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第01章 転生編

05 安息の地を求めて

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 冒険者ギルドでの登録を終え、身分証を手に入れた蓮太は次なる目的であるのんびりゆっくりと暮らせる場所を探すために町を出る事にした。

「働かなくてもスキルがあれば余裕で暮らせるし、二度目の人生でもこき使われるなんて真っ平だ。この人生ではひたすらまったり生きるっ! それが俺の目標だ。希望としては魚の採れる湖、豊かな大地、静かな土地があれば文句なしなんだけどなぁ~」

 この希望を全て通すのは少し難しい。この世界は地球とは違い、町の外に出ると凶悪な魔物が闊歩している。町に近い場所の魔物はまだ弱いが、町や街道から離れた場所、森や山などには強大な魔物が現れるようだ。これは先ほどクエストボードを見て初めて知った事である。

「町から出たら一応武器でも下げておこっかな。あ、あとこのボロボロの服もなんとかしておこうかな」

 そうして町を出た蓮太は少し歩いた先でスキル【アイテムボックス】を使い、その中から昔作った武器と服を取り出し、装いを新たにする。

「とりあえずこの刀があれば大丈夫かな。一応魔法も一通り使えるし。防御は……スキル【絶対防御】に【攻撃反射】もあるし、鎧は必要なしだ。まぁ……でも舐められて喧嘩売られるのも嫌だし、胸当てくらいは着けておこう」

 蓮太の使う武器は刀だ。それ以外の武術スキルも極めてはいるが、やはりここは日本人。刀が一番性に合うらしい。刀には【破壊不能】【状態保存】が付与されており、手入れや刃こぼれを気にする必要はない。

「オールオッケー。じゃあ行くとしますか。【サーチ】!」

 町周辺の地理を知らない蓮太はまずスキル【サーチ】を使い地理を把握する事にした。スキルの効果は自身を中心に半径五キロ圏内の地形や生命反応の探知が可能となっている。

「ん? これは……」

 さっそく蓮太のサーチに反応があった。その反応は町から1キロほど離れた場所で、二つの点が十の点に囲まれていた。

「盗賊かな? 幸先悪いなぁ……。どうしようか」

 一先ず様子を見るために蓮太は反応のあった地点へと向かった。そしていきなり荒事に巻き込まれたくはなかったため、スキル【気配遮断】を使用しながら向かった。

 そうして反応があった場所に向かう。目的地はどうやら街道から少し外れた場所に移動したらしい。街道には争った形跡があり、ボロボロになった馬車と数人の死体がある。片方はいかにも盗賊、もう片方は執事服とメイド服をまとっていた。

「これもテンプレか。どうせ貴族令嬢かなんかが襲われてるんだろ? 助けてやる義理はないしなぁ……」

 そう呟くと突然死体だと思った執事服を着た初老の男がうつ伏せの状態から顔を上げた。

「ど、どうか……た、助けて下され……っ! このままでは王子が……ぐふっ……」
「王子?」

 そこまで口にし、初老の男は事切れた。

「王子かー。そっかそっか。男なら強く生きろよー」

 スラムを改善しようともしない国には全く興味もないし、義理もない。蓮太は弱肉強食の幼少期を死に物狂い──特にそんな事もなくダラダラとスキルに頼りながら生きてきたが、他の住人はそうではない。蓮太以外の住人は生きるために必死だった。

「悪いな爺さん。俺は一度足りとも国の世話になった覚えがないんだ。ま、運が悪かったと思って諦めてくれ」

 そう思い、その場を離れようとしたがサーチに変化があった。

「んん? お、囲んでる奴らの反応が減っていってるな。もしかして王子って強いのか? ん~……ちょっと興味沸いたかも」

 一人で抵抗を続けている王子に興味が沸き、蓮太は気配を遮断したまま森の中へと入っていった。

「ちっ、しぶてぇ……! お前ら、早く王子を殺れっ! いくら貰ってっと思ってんだ!」
「はぁ……っ、はぁ……っ! だ、誰に雇われたっ!」

 肩まで伸びた綺麗な金髪、白銀の軽鎧をまとった王子は左肩から血を流し表情を歪めていた。

「今から死ぬ奴に言う必要はねぇだろ。ひはははははっ!」
「くっ──、ゲスめっ!」
「おーおー、ゲスで結構! 俺たちにとっちゃ褒め言葉よっ! さあ、もう終わりだ【エレン】第二王子。お前ら、殺れ」
「「「「ヒャッハァァァァァァァァッ!」」」」
「ぐぅっ──! ここまでか……っ」

 王子に向かい三人の盗賊が飛び掛かる。王子は片手で剣を構えるだけで動けないようだ。

「……(仕方ないな。胸くそ悪いし、ちょっとだけ手助けしてやるよ。【パーフェクトヒール】)」
「な、なんだっ!? 体力が……傷も! こ、これならっ! おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 万全の状態に戻った王子は両手で剣を握り叫んだ。

「はぁぁぁぁぁぁっ! 【ライトニングスラッシュ】!!」
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」
「なにぃぃぃっ!?」

 王子の剣が弧を描き、飛び掛かってきた三人の盗賊の頭を飛ばす。それを見て残った一人が突然起きた王子の回復に驚いている。

「バカなっ! なんで傷がっ!」
「さてね。それは私にもわからない。きっと神様が見かねて助けてくれたのだろう」
「うっ──」

 王子は一足飛びで盗賊との距離を詰め、剣で足の甲を貫いた。

「いぃぃぃっ、てぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「言えっ!! 誰に雇われたっ!」
「ひ、ひひひっ。だ、誰が言うかよっ!」
「……もう片足も失いたいか?」
「やれるもんならやってみやがれっ!!」
「そうか」

 すると王子は盗賊の死体から武器を奪い、無事な方の足に短剣を突き刺した。

「ぎぃぃぃぃぃぃっ! ま、まだまだぁ……っ!」
「まだ言わないか。拷問は好きじゃないんだ。早く言わないと死ぬぞ」
「ひ……ひひひっ。言ったらどうせ死ぬ。だったら言わないまま死んだ方が男ってモンだろうが!」
「賊が男の道を語るとはな。言わないなら仕方ない、こちらも大体見当がついてるんだ。お前の首を突きつけてやるさ」
「……好きにしなっ! どうせブラフだろうがっ!」

 盗賊は死んでも口を割らないだろう。そう思った王子は天に向かい剣を掲げた。

「これは何の罪もない執事達を殺した罰だ、死ねっ!」
「待った!」
「「っ!」」

 その声に死を覚悟し、目を瞑っていた盗賊は目を見開き、王子は声が聞こえた背後を振り向く。

「君は誰だ」
「街道で生き絶えた爺さんに頼まれてね。ちょっと様子を見にきたただの冒険者さ」
「冒険者……か。だが待てとはどう言う事だ」

 蓮太は王子に近づきこう告げた。

「俺ならあの男の口を割らせる事ができる」
「……なに?」
「はっ! 何されても言うかよっ!」
「あーはいはい。で、どうしますか? 俺を使うか、このまま事件を迷宮入りさせるか……好きな方を選んで下さいよ、王子サマ?」
「……」

 王子はどう見ても自分より年下の子ども相手を見てこう問い掛けた。

「もしかしてあの回復は……」
「さぁね。神様が助けてくれたんじゃないんですかね?」
「……ふっ、ははははっ。わかった、報酬は望むだけ払う。あの男に誰が私を襲わせたのか吐かせてくれるか?」
「望むだけ……ね。じゃあ軽~くやっちゃいますかね」

 蓮太は関わる気などなかったが、よくよく考えると闇雲に安息の地を探すよりは王子に貰った方が早いのではと考えて動いた。

「な、何をする気だ! 俺は死んでも言わねぇからなっ!」
「ははっ、お前の意思なんか関係ないんだよ。じゃあ始めようか」

 蓮太は盗賊に向かい手をかざすのだった。
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