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第02章 エンドーサ王国編
05 集うエルフ達
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「な、なんですって! 世界樹が!?」
「はい。私にはもう何がなんだか……。ですから長が直接確認してみてください」
「すぐに行きますわっ!」
長は急ぎ家を飛び出した。そしてその時点ですでに違和感に気付いた。
「里にあんな樹はなかったはず! あれですね!」
家から大樹を確認した長は木の間を飛び移りながら大樹を目指した。
「レンタさん!」
「お、長か。どうよこれ。世界樹召喚してみたんだけど」
「世界樹を召喚……? 何があったのですか!?」
蓮太は長にも全てを語った。
「レンタさんが異世界から……しかも神から直接スキルを頂いていただなんて! レンタ様は使徒様だったのですか!?」
「そんな大それた存在じゃないよ。俺は神の不手際で一度死んだんだ。謝礼くらいもらって当然だろ? 二度と簡単に死なないようにスキルをもらっただけだよ」
「そう……でしたか。しかし……」
長はそっと世界樹に手を伸ばしてみた。
「……確かに世界樹ですね」
「わかるのか?」
「はい。エルフは世界樹の守人なので。私も過去に触れた事があるので間違いありません」
確認を終えた長は世界樹から手を離し蓮太に向き合った。
「レンタさん、世界樹は何か言ってましたか?」
「ああ。自分を守るエルフを狩る人間は嫌いだってよ。俺が召喚しなきゃ二度と姿を見せなかったんじゃないかな」
「そうですか……。それが世界樹の意志なら私達も行動に出なければなりませんね」
「……へ?」
蓮太は嫌な予感しかしなかった。しかし長はニコリと微笑むだけだ。
「さあ、まずは世界中に散っている同胞を呼び戻さなければ。ふふっ、忙しくなりますわ~」
そう言いながら小さくガッツポーズを見せる。だいたい何をするのかは見当がついている。
世界樹顕現から幾ばくかの時が過ぎ、蓮太は一つ歳を重ねていた。そして蓮太十三歳の春、世界樹の下に全てのエルフが集結した。
この森に来たエルフ達は皆涙を流し世界樹を崇めていた。
「うっうっ……、本当に世界樹が……!」
「なんて神々しいお姿! もう二度と失くさないようにしなければ!」
「これが私達の象徴……! エルフで良かった!」
どうやらエルフはかなり世界樹を崇拝しているようだった。世界樹もその声が届いているのか、葉を揺らし応えていた。
「しかし……これで全部か。千人いるかどうかだな」
「それでもまだ男がいてくれたので何とかなりそうですわ。レンタさん、今から私の家にいらして下さい。これからの事についてお話が」
「話? わかった」
そう真剣な表情で語る長の後をついていった。
「レンタさん、いえ、レンタ様」
「は? 様!? いきなりなんだよ?」
「里にこうして世界樹が顕現し、全てのエルフが集まったのはレンタ様のおかげですわ。改めて感謝を」
「やめてくれよ。俺はやりたいようにやっただけだ」
「ふふっ、謙虚なのですね」
言葉は和やかだが表情は真剣そのものだ。
「レンタ様、これから私達はこの地にエルフの国を興します」
「ふ~ん、良いんじゃないの?」
「ありがとうございます。そこでレンタ様にはもうしばらくお力を貸していただけないかと」
「俺の力? まぁ……まだ結末を見てないからしばらくはいるつもりだったから別に構わないけど」
「そ、そうですか! ありがとうございますっ! では私と共に皆の前に行きましょう!」
「うん?」
蓮太はこれから何が起こるかだいたい想像がついていた。そして大人しく従っている理由は、自分が人間だからだ。おそらく長の考えているような事にはならないだろうと安心していた。自分の役目はこの後少しだけ。そう思っていた。
長は全てのエルフを世界樹の前に集め話を始めた。
「皆さん、集まってくれて感謝いたします」
「「「「「はっ」」」」
「今日皆さんを集めたのは他でもありません。皆さんご覧のように、こうして数百年ぶりに世界樹がこの地に顕現いたしました。まずはこの事に感謝を」
「「「「世界樹ばんざぁぁぁぁぁぁぁいっ!」」」」
エルフ達のテンションがだいぶ高い。
「はい、ではこれからの事について話をしていきたいと思います。まず、私達エルフは世界樹の守人です。今後は人間と関わりを持たず、ただ粛々と世界樹を守っていきましょう。この件に異議はありますか?」
「「「「異議なし!!」」」」
「ありがとうございます。では次に、私達エルフは数こそまだ少ないですが、これから世界樹を守るために増えねばなりません。そして増えるためには町が必要となるでしょう。そこで、この世界樹を中心に緑地公園をつくり、その周囲に住居を構えます。つまり、ここに新たな町……いえ、エルフの国を興します!」
「「「「く、国っ!?」」」」
エルフ達は驚きながらも目を輝かせていた。そして長はその期待に応えて余るだろうと確信しつつ、構想を口にした。
「そうです。国の名を【聖王国エルフィリア】とし、初代聖王をこのレンタ様とします! レンタ様がいなければ再び世界樹が顕現する事も、私達が再び一つの場所で暮らす事も叶わなかったでしょう。皆さん、異議はありますか?」
ここで蓮太の想像だと異議が出るはずだった。
「長! そんな事をしたら周辺国に狙われるのではっ!」
「大丈夫です。レンタ様がいれば人間などゴミ同然です。リージュ、報告を」
「はっ」
どこからかリージュが姿を現し前に出てきた。
「少し前、レンタはノイシュタット王国にいました。ノイシュタット王国とヴィスチナ王国は戦になり、レンタは一人でヴィスチナ王国兵三十万を一瞬で殲滅したとの事」
「お、お前っ! 調べたのかっ!?」
蓮太はリージュに詰め寄った。
「当然だ。国を興すためには周辺国を知らねばならん。エンドーサはもちろん、繋がりのあるノイシュタットも調べた。そこで今の噂を耳にしてな。レンタ、なぜ力を隠す。一人で国を滅ぼせる力を持ちながらエルフといても良いのか?」
ノイシュタットは獣人や亜人にも寛大な国だ。リージュが話を聞いて回っても怪しまれる事はなかっただろう。
「別に隠していたわけじゃない。俺は静かにのんびりと暮らしたかっただけだ」
「そうか。だがなレンタ。レンタがのんびり暮らしている間にも愚かな支配者により弱き者の命は消えているのだぞ? それこそレンタがいなければ今のノイシュタットはなかっただろうし、ノイシュタットがなくなればエンドーサもこの森も消えていただろう。レンタはのんびり暮らすと言いつつも、すでに多くの命を救ったのだ。もう逃げられないのだレンタ」
「うっ……」
ここで言葉に詰まった蓮太は最後の秘策に出た。
「よ、よし! それなら仮に俺が王になったらだな、エルフは俺に従わなきゃならないんだぞ! 俺は人間だ、人間に従うなんて嫌だろう!? 一人でも反対するようなら王にはならないからなっ!」
これが蓮太の自信だった。エルフは過去、人間により散々な目に合っている。反対する者いれば王にはならない。これでなんとか逃げられるだろうと踏んでいた。
「なるほど。では長、皆に問いただしてみましょう」
「ええ、皆さん……。レンタ様は人間ですが私達エルフのために世界樹を顕現させ、私達のために食糧まで与えてくれました。そんなレンタ様はもう人間のくくりでは縛られませんよね? もはやレンタ様は聖者です! 聖者レンタ様を聖王とし、国を興すのです! これに反対する者はおりますかっ!」
「「「「いませんっ!」」」」
絶対に誰かは反対するだろうと踏んでいたが満場一致。これに蓮太は慌て始めた。
「……は? お、お前ら本当にそれで良いのかっ!? 俺は力があるだけの人間だぞっ!?」
そう叫ぶとエルフ達から次々と蓮太を崇める声があがった。
「世界樹を顕現させた時点でもはやレンタ様はエルフの神ですよっ」
「そうですよ! こうして危険な長い旅を終える事ができたのはレンタ様のおかげです!」
「毎日新鮮なお野菜が食べられて幸せです~」
「力があるだけのって力がなければ抗う事もできないんですよ? レンタ様はエルフの守り神ですっ!」
エルフ達は蓮太を神のように崇めていた。まるでどこぞのカルト教団のようだ。そしてこれを受け長が畳み掛けてきた。
「レンタ様、満場一致です。私達の王になっていただけますよね?」
「そんな馬鹿な……」
蓮太はがっくりと首を落とすのだった。
「はい。私にはもう何がなんだか……。ですから長が直接確認してみてください」
「すぐに行きますわっ!」
長は急ぎ家を飛び出した。そしてその時点ですでに違和感に気付いた。
「里にあんな樹はなかったはず! あれですね!」
家から大樹を確認した長は木の間を飛び移りながら大樹を目指した。
「レンタさん!」
「お、長か。どうよこれ。世界樹召喚してみたんだけど」
「世界樹を召喚……? 何があったのですか!?」
蓮太は長にも全てを語った。
「レンタさんが異世界から……しかも神から直接スキルを頂いていただなんて! レンタ様は使徒様だったのですか!?」
「そんな大それた存在じゃないよ。俺は神の不手際で一度死んだんだ。謝礼くらいもらって当然だろ? 二度と簡単に死なないようにスキルをもらっただけだよ」
「そう……でしたか。しかし……」
長はそっと世界樹に手を伸ばしてみた。
「……確かに世界樹ですね」
「わかるのか?」
「はい。エルフは世界樹の守人なので。私も過去に触れた事があるので間違いありません」
確認を終えた長は世界樹から手を離し蓮太に向き合った。
「レンタさん、世界樹は何か言ってましたか?」
「ああ。自分を守るエルフを狩る人間は嫌いだってよ。俺が召喚しなきゃ二度と姿を見せなかったんじゃないかな」
「そうですか……。それが世界樹の意志なら私達も行動に出なければなりませんね」
「……へ?」
蓮太は嫌な予感しかしなかった。しかし長はニコリと微笑むだけだ。
「さあ、まずは世界中に散っている同胞を呼び戻さなければ。ふふっ、忙しくなりますわ~」
そう言いながら小さくガッツポーズを見せる。だいたい何をするのかは見当がついている。
世界樹顕現から幾ばくかの時が過ぎ、蓮太は一つ歳を重ねていた。そして蓮太十三歳の春、世界樹の下に全てのエルフが集結した。
この森に来たエルフ達は皆涙を流し世界樹を崇めていた。
「うっうっ……、本当に世界樹が……!」
「なんて神々しいお姿! もう二度と失くさないようにしなければ!」
「これが私達の象徴……! エルフで良かった!」
どうやらエルフはかなり世界樹を崇拝しているようだった。世界樹もその声が届いているのか、葉を揺らし応えていた。
「しかし……これで全部か。千人いるかどうかだな」
「それでもまだ男がいてくれたので何とかなりそうですわ。レンタさん、今から私の家にいらして下さい。これからの事についてお話が」
「話? わかった」
そう真剣な表情で語る長の後をついていった。
「レンタさん、いえ、レンタ様」
「は? 様!? いきなりなんだよ?」
「里にこうして世界樹が顕現し、全てのエルフが集まったのはレンタ様のおかげですわ。改めて感謝を」
「やめてくれよ。俺はやりたいようにやっただけだ」
「ふふっ、謙虚なのですね」
言葉は和やかだが表情は真剣そのものだ。
「レンタ様、これから私達はこの地にエルフの国を興します」
「ふ~ん、良いんじゃないの?」
「ありがとうございます。そこでレンタ様にはもうしばらくお力を貸していただけないかと」
「俺の力? まぁ……まだ結末を見てないからしばらくはいるつもりだったから別に構わないけど」
「そ、そうですか! ありがとうございますっ! では私と共に皆の前に行きましょう!」
「うん?」
蓮太はこれから何が起こるかだいたい想像がついていた。そして大人しく従っている理由は、自分が人間だからだ。おそらく長の考えているような事にはならないだろうと安心していた。自分の役目はこの後少しだけ。そう思っていた。
長は全てのエルフを世界樹の前に集め話を始めた。
「皆さん、集まってくれて感謝いたします」
「「「「「はっ」」」」
「今日皆さんを集めたのは他でもありません。皆さんご覧のように、こうして数百年ぶりに世界樹がこの地に顕現いたしました。まずはこの事に感謝を」
「「「「世界樹ばんざぁぁぁぁぁぁぁいっ!」」」」
エルフ達のテンションがだいぶ高い。
「はい、ではこれからの事について話をしていきたいと思います。まず、私達エルフは世界樹の守人です。今後は人間と関わりを持たず、ただ粛々と世界樹を守っていきましょう。この件に異議はありますか?」
「「「「異議なし!!」」」」
「ありがとうございます。では次に、私達エルフは数こそまだ少ないですが、これから世界樹を守るために増えねばなりません。そして増えるためには町が必要となるでしょう。そこで、この世界樹を中心に緑地公園をつくり、その周囲に住居を構えます。つまり、ここに新たな町……いえ、エルフの国を興します!」
「「「「く、国っ!?」」」」
エルフ達は驚きながらも目を輝かせていた。そして長はその期待に応えて余るだろうと確信しつつ、構想を口にした。
「そうです。国の名を【聖王国エルフィリア】とし、初代聖王をこのレンタ様とします! レンタ様がいなければ再び世界樹が顕現する事も、私達が再び一つの場所で暮らす事も叶わなかったでしょう。皆さん、異議はありますか?」
ここで蓮太の想像だと異議が出るはずだった。
「長! そんな事をしたら周辺国に狙われるのではっ!」
「大丈夫です。レンタ様がいれば人間などゴミ同然です。リージュ、報告を」
「はっ」
どこからかリージュが姿を現し前に出てきた。
「少し前、レンタはノイシュタット王国にいました。ノイシュタット王国とヴィスチナ王国は戦になり、レンタは一人でヴィスチナ王国兵三十万を一瞬で殲滅したとの事」
「お、お前っ! 調べたのかっ!?」
蓮太はリージュに詰め寄った。
「当然だ。国を興すためには周辺国を知らねばならん。エンドーサはもちろん、繋がりのあるノイシュタットも調べた。そこで今の噂を耳にしてな。レンタ、なぜ力を隠す。一人で国を滅ぼせる力を持ちながらエルフといても良いのか?」
ノイシュタットは獣人や亜人にも寛大な国だ。リージュが話を聞いて回っても怪しまれる事はなかっただろう。
「別に隠していたわけじゃない。俺は静かにのんびりと暮らしたかっただけだ」
「そうか。だがなレンタ。レンタがのんびり暮らしている間にも愚かな支配者により弱き者の命は消えているのだぞ? それこそレンタがいなければ今のノイシュタットはなかっただろうし、ノイシュタットがなくなればエンドーサもこの森も消えていただろう。レンタはのんびり暮らすと言いつつも、すでに多くの命を救ったのだ。もう逃げられないのだレンタ」
「うっ……」
ここで言葉に詰まった蓮太は最後の秘策に出た。
「よ、よし! それなら仮に俺が王になったらだな、エルフは俺に従わなきゃならないんだぞ! 俺は人間だ、人間に従うなんて嫌だろう!? 一人でも反対するようなら王にはならないからなっ!」
これが蓮太の自信だった。エルフは過去、人間により散々な目に合っている。反対する者いれば王にはならない。これでなんとか逃げられるだろうと踏んでいた。
「なるほど。では長、皆に問いただしてみましょう」
「ええ、皆さん……。レンタ様は人間ですが私達エルフのために世界樹を顕現させ、私達のために食糧まで与えてくれました。そんなレンタ様はもう人間のくくりでは縛られませんよね? もはやレンタ様は聖者です! 聖者レンタ様を聖王とし、国を興すのです! これに反対する者はおりますかっ!」
「「「「いませんっ!」」」」
絶対に誰かは反対するだろうと踏んでいたが満場一致。これに蓮太は慌て始めた。
「……は? お、お前ら本当にそれで良いのかっ!? 俺は力があるだけの人間だぞっ!?」
そう叫ぶとエルフ達から次々と蓮太を崇める声があがった。
「世界樹を顕現させた時点でもはやレンタ様はエルフの神ですよっ」
「そうですよ! こうして危険な長い旅を終える事ができたのはレンタ様のおかげです!」
「毎日新鮮なお野菜が食べられて幸せです~」
「力があるだけのって力がなければ抗う事もできないんですよ? レンタ様はエルフの守り神ですっ!」
エルフ達は蓮太を神のように崇めていた。まるでどこぞのカルト教団のようだ。そしてこれを受け長が畳み掛けてきた。
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