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子分と縄張りができたぜ

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人の世界から南海にある孤島ランカイ島は狭くはない。
そこに住む草食モンスターは種類こそ10種と少なめだが、最盛期の数は守護ドラゴンも入れて千頭近くものモンスター達が住もうが、木の実・草花を食べようがびくともせずに養っていた。
鳥や虫達も入れれば更に数は増え食糧もいるだろうが島にとってはそれがどうしたとばかりに冬であっも餓死をさせたことはないと、島に魂があればドヤ顔しているくらいに広く豊穣な土地である。

海流の関係と、島の海を縄張りにしている化け物くじらや海のドラゴンリバイアサンのおかげで島は豊穣さを人間に知られずに今日も中ではまったりとした時間が流れている。

自称最強目指すモフモフドラゴンことヨンも、すっかり大きくなり外で遊び放題のお年頃になってからは野山を駆け回り原っぱを爆走し放題。

「うおおお~!俺は強くなるんだ!!」
今日も咆哮しながら爆走して、おれのつよさをみせつけるぜ!

とは本人は思い力強くギヤ~やグォーだの他の兄弟のように鳴いているつもりだが、ヨンの声はピャ~だの、ミャ~だのの可愛い鳴き声であると言う残念さである。
ヨン自身の耳に何故自分の鳴き声が力強い咆哮に聞こえているのか周りからすれば謎である。
走っている姿もたまについてくる兄弟達からすれば可愛いものに映る。

「イチ兄、ヨンの走る姿って毛玉が転がってらみたいだな。」
「そうだな、色も可愛いし擦り寄りたくなるよな~。」
「イチ兄さん、二兄さん、ヨンが聞いたら気を悪くしますよ。」
「サンはヨンに甘いよな~。可愛いのは本当のことだろう。」

この兄弟ドラゴン達は、上からイチ・二・サン・ヨンで名前をつけられている。

守護の火ドラゴンは基本成人する15まではきちんとした名前はつけられず数字で呼ばれる慣わしがある。
親戚同士会った時は父ドラゴンの名前を出して名乗るの。
この兄弟の場合は父ドラゴンはセイルで、セイルのイチと言えばいい。

四兄弟は仲が良く、ヨンが自分達と外見どころか中身が草食モンスターと同じであっても気にしていない。
たんに食べる物が違うのかくらいにしか考えていない。
それよりも見ていて飽きがこないし、何よりも可愛いは正義だ。

「ヨンのやつ、この間寝てる時俺の顎の下に擦り寄ってきたんだぜ。モフモフしてていい匂いしてら~。」
「あ!二!!狡いぞ、今日寝る場所変われや!」
「イチ兄さん、口が悪いと母さんに叱られますよ?」それよりもヨンの食べられる物リンゴ以外に増やしてあげませんか?」
ピンクのモフモフがますます柔らかくなり、末のヨンは3人の兄達に可愛いがられている。
可愛いは種族関係なく正義である!

兄達のヨン可愛い談義はヨンは全く知らない。

時折兄達が自分を見てヒソヒソ話ているのは強い自分
を恐れているからだといつもの勘違いをしては、へへ、強くなっても兄ちゃん達がいじめるなんてしねえから安心しろよ~俺が全部守るんだからなとかなんとかある意味高潔ではあるが痛い事を考える。

今も話し込んでる兄達を優しい(笑)目で見ながらすっ飛んでいく。

ヨンは筋肉が他の兄弟に劣って体が小さいが、その分俊敏力がずば抜けて高い。
本気で走れば道によっては父ドラゴンも置いていける脚がある。

へっへへ、原っぱ1番乗りだ。
ん!なんか違う奴がいる?

「イチ兄さん!確かあの原っぱには花ゾウの群れがいるから近づくなって母さんが!」
「サン!そいつ早く言えよーー!」
「いいから早く行くよ二人共!!」
「「「急げ!!」」」

ピャ~、ピャ~

急いで来た3頭が見たものは、大型草食モンスターの花ゾウの花に持ち上げられているのにキャッキャと遊んでいるヨンの姿だった。

花ゾウは茶色の剛毛に覆われた巨大な牙を持つゾウである。
気性は島の中で1番荒く、縄張りは広大な花畑であるが時折り原っぱに出てくる時があり注意が必要なのだが

「楽しいなこれ~。
もっと高く上げてくれよ~。」
「お前はドラゴンだろう?自分で飛べるのに物好きな。」

火ドラゴンは島の守護ドラゴンで、当然外敵と戦う為に飛べる。
ヨンも形こそ違えど翼はある。もう少しすれば飛ぶ練習も始まり飛べる日も近い。
鼻での高い高いをして欲しいとは変わったドラゴンだ。

とはいえ花ゾウにヨンは何かが気に入られ、子供達の遊び相手になるなら自分達の縄張りに入ってもいい許可を出した。

遊ぶ・・こいつら俺の子分になるのか?
縄張りがそっくり俺のもんになるのか!

「いいぜ!沢山あそんでやらぁ~。」






















「貴方!今すぐ花ゾウの長にお土産持って行かないと!!」
「お前、落ち着きなさい。」

夫婦ドラゴンはイチ達からの報告にぶっ飛んだ。
火ドラゴンとはいえ子供ならあっさり踏み殺せる花ゾウにヨンが投げられたと聞いた時は絶望したが、無事だと知って安心したのは束の間で、遊び相手に選ばれたと知った時は同じかそれ以上の絶望感に襲われた。

ヨンは良い子だ、可愛い子だ。
あの勘違い言動さえなければ!

勘違い言動のことをきちんと話して、害はない子だと知ってもらわねば!




「明日子分どもと遊ぶんだ~。」
「行っておいでヨン。」
「俺達も行っていいのか?」
「皆んなで行こうよ。」
「ふふん!皆んな纏めて面倒見てやるぜ。」
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