現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第1章 再誕

13 混乱する聖神教

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「な、なにっ!? 碧騎士が死んだだとっ!?」
「はっ! 聖女捜索で森に向かった教徒一万もおそらく死んだものと思われます! あまりに帰りが遅いため新たに捜索隊を出した所、この鎧と山積みとなった教徒の死体が……」
「ば、バカな……! あれは四騎士の一人だぞっ! あの森であいつに敵う魔物などいるわけないだろうっ!」

 教皇は報告を聞き怒り狂っていた。そこに残る四騎士の三人が顔を出す。

「ま、良いんじゃねぇの?」
「何が良いのだっ!」
「そうだな、あいつがいなくなった所で我らにはなんの影響もない」
「な、なに?」
「そうですねぇ。むしろ騒がしいガキが消えて精々してるくらいですよ」
「お、お前ら……! 仲間が死んだかもしれんと言うのになんて言い草だ!」

 それを紅騎士フレイが笑い飛ばす。

「ハッハー! 仲間? あんなガキなんて仲間じゃねぇっつーの。クソ雑魚の癖にやたら態度はでけぇし働かねぇしよぉ」
「ですねぇ。私達は騎士の鏡でなければなりません。あんな怠惰なガキはいなくなってくれた方が聖騎士のためにも良かったのですよ、教皇様」
「これから我らは三騎士として動く。教皇、許可を」

 教皇は碧騎士がいなくなったにも関わらず、それを喜ぶ三人に呆れてこう告げた。

「……わかった。今日からは三騎士とする。一人欠けた分はお主らで埋めるように。下がれ」
「あばよ」
「失礼しますよ」
「……」

 三騎士は教皇の部屋を出た。

「あやつらめ……。少しばかり強いからと調子に乗りおって……!」
「あの……、教皇様。聖女様の件は如何いたしましょうか?」
「……聖女は死んだ。そう民に伝えよ。そして最近生まれた民の中に【聖浄化】スキルを得た者がいないか探し出せ。その者を次代の聖女として教育せよ。いけ」
「はっ! 畏まりました!」

 それからすぐに聖地ユグドールに聖女の死と碧騎士の死が告げられ、聖地は悲しみに包まれた。

「僕生きてるんだけどな~」
「ははっ、生きてるのはリーシャだ。ウッドはあの森で死んだ。それで良いしゃないか」
「だねっ。ジェイド~、あそこの屋台で何か買ってよ ~」
「良いけど食い過ぎんなよ。後で運動するんだからよ」
「え~、今日もしちゃうの? ジェイドってそればっかじゃん」
「いやなのか?」
「いやじゃないけどさ~。赤ちゃん出来ちゃうよ?」
「……お前には多分まだ出来ないと思うぞ」
「え? なんでさ~」

 俺はリーシャに子供の作り方をミッチリ教えてやるのだった。

 それから一ヶ月、未だに新たな聖女候補は見つからないままだった。

「おかしいですねぇ。聖女が死んだのなら【聖浄化】は次の聖女候補者に引き継がれるはずです。それなのにいくら探しても見つからないなど……」
「……まさか聖女は生きている?」
「そりゃねぇだろ。碧騎士と一万の聖騎士でも死んでんだぜ。聖女ごときがあの森で生きていられるわけねぇよ」

 三騎士も聖女候補者捜索に駆り出されていた。

「ではこの聖地以外で生まれた?」
「いや、各支部からそんな報告はきていない」
「じゃあ支部のない小さな村とかで生まれたんじゃねぇの?」
「……それはかなり面倒ですねぇ。なにせ地図にない村上など山のようにあります」

 紅騎士がキレる。

「あぁぁぁぁもう面倒臭ぇな! なんで聖女なんかに拘ってんだよ。別にあんなもんいらねぇじゃねぇか!」
「そうはいきませんよ。聖女は私達聖神教のシンボルですからねぇ。不浄の者を浄化する力、これを失ってはなりません」
「ちっ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 紅騎士が椅子を蹴り飛ばした。それが偶然近くにいた俺に向かって飛んで来た。

「ってぇな。何すんだコラ」
「あぁぁぁんっ!?」

 俺の言葉にフレイの苛立ちが増した。

「コラってなんだよ、アァァッ? 俺を誰だと思ってんだゴラァッ!?」
「鶏に知り合いなんていねぇよ。んだその頭。ああ、三歩歩いたら忘れっからそんな頭してても恥ずかしくねぇんだよな」
「て、てめぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 いきり立つ紅騎士を黄金騎士が止める。

「止めなさいフレイ。今のはあなたが悪い」
「あぁっ!?」
「君もです。仮にも私達は聖神教の三騎士ですよ。確かにこちらが悪かったですが、口のきき方には注意しなさい」
「……ボケてんのかハゲ。悪いなら謝るのが当たり前だろうが。そこの鶏が俺に椅子ぶつけてきたんだろうが。俺は当たり前の抗議をしてるだけだぞ。まさか三騎士ともあろう者が人に傷を負わせて謝りもしねぇなんてな。やれやれ、聖女も死んだようだし、聖神教も終わりだな」

 その言葉に今度は黄金騎士アースがキレた。

「これはハゲではありません! 剃っているだけですよっ!」
「アース、落ち着け。悪いのは我々だ。済まなかった、どうか許して欲しい」

 そう言って頭を下げたのは蒼騎士のコルドだ。 

「最初からそうやって謝りゃ良いんだよ。鶏もハゲも見習えや」
「「こ、この野郎……!」」
「よせ。君、それくらいで勘弁してくれ。あと、この金をやる。治療費に充ててくれ」

 そう言い、コルドは自分の財布を俺に渡してきた。 

「ちっ、今回は許してやるよ。じゃあな、落ち目の聖神教徒さんよ」
「誰が落ち目だゴラァァァァァァッ!」
「やめろフレイ! 民衆の前で暴れる気か! それこそ我らは落ちぶれてしまうぞ! 我らはクールに、常に正しくなければならない。今お前が暴れたらそれこそ聖神教の評判は地に落ちてしまうぞ!」
「ぐっ……! クソがっ!! あの野郎……」

 紅騎士フレイは遠ざかるジェイドの背中を燃える瞳で睨み続けるのであった。
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