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元悪役令嬢と年下王子 6
しおりを挟む「ところで、魔術師団長殿にお会いできた、この得難い機会に」
黙って私たちのやり取りを見ていたロレンス様の言葉に、ハッと我に返る。
なぜか分からないけれど、カッと熱くなってしまった頬に首をかしげる。
でも、この感覚を私は知っている。
(これは、レザールきゅんのスチルをニヨニヨ見ているところを、家族に覗かれてしまったときのあれだわ!)
無事についた結論に納得しつつ、始まってしまった商談会を眺める。
レザール様は、いつも早朝には魔術師団本部に入っていたけれど、お時間は大丈夫なのだろうか。
「これは、遠くまで暗号を飛ばせる装置です」
「それは、風魔法による通信とは違うのか?」
「風魔法は、便利ですが、属性を持っていないと使えませんし、かなりの魔力を消費しますよね? こちらは、なんと魔力がなくても使うことが出来るのです!!」
身を乗り出しているレザール様。
すでに、販売員の術中にはまっている。
そういえば、あれは「メールがあればいいのに」という私のひと言から出来上がった魔道具だ。
……ようやく実用化したのね。
瞬時に相手に連絡が取れる魔道具。
もう少しだけ早く実用化していれば、リーフ辺境伯の最期に、ロレンス様は間に合ったのだろうか。
(……ううん。いつも旦那様は、私に言っていた。過ぎてしまったことを悔やんでも、仕方がない、前を向きなさいって)
ロレンス様が、レザール様に原理を説明している。
難しすぎて、さっぱり分からないけれど、つまり音声を飛ばすのは、風魔法で出来るけれど、膨大な魔力と全属性に適性があるレザール様ならともかく、一般の人には実用性がない、ということらしい。
(音声を飛ばそうとしたけれど、どうしても飛ばしている途中に音漏れを起こしてしまうのよね)
本当は携帯電話が欲しかったのだけれど、プライバシーが、ただ漏れになってしまうとしたら、使ってくれる人などいないに違いない。
試作品は、私が個人的に所有しているけれど……。
文字の場合は、送っても漏れないのだ。
音は風魔法、文字は光魔法に属しているのが関連しているらしい。
ロレンス様の説明は難しすぎて、その部分しか分からなかった。
「なるほど、盲点だったな」
「ええ、フィーリアからアイデアを聞いたとき、閃いたんです」
レザール様は、ものすごく難しい理論なのに、初見で理解しているようだ。
(さすが、レザールきゅん)
やはり二人並んだ姿は絵になるな……。
置いて行かれた私は、スチルに等しい二人の姿をこの目に焼き付けることにした。
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