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連載
推しのぬいぐるみと幸せな朝。つまり今でもモフモフです。
しおりを挟むある朝、目が覚めるとモフモフの人が隣に寝ていた。ベルン様は、モフモフになったり、麗しい人になったり今でも忙しい。
勇者の末裔の呪いは解けても、過去にベルン様のお姉様がかけた魔法は完全に解けることはなかった。
「おはよう……。セリーヌ」
「もう少しモフモフを堪能したいですっ!」
「はあ、モフモフになっている時は、そうじゃない時と違って熱烈だな」
ベルン様は、ため息交じりに複雑な表情を浮かべる。
絶対もう出会えないと思ったモフモフに、結婚式の翌朝には再び出会えた感動をたぶん一生忘れることはない。
「毛並みが艶やかで、愛しいです」
「どんな俺でも愛すると言ったのに……」
「もちろん、どんな姿のベルン様も、おばあちゃんになるまで好きですよ?」
「そう、なら良いのかな? 俺も永遠の愛を誓うよ」
結婚してからも、私の生活は大きく変わりない。
毎日、廊下を掃除して、洗濯もして、花壇のお世話もしている。
それから、時々、光魔法の力を使って、治療院で聖女もどきのお仕事もしている。
私が聖女のお仕事をしている時は、ベルン様が付いてくる。最近では彼のことを怖がる人はほとんどいなくなった。
「……ところでそれは?」
私が抱きしめているのは、薄茶色の毛並みに透明な緑色の瞳をしたぬいぐるみだ。
ふわふわ、モフモフの手触りに、こだわり抜いた逸品だ。現在、王都では人気が出過ぎて手に入らないほどなのだ。
「可愛いでしょう?」
「あー、うん。どう反応して良いかわからない」
私の部屋は、大小様々なベルン様ぬいぐるみの試作品で埋め尽くされつつある。
もちろん、制作と販売には、フェンディス公爵家御用達商人になった、ハンネスさんが一枚噛んでいる。
もふもふ推しとしては、自作グッズを部屋に飾るのは、当然のことなのだ。
「あっ」
もう一度、モフモフのぬいぐるみを抱きしめると、ベルン公爵がポイっとそのぬいぐるみをソファーに投げてしまった。
「……怒ったんですか?」
「いや、怒ったりしないよ。ただ、セリーヌには本物がいるだろう?」
「……っ!?」
ふわふわに包まれる贅沢は、他では味わえない至福のひととき。
もちろん、カッコいい人の姿のベルン様のことも大好きなのだけれど……。
「……ぬいぐるみにまで、嫉妬する人間になりたくないから。俺の前では、そんなの抱きしめたりしないで」
……ぬいぐるみにまで? 本当に、どうしてちょっとずれた感じでヤンデレ発動するんですか。可愛いじゃないですか。
「――――ベルン様ぬいぐるみだから、愛しいのに」
「そんな可愛らしいこと言って、部屋から出られなくなっても知らないよ?」
「一日中、モフモフを堪能?!」
「もういいか……。そんなセリーヌも好きだから、ずっとそのままでいて?」
その後しばらく、もふもふを堪能させてもらった。
そして、お兄様から「早く来てくれないと、仕事がたまる一方だ!」という催促の手紙を持った使いの人が、申し訳なさそうにフェンディス公爵家に駆け込んできた。
「くっ、今度こそ休暇をもぎ取ってくるから!」
新婚早々、ベルン様は休む暇もなく忙しい。
それはたぶん、お兄様も同じなのだろう。
何度も振り返りながら、名残惜しそうにベルン様は城に出仕していった。
私は、ソファーに投げられていたベルン様ぬいぐるみを拾うと、本日の家事についてプランを練り始めるのだった。
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