現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第2章 改革

04 各貴族の情報

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 三週間は無理かと思っていたが、ドロワー子爵は二十日で全ての情報を集め、大神殿に持ってきた。元々情報は集めていたようで、今回はさらに深く突っ込んだ情報を集めて追加してきたらしい。

「おぉ、これだよこれ。なんだお前、やれば出来るじゃないか。素晴らしい働きぶりだぞ」
「ははぁぁっ! ありがたき幸せ!」
「報酬はいつもの奴から受け取っていけ」
「はっ!」

 俺は早速ドロワー子爵が持ってきた資料に目を通した。

「こりゃあ国家機密レベルじゃねぇか。子爵の癖に中々やるなあいつ……」

 その資料には四人の貴族の情報が事細かく記されていた。

【ローランド公爵】……現グラムヘイズ国王の弟。治める領地は王都のあるローランド領。規模は一番大きく、領内に然したる問題はない。家族構成は妻が一人、子が三人。長男、次男、三男と男ばかり。家は長男が継ぐものと思われる。長男は武に長け、次男と三男は知に長けている。妻は見目麗しいが金遣いが荒く、裏で他の男と繋がったりもしている。

「おいおい、スキャンダルじゃねぇか。こりゃ中々使えそうなネタだな」

【ラゼル辺境伯】……現グラムヘイズ国王の親類にあたる。妻が一人いるが子に恵まれず悩んでいる。領地は荒れ地も多く、民は貧しさにあえいでいる。

「子に恵まれないか。どっちかに問題がありそうだ。で、民は貧しさに苦しんでいると。開拓してやったら案外簡単に落ちそうだな」

【ミューズ子爵】……唯一女でありながら領主をしている。先の戦で国に多大なる貢献をしたため、貴族に抜擢された。だが、領地経営は向かないようで、税もまともに集められてはいない。未婚。

「……脳筋か? 未婚って事は相手に興味がないのか、それとも化け物なのか……。大事な部分が欠けてるぞおい」

【ブラウン伯爵】……金に汚い男。妻は三人。子は妻以外にもいるようで、正確な数は不明。これは推測だが、領地の人数に対して納められている税が少ない。特に災害もなく、土地も豊かである事から、横領が伺える。

「クズだな。こいつはいっそ殺してしまった方が良いかもしれん。こんなクズが大人しく従うとも思えんしな」

 そう口にすると、ソファーでクレープを頬張っていた邪神が突っ込みを入れてきた。

「お主にクズとか言われるとはな。相手も心外じゃと思っとるのではないか?」
「誰がクズだよ。俺はちゃんと信念を持って行動してんだよ」
「ほ~う? なら問おう。お主の信念とは?」

 俺は立ち上がり拳を振り上げこう宣言した。 

「天上天下唯我独尊!」
「……寸分たがわずクズではないか」
「失礼な。自分が自分を信じられずに誰が信じると言うのだ。俺は常に自分が正しいと思って行動してんの。横領とか他人に迷惑かけまくりじゃねぇか。金くらい己の力で稼げっつーの」
「まぁ……その点は勝っておるの」

 俺は断じてクズではない。ただ自分に正直でありたいだけだ。その結果が他人にどう受け止められようが、確固たる地位にさえ就いてしまえばそれが正義となるのだ。……あれ? おれクズじゃね?

 とまぁ葛藤はあったものの、俺は最初のターゲットにブラウン伯爵を選んだ。

「まずは両隣から味方につける気か。ま、悪くないじゃろ」
「それもあるが……、こいつは早急に処分しておきたい。放っておいたら不幸な女が増えそうだからな」
「本音は?」
「……本音だ」
「嘘をついてもわかるぞ? 本音は?」

 俺は言った。

「俺のモンになりそうな小さな女の子に手を出しかねないからに決まってるだろう! もし既に泣かせていようものならあらゆる苦しみを与えてぶっ殺す! 少女は宝で芸術品だっ! それを汚していやいや、愛して良いのは俺だけだ!」
「お主は正直じゃな……。ま、好きにせい。妾はスイーツさえあれば満足じゃ!」

 俺はソファーに寝転ぶ邪神を見て言った。

「……お前さ、最近太ったんじゃね?」
「……ん? ははは、妾は邪神ぞ? 太るわけなかろう」
「いやいや、前は実体がなかったから変わらなかっただけだろ? 今は肉体もあるんだぞ? 甘いモンばっかり食っちゃ寝食っちゃ寝してんだ。鏡見ろ鏡。ほれ」

 俺は邪神に現実を突きつけた。

「ジェイド、この鏡歪んでおらぬか?」
「いや、まっ平らだ」
「いやいや! こんなの妾ではない!」
「そうだな、最初に会った時と同じなのは髪型くらいだな」

 邪神は不摂生のせいか、1.5倍くらいに膨らんでいた。

「なっ……、ななななっ!? なんじゃこれはっ!? 妾の美しい姿はどこへ!?」
「遠い記憶の彼方かな」
「誰が上手い事言えと!? 醜い……! まるで子豚ではないかっ!」

 邪神は床に崩れ落ちていた。

「そんなデルモートに提案がある」
「……なんじゃ」
「俺はしばらく貴族を落とすために動かなきゃならないからさ、俺の代わりに魔物狩りに行ってきてくんない? 運動したら痩せるかもよ?」
「……今から行ってくる! さらばじゃ!」

 邪神は窓ガラスを突き破り森へと旅立って行った。

「よし、これで資金は今まで通り稼げるな。なにせ未発達な国だからなぁ。空から見てがっかりしたわ」

 帰り道、俺は空から国を見て落胆していた。華やかなのは王都とこの魔都のみで、他は質素なものだった。しかも河川の氾濫を許すような拙い治水工事。この他にも様々な問題があり、それら全てを解決するためにはいくら金があっても足りない。

「金はデルモートが稼いでくれるとして、俺は掃除といきますかね」

 この国の問題点を見出だした俺はさっそく最初のターゲット、ブラウン伯爵の領地に向かい出立するのであった。
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