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第3章 エンバッハ帝国編

19 白虎族の故郷

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 俺はシーメルに飛び代表者のいる屋敷を訪ねた。

「あら? ジェイドはん、いきなり来るなんてどないしたんでっか?」
「いや、ちょっと調べ物があってな。今時間良いか?」

 俺がそう言うと商人の人差し指と親指が繋がり輪になった。

「ジェイドは~ん、商人の時間はえろう高くつきまっせ~?」
「構わん。後で新しい船一隻くれてやる」
「船? 木造船でっか?」
「いや、鋼鉄船だ。しかも風も潮も関係ないやつな」
「……は? こ、鋼鉄??」
「後で教えてやるからよ。今日は聞きたい事があって来たんだ」
「聞きたい事ねぇ? ま、知っとる事ならなんなりと」

 俺は商人に案内され執務室へと向かった。そして彼に白虎族の故郷がどの大陸にあるかを尋ねた。

「白虎族……かぁ。う~ん……わからんなぁ~」
「そうか。他の大陸と取引してるあんたらならわかると思ってたんだがなぁ……」
「ウチらの商売相手は基本人やからなぁ。獣人は金持っとらんのよ」
「……そうか」

 商人が俺に尋ねてきた。

「しかし何でまた急に白虎族なん?」
「ああ、実はとある商人から白虎族の少女を買ってな。そいつが俺の子を産んだんだよ」
「ほぉ~。なるほどなぁ~。ん? もしかして故郷を探しとる理由はそれかい?」
「まぁな。本人は幼い頃に拐われたせいか故郷がどこにあるのかわからないらしいんだわ」

 商人は腕組みをしながら唸っている。

「う~……ん。……ん? 待てよ? ジェイドはん、そんならその商人から話聞いた方が早いんやないか?」
「……あ」
「拐ってきたんなら場所もわかるやろ」
「そうか! それは思い付かなかった! 恩に切る!」

 そう言いナビリア商会に飛ぼうとした俺を商人が止める。

「なんだ?」
「ジェイドは~ん? 気付いたのはワイの閃きのおかげちゃうん~?」
「ああ、そうだな」
「ほんなら……何かあってもええんちゃう~?」

 全く、商人とはがめつくて困る。

「わかったわかった。港に来い。船をやるよ」
「よっしゃ! ほんなら今すぐいこか!」

 俺は商人に連れられ港へと向かった。

「で、船ってどんなん?」
「ああ。今出してやるよ。【創造】」
「へ?」

 俺は海の上にとあるゲームから空飛ぶ船、つまり飛空艇を創り出してやった。

「な、なななななんやこれっ!?」
「あん? 言ってだろ、鋼鉄船だって。これは海の上も走れるし、なんなら空も飛べる。動力は魔導エンジンだから魔力を注げば動かせるぞ」
「そ、空飛ぶ船!? こ、こんなん世界のどこにもあらへんで!? 下手したらこれを巡って世界対戦や!?」
「なら適当に海に降りて走って行けば良いだろ。とりあえずそれはくれてやる。大事に使えよ? じゃあな」
「あ……」

 そう言い、俺はナビリア商会へと転移した。

「こ、こんなん危なくて使えるかいっ! 鋼鉄の船ってだけでも使えんのに……。空まで飛ぶとかどないなっとんねん……」 

 商人は目の前にある船をどう扱うかと頭を抱えるのであった。

 そして俺はナビリア商会へと転移し、オーナーを訪ねる。

「おお、これはジェイド殿! お久しぶりでございますな」
「ああ。オーナー、ちょっと聞きたいんだがな」
「はい?」

 俺はオーナーにミーニャをどこから拐ってきたのかと尋ねた。

「ああ、あの白虎族ですか。あれはまずシーメルから隣の大陸【グラディオン大陸】へと渡り、そこから北に向かって行きます。すると港町【ベイロン】がありますので、そこから次の大陸【シーガロン大陸】に向かいます。そしてそのシーガロン大陸の港町【バルディ】から北東に向かった先に山脈があります。白虎族の里はその山脈の内側にある盆地にあるのです」
「……お前、そんな遠くからよく仕入れてきたな」
「はっはっは。私は元々シーガロンの生まれですからな。仕入れは里帰りのついでですよ」
「ほう。なら……シーガロン大陸はどんな所なんだ?」

 オーナーは言った。

「……まぁ、めちゃくちゃ寒いですな」
「ふむ」
「特に白虎族の里がある場所は一年中雪が消えません」
「そ、それは寒そうだな」
「平地では雪こそ積もりませんが、夏でも長袖が基本。まぁ、暮らしにくい土地ですな」

 あまり行きたくはないなぁ。 

「しかしまぁ、それだけにシーガロンの女は色白で透き通るような肌が売りです」
「……ん?」
「シルクのような抱き心地は一度知ったら癖になること間違いなし! シーガロンは寒いので人肌同士で温めあうサービスなんかも……」
「情報ありがとうっ! 今度土産持ってくるわ! んじゃっ!」
「へ? 消え……?」

 俺は適当に挨拶を済ませビルに転移した。

「ミーニャ! いるか!?」
「がう?」
「白虎族の里がある場所がわかったぞ」
「おぉ~! さすが主!」
「すぐに向かおう。子供達を連れて町の入り口に来てくれ」
「え? あ、消えた」

 俺は町の入り口へと転移し、また飛空艇を創造した。

 しばらくしてミーニャが子供二人を抱えてやってきた。

「主~! なにこれ!?」
「空飛ぶ船だ。なにせ遠いからな。ちんたらしてたら半年はかかりそうな距離でよ。今回はこれで飛んでいく。海も山も全部これでひとっ飛びだ」
「ふあぁぁぁっ!? これで空が飛べるの!? 凄い!」
「ふっ、こんなの朝飯前よ。さあ、行こうか。ミーニャの両親に孫を見せてやらないとな」
「がうっ!」

 こうして、俺はミーニャと子供二人を連れ新たな大陸へと飛び立つのだった。
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