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第01章 転生編

06 王子と王都へ

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「【コンフェション】」
「うっ!?」

 盗賊の頭がガクンと落ちる。それを見た王子が蓮太に状況を尋ねた。

「今のは?」
「まぁ、見てて下さいよ」

 数秒後、盗賊は頭を上げた。虚ろな目をし、トランス状態に陥っている。

「さ、王子。あいつに聞きたい事を尋ねてみて下さい」
「……ふむ。ならば」

 王子は鞄から水晶を取り出し構える。

「それは?」
「映像と音声を記憶できる魔道具だ」
「へぇ~……(カメラみたいなものか)」

 そして準備を整えた王子は盗賊を問い質しはじめた。

「言え、誰の命令で私を襲った」
「……だ、第一王子……【ロクサル】……」
「ふむ、やはりか。それで? 何と命令された」
「……第二王子を殺れば頭目を釈放すると……。第二王子は自分が王位を継承するために邪魔な存在だと……」
「……もう良い。大体想像通りだったな」

 王子は水晶を鞄にしまい、盗賊の首を落とした。

「あらら、殺っちゃった」
「元より許すつもりはなかった。さて……」
「おろっ?」

 王子の剣が蓮太に向けられる。

「何の真似ですかね?」
「君にはもう少し私に付き合ってもらうぞ? ちなみに拒否権はない。これは王族からの依頼だ」
「ちょっと待って下さいよ。俺はまだ駆け出しのFランク冒険者ですよ? 指名依頼はCランクから、それも王族からの指名依頼はAランクからだ。受けなきゃならない謂れはない」
「そうか。なら……言いふらされても困るため、ここで殺るしかなくなるが?」
「……」

 蓮太は王子を見る。王子は殺ると言ってはいるが、まるで殺気を感じない。

「あー……はいはい、わかりましたよ。なら護衛依頼って事で! 報酬はちゃんともらいますからね!」
「ふっ」

 王子は軽く笑い、剣を鞘に納めた。

「もちろん報酬は出す。君は恩人だからな、脅すような真似をして悪かった」
「本当っすよ、まったく……」

 それから二人は街道まで引き返し、破壊された馬車へと向かった。

「……すまない、巻き込んでしまったな。どうか安らかに眠ってくれ……。【ファイア】」

 王子は火の魔法で執事達の遺体を焼き、天へと還した。こうしなければ遺体はアンデッドとなってしまう。

「さあ、行こうか。まずは途中にある村へと向かう。そこで馬を借りよう。馬は乗れるか?」
「一応」
「よし、なら出発だ」

 二人は街道を北上し、小さな村へと向かった。そこで村長から馬を二頭借り、再び北上した。

「ほう? なかなかやるな」
「普通っすよ」

 蓮太はスキル【馬術】を作り巧みに馬を操っていた。本来ならばスキル【飛行】もあるのだが、あまり手の内は見せない方が良いだろうと考えていた。理由はもちろんこれ以上関わりたくはなかったからだ。

 王子は北上しながら聞いてもいないのに身の上話を始めてきた。蓮太はあまり関わりたくないため、聞きたくはなかったのだが、王子は話を止めなかった。

「俺は第二王子ではあるが側室の子でな。義兄は正室の子で正当な王位継承者ではあるが……とにかく馬鹿なんだ」
「あー……」
「仮に義兄が王となればこの国は一月ももたず崩壊してしまうだろう。下に優秀な義妹はいるが……まだ君と同じか下だ。王位継承者はあるが幼すぎるため、傀儡になるかもしれん。国を保つためには私が王になるしかないのだが……って聞いているか?」
「聞いてませーん。ってかさ、俺にそんな話してどうするんですかね? 俺なんてただの一般人、しかもスラム出身っすよ?」
「スラム……か」

 スラムと聞いた王子の表情が険しくなった。

「あんなものはいつまでもあってはならない。私が王になった暁には必ず改善してみせる。だから自分を卑下するな。君はFランク冒険者だろうが、なかなかに優秀と見た。現に……私が本気で飛ばしているのに付いてきている。私について来られるのは騎士団長しかいなかったんだがな?」
「う、馬が良いんですよ、馬が!」

 蓮太はどこか抜けていた。

 そうして馬を走らせる事丸一日、二人は王都一つ前にある町で休む。

「だからだな!」
「わかった、わかりましたから! 飲み過ぎっすよ!」
「ふんっ、私は酔ってなどおらん! まだまだ語るぞ」
「うぇぇぇ……」

 回りに愚痴を聞いてくれる者がいなかったのか、樽のワインを一つ飲み干した王子はひたすら蓮太に愚痴をこぼしていた。

「あいつだけは……ロクサルだけには王位は渡せん……。レンタ……、私を助けてくれ……」
「あ、落ちた……」

 ようやく王子は眠りに落ちた。蓮太は仕方なく王子を二階の部屋に運びベッドに放り投げた。

「助けてねぇ……。あんたには優秀な部下が沢山いるでしょうに。俺なんかをアテにされちゃ困る。よっと、やっと外れ──っ!?」

 鎧を外すとほどよい双丘が自己主張をしてきた。蓮太は慌てて鎧を元に戻した。

「お、おおおお……王子じゃねぇ……、王女じゃねぇか!」

 慌てて離れようとした蓮太の腕がギュッと捕まれる。

「……見たな?」
「お、王……子?」
「いかにも私は王子だ。さて、レンタ。君は今何か見たかな?」
「い、いいいいいいえっ!」
「そうだよなぁ。君は私の鎧の下など見てはいないし、性別も知らない。だろう?」
「も、もももももちろんです! は、ははは……」

 王子の手が離れる。蓮太の手首にはくっきりと握られた跡が残っていた。

「ちなみに、この秘密は母様しか知らない。もし万が一にも誰かに漏れようものなら……犯人は君という事になる。その場合、君には死んでもらうか、一生私に仕えてもらうかしかなくなるが」
「い、言いませんっ!」

 驚きからか、蓮太の態度は豹変していた。

「そう言えば私達はまだ出会ったばかりだな。そんな相手を信用などとてもじゃないができん。しばらく監視下に置かせてもらうとしよう」
「は、はめたなっ!?」
「ははははっ、私は品行方正とは真逆の人間だ。より良い未来のためならどんな事でもする。言っただろう、酔ってなどおらんとな」
「な、なんて性格の悪い……」

 ジト目で睨む蓮太を王子はしてやったりと笑い飛ばした。

「はははっ、さあ……明日はいよいよ王都だ。一緒に寝るか?」
「絶対に嫌です。最悪な未来しか見えない!」
「む……。酷いな、私も女だ、そのように言われたら傷つくぞ」
「全然思ってもないくせに!」

 蓮太は王子を振り切り別のベッドでシーツにくるまるのだった。
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