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第三章

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 「なあ、どう思ったよ」

 あれからしばらく三波と中身のない話をして、柏山が「そろそろ練習にもどるわ」と言ったことで別れた。

 「どう思ったって、なにが」

 「天音のこと。俺達を気味悪がりそうに見えたか?」

 「……それは…なかったけど……」

 「だろ?」

 「でも、それが、自分に向けられたら…」

 「天音が気味悪がるって?」

 「……かも、しれないよなって」

 三波がマイノリティに対する偏見をもっていないことは間違いなかった。演技には見えなかったし、そもそも、三波はそういうやつではない。
 だけど、だけど、自分にも影響があった場合、平気なのだろうか。告白をしたとして、きっと、あいつのことだから、俺のトラウマになったような、いじめに発展する反応はしないと思う。けど、もしかしたら、態度には出さなくても、友達のフリをしていた俺を気味悪がって、それで…

 「それは、何パーセントくらいの確率だと思ってんだ?」
 
 柏山が腕を組みながら、そう言った。

 「……わかんねーけど、…10パーセント、とか?」

 「んじゃ90パーセントはいけるってことじゃねぇか! いけるだろそれ」

 「違う、ゼロじゃないっていうのが、怖いんだよ」

 「お前、とことんネガティブだよな。俺はさぁ、天音は脈ありだと思うんだよなあ」

 「はあ?? ないだろ」

 何いってんだこいつ。

 「だって考えてみろ。あんなにモテるんだぞ? それでも彼女がいねえってことは、すでに心に決めたやつがいるんだよ。んで、ずっと近くにいるのはお前。登下校も、校外学習の班も、ほとんどお前と一緒だろ。天音はお前と一緒にいたいんだよ。心に決めてんのは、お前だよ!」

 「脳にパラレルワールド詰まってんのかお前」

 どう考えたらそうなるんだ。登下校が一緒なのは方面が同じだからだし、校外学習とかで班が同じなのは、中1のときにいじめられてハブられていた俺を見つけて助けてくれていた名残だ。俺と一緒にいたいからではない。
 
 「それに。客観的に見てても天音はお前を見る目が違うよ。いつも愛想笑いしてるけど、お前には本気で笑ってる」
 
 「三波の目が違うんじゃなくて、お前の目がおかしいんだろ」

 「俺の目はお前を見抜いたけど?」

 「……。俺はわかりやすいんだろ」

 「ま、そうだな。あと、天音さ、前タイプの話をしたときに、『クール系で、努力家で、悪口を言わない人』っていってただろ。あれ、絶対お前のことだよ。ぜっっったいそう。絶対脈ありだって」

 「ないない。あったら、『恋人ができたら教えて』なんて言わねえ」

 「お前のことが好きだから、できてしまったら諦めようってことだろ!」

 「お前どこまでもポジティブだよな」

 そこまで来たら羨ましい。そうだ、こいつはどこまでもポジティブだから、うまく行ったんだろうな。俺にはない才能だ。

 「とにかく。絶対脈ありだから。コクれ。なんなら襲え」

 「は?」

 「俺と約束しただろ」

 「あれは、お前が一方的に」

 「でも拒否しなかっただろ。ノーじゃなけりゃイエス」


 「そろそろ腹くくれよ」
 
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