現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第1章 再誕

19 黄金騎士散る

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 酒が入り冷静さを欠いている黄金騎士。奴は腰の袋から奴の身の丈と同じくらい大きな鉄槌を取り出し、肩に担いでいた。

「これは正式な決闘です、よろしいな?」
「良いぜ。証人はここにいる住民だ。死んでも捕まえんなよ」
「ふふふっ、その綺麗な面……。ぐちゃぐちゃに磨り潰してやりましょうっ! 行くぞおらぁぁぁぁぁっ!」

 口調と雰囲気が変わる。どうやら本気モードに入ったらしい。

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 奴のバカデカい鉄槌が思いっきり地面へと叩き付けられる。地面にはその衝撃で穴が開いたが、俺には掠りもしなかった。

「ちょこまかと……! 逃げるな小僧っ!」
「バカじゃねーの? 当たったら痛いから躱わす。当たり前の事じゃねーか。ああ、脳ミソまで筋肉なお前は痛みを感じねぇから躱わさないのか。納得したわ」
「な、なにっ!? い、いつの間に……!」
 
 俺は黄金騎士の攻撃を躱わしつつ、しっかりと反撃していた。奴が剥き出しにしている脇腹に斬られた跡が残っている。

「バカな……。人類最強の私に傷を?」
「じゃあ最強じゃねぇんじゃね? レベル50程度で最強なんてな。この世界全てを調べたのか? 在野にはまだまだ強い奴が隠れているかもしれねーじゃねぇか。例えば……俺とかな?」
「っ!? 消え……ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 俺は高速移動で黄金騎士の背後へと移動し、切り裂いた脇腹をさらに深く切り裂いた。

「おっと、腸が顔を出してるぜ? 人類最強さんよ?」
「ぐぅぅぅぅっ! くそがっ! どうなっている! 私は人類最強のはず……!」
「まだ言うのか? それしか言えないのかよ」
「なんだとっ!?」

 俺は自分が人類で一番レベルが高いと自惚れている奴の誇り、いや拠り所を折る事から始めた。

「残念だったな、俺のレベルは54だ」
「なぁっ!? 5……4……? う、嘘だっ!!」
「嘘ついてどうすんだよ。ま、別に信じなくても良いぜ、信じようが信じまいが……今からお前が死ぬ事に変わりはねぇんだからよ」
「貴様ぁぁぁっ……!」

 その時だった。

「何をしているのだっ!」
「あん?」

 この決闘の場に蒼騎士が現れた。

「アース! 何をしているのだ貴方は!」
「何? 見たらわかるでしょう。あの生意気な小僧と決闘しているのですよ。邪魔なので下がってください」
「決闘? ば、バカな! 貴方は聖神教の騎士なのだぞ! 立場をわかっているのかっ!」
「わかってますよ。だから……私を侮辱しているあの小僧をここで殺す。私は正しい事をしているのだっ!!」
「ぐっ……!」

 黄金騎士は鉄槌で蒼騎士を殴り飛ばした。

「仲間にひでぇ真似すんのな」
「うるさいっ! あいつも気に入らなかったのだ! レベルも38しかない癖にいつも上から物を言いやがって……。私が一番偉いのだっ!! 私が神に一番愛されているからこそっ! 人類で一番レベルが高いのだっ!」

 こいつはレベルの数値にとりつかれているのだろう。何とまぁ愚かな。

「じゃあ……、その理論でいくと、俺の方がお前より神に愛されている事になるな」
「黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇいっ! ならば今ここでお前を殺し! 再び私が一番愛されていると証明するのみだっ!! 死ねぇぇぇぇっ! スキル【大地震】!!」

 地面が激しく揺れる。

「……スキル【飛行】」
「……な、飛ん……でる? な、なんだそれはっ!!」

 地面がいくら揺れようと、空中にいる俺には何の影響もない。

「地面揺らすしか脳のない筋肉達磨が。最初から俺とは勝負になってねぇんだよ。じゃあ……そろそろお別れの時間だ。この世界からお前を消す。死ね」
「くっ! 近寄るなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 俺は空中から高速移動を使い、無様に鉄槌を振り回す黄金騎士の頭上をとり、こう呟いた。

「雑魚が。スキル【溶解液】」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ……あぁぁ……」

 頭から溶解液を浴びた黄金騎士は筋肉が溶け、骨が剥き出しになる。その骨も次第に溶けていき、最後には何も残らなかった。

《レベルアップ。ジェイドのレベルは57に上がりました。スキル【邪眼】の効果により、スキル【大地震】を奪いました》

「アァァァァァァァス!!」

 消えた黄金騎士のいた場所に蒼騎士が駆け寄る。

「お前っ……! 何と言う事を……!」
「おっと、これは正式な決闘だぜ? そもそもはあいつが酒場で暴れたのが悪いんだ。証人は山ほどいるぜ? 周りの奴らに聞いてみろよ」

 周囲からは彼は無実だとか、先に暴れたのは騎士の方だと、誰も黄金騎士の味方をする者は現れなかった。

「……くそっ。死体がなければ教皇様とて蘇生できない」
「だろうな。だから溶かしたわけだが」

 蒼騎士は立ち上がり俺を真っ直ぐ見る。

「……お前は……聖神教徒か?」
「いいやぁ? 俺は邪神教徒だ」
「そうか。ならば俺はお前を捕まえなければならない。大人しく従ってもらおうか。人の身で魔物の技を使うなど放ってはおけんのでな」

 そう言い、蒼騎士は剣を構えた。

「いましがたあんたの仲間と戦ったばかりなんだけどなぁ?」
「ダメージなんて少しもないだろう? あいつはレベルに固執してただけのバカだったからな。俺でも無傷で倒せる」
「……正直、あんたとはやりたくなかったよ。四騎士の中じゃ一番やり難い相手だと思ってたんだ」
「光栄だな。この世界はレベルが全てではないと教えてやろう。大人しく捕まる気はないのだな?」 

 俺も剣を構えながら蒼騎士に言った。

「ないね。信じる神が違うだけで何故お前らにしたがわなければならない。お前ら聖神教が世界を支配している気になってんじゃねぇよ」
「別に支配などしてはいないさ。俺は神なんて最初から信じてはいない」
「なに?」

 蒼騎士は何故か自分の事を語り始めた。 

「俺は……、この世界から邪神教徒を全て駆逐する」
「ほう」
「全て駆逐する事で……病気で死んだ妹を教皇に蘇生させてもらう。それが俺の全てだ。神は妹を救ってはくれなかった。もう死んで十年になる。今遺体は腐らないように俺が凍らせている。お前は邪神教徒なのだろう? ならば……俺の駆逐対象と言う事になるな」
「そうか」

 俺は剣を下ろした。

「? 何をしている」
「いやな、別に捕まっても良いと思ってよ」
「何だと? 捕まったら死刑。わかって言っているのか?」
「ああ。だが残念だな。俺が教皇を殺せたらなぁ~、今すぐ妹さんは蘇生してやれるんだがな~」
「なっ!?」

 蒼騎士は持っていた剣を落とし、俺にすがり付いてきた。

「どう言う事だっ! お前が教皇を殺せば妹が今すぐ生き返る? 説明しろっ!」
「おっと、いつもクールが売りなんじゃなかったのか?」
「ふざけている場合か! 説明しろっ!」
「わかったわかった。とりあえず……連行するフリでもしろよ。道すがら説明してやるよ」
「……こい」

 こうして俺はついに教皇へと繋がる道を作った。俺は蒼騎士に連行され、聖神教団の神殿へと向かうのであった。
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