現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第2章 改革

03 領主

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 国王が話を切り出す。

「さて、貴殿からは今年度の税を納めてもらったわけだが……。これは今後継続して納められると言う事で構わぬか?」
「ああ。俺達邪神教徒もこの国で暮らす国民だからな。納税は当然の事だ。ああ、そう言えば聖神教は納めていなかったそうだな。寄付金も相当な額になっていたんだろう?」
「……うむ。だがあれがあったお陰で我が国は他国から侵略されんでおった」
「金で平和を買ってたって事か? 大した平和だな。その平和は民を幸せにしたか? 飢えて死んでいく民に救いの手を差し出せたか?」

 王は返事に困っている。

「まぁ、あいつらじゃ無理だろうよ。何せ自分らの事しか考えてねぇからな。だが……俺ら邪神教は違うぜ? 信者にはどんな者でも救いの手を差しのべる。選別したりしねぇ。入りたい奴は誰でも受け入れる。来年度の納税額を楽しみにしてなよ。今年の十倍はくれてやる」
「じ、十倍……だと?」

 財務卿が頭の中で計算を始めた。

「王よ、それだけあれば毎年起こる水害や各地の飢餓をかなり減らせますぞ。それに未開地の開拓にも着手できましょう」
「う、うむ。ジェイドよ。今日そなたを呼んだのは他でもない。毎年納税する意志があるのならばそなたを彼の地の領主として迎え入れたいと思っておったのだ。我が国の貴族となり、彼の領地を主に任せたい。どうだろうか?」

 俺はニヤリと嗤った。

「聖地ユグドールは特区だった。税を納めず、寄付をたかる寄生虫のような聖神教に支配されていた。それに比べて邪神教は素晴らしいと思わないか? 国民の義務を果たし、なおかつ国に貢献している。お前らは俺達邪神教を悪だと言っているそうだが……、その考えは相変わらずか?」
「い、いや……」

 財務卿がまず一番に落ちた。

「悪なんてとんでもない! これまで聖神教にはさんざん煮え湯を飲まされ続けてきました! 奴らこそ悪! ジェイド殿、是非私も貴殿の教団に入団したく!」
「歓迎しよう。我が邪神教は来る者は一切拒まない。祝いだ、これをやろう」

 そう言い、俺は財務卿にジャイアントベアーの毛皮をプレゼントしてやった。

「こ、これはジャイアントベアー!! Aランクの魔物ではないですか!」
「ただの熊だ。そんなのでいいならまだまだあるぜ」
「あ、ありがたく!」
「おほんっ! 財務卿、ワシの前で何をしておるのだね?」
「あ、これは失礼。王よ、ジェイド殿は……いや、邪神教は素晴らしいですな! どうでしょう、これからは我が国は邪神教を推すと宣言してみては……」

 しかし王は簡単には首を縦に振らなかった。

「……いや、それはまだ時期尚早だ。世界にはまだまだ聖神教の教えが深く根付いている。邪神教のイメージもな。まずは何か結果を示してからだ」
「結果ねぇ……。ならあんたはどんな結果をお望みだ? 後から難癖つけられちゃたまんねぇからよ。その結果とやらは何かを今示してもらおうじゃねぇの」 
「こ、これ、ジェイド殿。王にそのような……」
「良い、財務卿」

 王は財務卿の言葉を制し、俺に結果とは何かを話始めた。

「ジェイド殿。世間が邪神教にもっているイメージはまだまだ悪い。それは我が国の貴族も同様だ」
「ほ~う」
「そこでだ、ジェイド殿を我が国の【男爵】とし、彼の地を与える。ワシが求める結果とは、ジェイド殿が貴族となり、各領地を治める貴族五人に邪神教を認めさせる事だ。ああ、すでに一人認めているようだから残りは四人か」

 これまた面倒な……。

「その四人の名を教えていただけますかな?」
「うむ。まずはこの王都のある地を治める【ローランド公爵】、そしてその隣を治める【ラゼル辺境伯】。そして反対側を治める【ミューズ男爵】、最後に貴殿の治める地の隣にある【ブラウン伯爵】。この四人に邪神教を認めさせてみせよ。見事認めさせる事が出来たら我が国は邪神教を全面的に推す。どうだ?」

 俺はニヤリと嗤った。

「良いでしょう。その四人に必ず邪神教を認めさせてやりますよ。それでは次は全ての貴族と共にお会いしましょう。失礼」
「うむ」

 俺は会釈もせず王に背を向け謁見の間を後にした。そして隣にいる【ドロワー子爵】に話し掛ける。

「帰ったらすぐに他の貴族らの情報をくまなく記して持ってこい。家族構成、人柄、資産状況、領内の状況、あれば悪事。それら全部調べろ」
「お任せ下さい。そう言われると思い、すでに動いております」
「ほう?」

 ドロワーが言った。

「一ヶ月、その一ヶ月で全ての情報をくまなく調べあげ持参いたしますゆえ」
「良いだろう。活動資金は多目に融通してやる。三週間でなんとかしろ」
「ははっ! お任せください!」
「期待している」

 俺はドロワー子爵と分かれ、一人空を飛びながら魔都へと向かう。

「くくくくっ、貴族四人を落とせばこの国は邪神教徒のモノ。殺すなとも言われてなかったからなぁ……。従わない場合は仕方ないよな? さあ、国盗り開始だ。三週間後を楽しみにするが良い。くくくっ……ふははははははっ!」

 俺は流れる景色を楽しみつつ、優雅に空を舞うのであった。 
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