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第04章 魔族殲滅編
07 蓮太の消えた世界で
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魔族の驚異が去り、蓮太が死んだ事になった世界は再び活気を取り戻していった。
ノイシュタット王国は神聖国エルフィリアと不可侵条約を締結し、ドワーフ達にヴェスチナ地方を与え同盟を結んだ。そこにエンドーサ王国も加え、平和な世界を構築していく。
そしてエレンは自らが女であった事を明かし、平和の象徴である勇者ロキと契りを結んだ。
「エレン様、本当に僕と結婚して良いのですか?」
「……ええ。もう私が愛した彼はいませんから。それに……絆はここに残っていますので」
エレンの腕には蓮太との子が抱かれていた。元気な男の子で、どこか蓮太に似ていた。
「この結婚は世界にいる亜人や獣人を救うためです。勇者のあなたが私の考えを尊重していると世界に発信する事がこの結婚の意味です」
「なるほど。僕もレンタには恩がありますし、ここはそのレンタが守った国です。名ばかりの勇者ではありますが、この名が役に立つなら喜んで受け入れます」
「ありがとうございます」
この結婚で世界は亜人や獣人を害する事はなくなり、それでも害する国からは亜人や獣人自らエルフィリアへと移住を始めた。
「皮肉ですね。レンタ様がいなくなって初めて理想の国ができつつあります」
「シルファ様、本当にレンタは死んだのでしょうか」
「……リージュ、私は確かにレンタ様の遺体を確認しました。遺骨も墓の下にあります。信じたくないのはわかりますがレンタ様はもういないのです」
リージュは悲しみに暮れるシルファにこう言った。
「私にはまだ信じられません。だってあのレンタですよ? いくら魔王相手でもさすがに死にはしないかと。あいつの性格を考えても死ぬくらいなら逃げると言いそうで」
「リージュ! 世界のために戦って死んだレンタ様を悪く言うのは止めなさい! 確かにそういう性格ではありますが、本当は誰よりも優しく、正義感に満ちた方なのです!」
「それはわかっていますよ。ですが……やはり私はまだあいつが死んだと思えないのです」
「もう良いわ。下がりなさい」
「……はい」
リージュは頭を下げシルファの部屋を出た。そして世界樹の下へと向かった。
「……世界樹ユグドラシル。あれから姿を見せなくなったが……ユグドラシル様は今どうしておられるのか……。召喚主が亡くなり消えられたのですか?」
しかし世界樹からはなんの返答もない。世界樹はただそこにあり、風に葉を揺らすのみだった。
そしてミリアリアはというと。
「レンタ様の功績を後の世代まで語り継ぎましょう! 教会の皆さん、世界を救ったのは神でも大国でもなく、真なる勇者レンタ・シヴァー様です! ここ新生ナーザリー王国にて次代の勇者育成を再び始めましょう!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
魔族により滅ぼされたバハロス帝国、その皇女ミリアリアは幼いながらも知識を生かし、世界中に散っていた神官を再びナーザリーへと集め、国を興していた。ミリアリアは何もできなかった事を悔やみ、生き方を変えたのだった。
そしてここはノイシュタット王国にあるスラム街。蓮太の産みの親は一人の子を抱え今日も空を見上げていた。
「聞こえる? あなたのお兄ちゃんは世界を救った勇者なんだって。ふふっ、あのヤンチャ坊主がね……」
そう言った母親の瞳から雫が垂れていた。
「無茶するなって言ったのに……っ。親より先に死んじゃうなんてねぇ……。まったく……親不孝者だよ……うっうっ……」
「あ~う~……」
母親は蓮太を失い悲しみに暮れるのだった。
そしてその頃、見事に世界を騙しきり、浮遊大陸へと逃亡した蓮太はというと。
「おいおい、こりゃあなんだ? 遺跡に見えるが……ビルじゃね?」
「「ビル?」」
浮遊大陸へと逃亡した蓮太は浮遊大陸全体を探索していた。人気は全くなく、建物もほぼ倒壊している。そんな蓮太達がいる場所は浮遊大陸中央。そこに倒壊こそしてはいないが、風化した巨大ビルが存在していた。
「レンタ、ビルってなに?」
「ああ、ビルってのはな……まぁ塔みたいなもんだ。いくつも部屋があり、狭い土地でも沢山の人間が暮らせるような建物の事だな」
それにラフィエルが疑問を投げ掛ける。
「ではこれはバベルの塔みたいなものなのでしょうか?」
「俺はバベルの塔を知らないからな。バベルの塔はダンジョンだったのか?」
「はい。階層ごとに見た目とは裏腹に巨大な迷宮が存在していました」
「迷宮か。まさかこれもダンジョンなのか? どうする?」
二人は蓮太の問い掛けにこう答えた。
「ん~……。ここ以外は廃墟だったし、入るなら入っても良い」
「そうですね。浮遊大陸に何があったか知るために入るべきかと」
「ふむ、二人とも入る考えか。しかしなぁ~……」
蓮太は風化したビルを見上げる。
「これに入るのは勇気がいるな。ちょっとした衝撃で倒壊しそうだし。入り口を開けるためのカードキーも見当たらないしなぁ……」
「カードキー?」
「ああ。入り口の扉の脇に電子パネルがあるだろ? そこにカードキーを差し込まなきゃ扉は開かないっぽいんだ。まぁ……電気すら通っていないからまず電源をなんとかしなきゃならないけどな」
二人は蓮太が何を言っているかさっぱりわかっていなかった。
「レンタ様、電気とは?」
「電源ってなに?」
「……お前らなぁ。仕方ない、もう一度倒壊している建物を漁ろう。今度は瓦礫も取り除いてくまなく探す。もしかしたら建物の下に地下室があるかもしれないからな」
「「はいっ!」」
そうして三人はもう一度、今度はビルの周囲を重点的に探索し始めた。
蓮太は今歩いていた道にしゃがみ、軽く叩いてみた。
「これ……どうみてもアスファルトだよな。あのビルも鉄筋コンクリート製みたいだし……。まったく、電子ロックといい、ここはなんだ? まるで地球みたいだな。とくにあの崩れた看板よ、ありゃコンビニじゃね? 加えて線路らしき跡もあったし……。謎だらけだな」
さらには瓦礫の中から空き缶や缶詰の空、壊れた電話や掃除機らしきもの。どうにも地球でよく見る品が散在していた。
「……そうか! もしかして書物はないんじゃ……。電子デバイスか何かかもしれない!」
そして蓮太は瓦礫の山を見る。
「……え。この中から滅茶苦茶小さいメモリか電子デバイス探すの? 無理ゲーじゃね……」
探索した結果、浮遊大陸は東京都と同等の広さがあった。だが外からみた限りでは小さな雲だ。おそらく雲は外郭シールドで、中は空間拡張されているのだろう。
蓮太はさっそくうんざりしつつ、瓦礫の撤去を進めるのだった。
ノイシュタット王国は神聖国エルフィリアと不可侵条約を締結し、ドワーフ達にヴェスチナ地方を与え同盟を結んだ。そこにエンドーサ王国も加え、平和な世界を構築していく。
そしてエレンは自らが女であった事を明かし、平和の象徴である勇者ロキと契りを結んだ。
「エレン様、本当に僕と結婚して良いのですか?」
「……ええ。もう私が愛した彼はいませんから。それに……絆はここに残っていますので」
エレンの腕には蓮太との子が抱かれていた。元気な男の子で、どこか蓮太に似ていた。
「この結婚は世界にいる亜人や獣人を救うためです。勇者のあなたが私の考えを尊重していると世界に発信する事がこの結婚の意味です」
「なるほど。僕もレンタには恩がありますし、ここはそのレンタが守った国です。名ばかりの勇者ではありますが、この名が役に立つなら喜んで受け入れます」
「ありがとうございます」
この結婚で世界は亜人や獣人を害する事はなくなり、それでも害する国からは亜人や獣人自らエルフィリアへと移住を始めた。
「皮肉ですね。レンタ様がいなくなって初めて理想の国ができつつあります」
「シルファ様、本当にレンタは死んだのでしょうか」
「……リージュ、私は確かにレンタ様の遺体を確認しました。遺骨も墓の下にあります。信じたくないのはわかりますがレンタ様はもういないのです」
リージュは悲しみに暮れるシルファにこう言った。
「私にはまだ信じられません。だってあのレンタですよ? いくら魔王相手でもさすがに死にはしないかと。あいつの性格を考えても死ぬくらいなら逃げると言いそうで」
「リージュ! 世界のために戦って死んだレンタ様を悪く言うのは止めなさい! 確かにそういう性格ではありますが、本当は誰よりも優しく、正義感に満ちた方なのです!」
「それはわかっていますよ。ですが……やはり私はまだあいつが死んだと思えないのです」
「もう良いわ。下がりなさい」
「……はい」
リージュは頭を下げシルファの部屋を出た。そして世界樹の下へと向かった。
「……世界樹ユグドラシル。あれから姿を見せなくなったが……ユグドラシル様は今どうしておられるのか……。召喚主が亡くなり消えられたのですか?」
しかし世界樹からはなんの返答もない。世界樹はただそこにあり、風に葉を揺らすのみだった。
そしてミリアリアはというと。
「レンタ様の功績を後の世代まで語り継ぎましょう! 教会の皆さん、世界を救ったのは神でも大国でもなく、真なる勇者レンタ・シヴァー様です! ここ新生ナーザリー王国にて次代の勇者育成を再び始めましょう!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
魔族により滅ぼされたバハロス帝国、その皇女ミリアリアは幼いながらも知識を生かし、世界中に散っていた神官を再びナーザリーへと集め、国を興していた。ミリアリアは何もできなかった事を悔やみ、生き方を変えたのだった。
そしてここはノイシュタット王国にあるスラム街。蓮太の産みの親は一人の子を抱え今日も空を見上げていた。
「聞こえる? あなたのお兄ちゃんは世界を救った勇者なんだって。ふふっ、あのヤンチャ坊主がね……」
そう言った母親の瞳から雫が垂れていた。
「無茶するなって言ったのに……っ。親より先に死んじゃうなんてねぇ……。まったく……親不孝者だよ……うっうっ……」
「あ~う~……」
母親は蓮太を失い悲しみに暮れるのだった。
そしてその頃、見事に世界を騙しきり、浮遊大陸へと逃亡した蓮太はというと。
「おいおい、こりゃあなんだ? 遺跡に見えるが……ビルじゃね?」
「「ビル?」」
浮遊大陸へと逃亡した蓮太は浮遊大陸全体を探索していた。人気は全くなく、建物もほぼ倒壊している。そんな蓮太達がいる場所は浮遊大陸中央。そこに倒壊こそしてはいないが、風化した巨大ビルが存在していた。
「レンタ、ビルってなに?」
「ああ、ビルってのはな……まぁ塔みたいなもんだ。いくつも部屋があり、狭い土地でも沢山の人間が暮らせるような建物の事だな」
それにラフィエルが疑問を投げ掛ける。
「ではこれはバベルの塔みたいなものなのでしょうか?」
「俺はバベルの塔を知らないからな。バベルの塔はダンジョンだったのか?」
「はい。階層ごとに見た目とは裏腹に巨大な迷宮が存在していました」
「迷宮か。まさかこれもダンジョンなのか? どうする?」
二人は蓮太の問い掛けにこう答えた。
「ん~……。ここ以外は廃墟だったし、入るなら入っても良い」
「そうですね。浮遊大陸に何があったか知るために入るべきかと」
「ふむ、二人とも入る考えか。しかしなぁ~……」
蓮太は風化したビルを見上げる。
「これに入るのは勇気がいるな。ちょっとした衝撃で倒壊しそうだし。入り口を開けるためのカードキーも見当たらないしなぁ……」
「カードキー?」
「ああ。入り口の扉の脇に電子パネルがあるだろ? そこにカードキーを差し込まなきゃ扉は開かないっぽいんだ。まぁ……電気すら通っていないからまず電源をなんとかしなきゃならないけどな」
二人は蓮太が何を言っているかさっぱりわかっていなかった。
「レンタ様、電気とは?」
「電源ってなに?」
「……お前らなぁ。仕方ない、もう一度倒壊している建物を漁ろう。今度は瓦礫も取り除いてくまなく探す。もしかしたら建物の下に地下室があるかもしれないからな」
「「はいっ!」」
そうして三人はもう一度、今度はビルの周囲を重点的に探索し始めた。
蓮太は今歩いていた道にしゃがみ、軽く叩いてみた。
「これ……どうみてもアスファルトだよな。あのビルも鉄筋コンクリート製みたいだし……。まったく、電子ロックといい、ここはなんだ? まるで地球みたいだな。とくにあの崩れた看板よ、ありゃコンビニじゃね? 加えて線路らしき跡もあったし……。謎だらけだな」
さらには瓦礫の中から空き缶や缶詰の空、壊れた電話や掃除機らしきもの。どうにも地球でよく見る品が散在していた。
「……そうか! もしかして書物はないんじゃ……。電子デバイスか何かかもしれない!」
そして蓮太は瓦礫の山を見る。
「……え。この中から滅茶苦茶小さいメモリか電子デバイス探すの? 無理ゲーじゃね……」
探索した結果、浮遊大陸は東京都と同等の広さがあった。だが外からみた限りでは小さな雲だ。おそらく雲は外郭シールドで、中は空間拡張されているのだろう。
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