助けてくれよぉぉ……、仲間だろぉ……っ!」
「し、知らねぇよ! 元はお前が言い出したんだろうが!」
「そ、そうだっ! な、なぁあんた……。全部そいつが悪いんだよ。そいつは好きにしていいからよ、俺達は見逃してくれよ。な?」

 こいつらに仲間意識というものはないのか。ギャングでも極道でも仲間は家族同然だった。そんな絆がこれっぽっちも感じられない。

「……はぁ。もい良いや。とりあえずお前死んどけ」
「あ……がっ……」

 俺は足元にいた破落戸の首を踏み抜き、骨の折れる感触と音を楽しみながら絶命させた。すると三人目を殺った俺の身体に変化が起きた。

《レベルアップ。ジェイドのレベルは2に上がりました。また、今殺した相手がレベル1だったため、ジェイドが所持するスキル【邪眼】が発動します》

「ん? なんだ今のは……?」

 破落戸二人はまるでゴミ虫の様に踏み潰された仲間を見て股を濡らして地面に座り込んでいた。

《スキル【邪眼】の効果により、相手が所持していたスキル【火炎弾】を奪いました》

「火炎弾? なるほどな。こうやって雑魚からスキルを奪うわけか。なら……」

 俺は地面に座り込んでいた二人に近付く。二人の瞳は絶望に染まっていた。

「股が濡れてんな。心配するな、今乾かしてやるよ。【火炎弾】」
「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 俺は恐怖で動けなくなった破落戸二人をその仲間から得たスキルで炭化するまで焼き付くしてやった。

《スキルレベルアップ。スキルで相手を死に至らしめたため、経験値が追加されました。ジェイドの火炎弾がレベル2にアップします》

「なるほど。スキルを使って殺せばスキルのレベルが上がると……。これはちょっと色々検証しないとなぁ……。くくっ、くはははっ……くはははははははっ!!」

 新たな力を得た俺はかなり興奮していた。しかもだ、手から炎は弾が撃てるんだぞ。地球じゃこうはいかなかった。これで新しい殺し方が手に入ったと言うわけだ。

「これは良い……。まさかこんなに良い世界だとは思わなかったよ。こりゃ癪だがあのジジィに蚤くらいは感謝してやらないとなぁぁぁぁっ? いやぁ~……、実に俺向きの素晴らしい世界じゃないか! くはっ、くはははははっ!」
「……それは良かったな。その良い気分のまま死ぬといい。邪教徒め」
「あ? がっ……!?」

 俺は背中に死んだ時と同じ様な熱と痛みを感じた。

「て、てめぇ……ぐはっ……!?」

 俺の背中からレイピアが引き抜かれる。

「ふん、邪教徒がにわか信者を狩ったくらいで良い気になっているからだ。そこで死ぬまで地面を舐めるが良い」

 そう口にしたのは白銀の鎧に身を包んだ女騎士だ。貧民街の誰かが通報でもしたのだろう。
 俺はその女騎士が立ち去るまで死んだフリを続けるのであった。 
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