30 / 33
第4章
聖女と極彩色の従魔
しおりを挟む「――――無事だったのね!」
胸元に切れ込みが入ってしまって、目のやり場に困るミルさんに抱き着かれる。
飛び込んできた瞬間に、ポヨンと揺れた胸元に、私の目は釘付けになった。
新たな扉が、開いてしまいそうだ。
「ミルさんこそ。間に合ってよかったです」
あの場所に残してきてしまった、シストとナオさんのことを思うと、胸がヒリヒリと痛くなる。
でも、今は前を向いて、この事態を打開するほかにできることがない。
「とりあえず回復を」
「いらないわ。この程度の傷、魔法を打つには支障がないもの」
「え……。でも」
「魔力は温存しておくのよ。だって、有限なのだもの」
そういいながら、ミルさんは自分の手首にはめられていた、腕輪を外すと私の手首にはめてきた。
「これは」
「奥の手」
「――――ミルさんが持っていたほうが」
「……いいえ。聖女様が持っているべきだわ。魔人はきっとまた、ここに来る」
怪しく光る、金色の目。口紅なんて塗らなくても、木苺のように赤い唇。
最高の美貌だと、王国の誰もが言うだろう。
むしろ、厚い化粧で今までこの美しさを覆い隠していたのではないかとすら思ってしまう。
「さ、戦いましょう。最後まで付き合ってもらうわよ? ロイド」
「ミル」
剣聖ロイドさんが、一瞬のスキをついて、ミルさんの頬をぺろりと舐めた。
その姿は、狼が愛する番にする、親愛行動のように見えたのは、私だけだろうか。
「きゃ?!」
赤くなってしまったミルさんは、純真可憐な顔をしている。
いつも化粧をしていた時よりも、むしろグッとくる。
「俺の印」
「バカ」
まるで、四つ足の狼が、獲物を狩る時みたいに姿勢を低くしたロイド様が、魔獣の中に突っ込んでいった。一対一の場合は、美しい王国騎士団流の剣術を、完璧に振るうレナルド様に軍配が上がる。
でも、対魔獣戦の時、ロイド様は強い。
「ところで……」
足元に、羽の生えた魔法陣を張り巡らせたミルさんが、眉をしかめる。
その間にも、魔法陣の構築には余念がないのはさすが、最高峰の魔術師。
――――むしろ、今からミルさんが発するだろう疑問については、私のほうが聞きたいくらいなのだが。
ステータスは、全ての人間に存在する。
それは、美しい金色の文字で描かれた、日本語だ。
ステータスが見えるのは、異世界から来た聖女の特権らしい。
そのほかに、鑑定士という職業の人は、聖女や守護騎士などの称号は見えるらしいけれど。
私も、見ようと思えば、称号のほかに、ある程度の強さが分かる。
そして、目の前にいる物体……。
毒々しい、緑と紫の色。そしてもう一匹は、蛍光ピンクとグリーン。
先ほど、戦っていたスライム二匹だ。
「――――仲間になりたそうにしている?」
そして、今まで魔物に見えたことがないステータスの金色の文字が浮かんでいる。
いや、これは……。えと、名前を付けたらいいのかな?
「えと、ミーとピー?」
思わず名前を付けてしまった。
その瞬間、かわいいとは言い難い色合いのスライム、ミーとピーがポヨンポヨンと飛び跳ねた。
あれ? つぶらな目があるの? もしかして、かわいいかも?
ポヨンポヨンと跳ねながら、二匹はレナルド様の周りの敵を排除し始めた。
緑と紫のミーは、毒を使うのか周囲の敵が、紫や緑に変色して倒れていく。
蛍光ピンクとグリーンのピーは、酸を使うらしい。周囲がジュウジュウいっているけど。
珍しく動揺したのか、ちらりとこちらに目を向けるレナルド様。
多分大丈夫です! の意味を込めて、笑顔を返しておくと、露骨にため息をつかれた。
「――――えっと、あれなに」
「えっと、聖女の新しい仲間……ですかね」
二匹のステータスには、確かに『聖女の従魔』と書かれていた。
19
あなたにおすすめの小説
このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。
嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。
イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。
娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。
【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。
【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!
未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます!
会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。
一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、
ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。
このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…?
人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、
魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。
聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、
魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。
魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、
冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく…
聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です!
完結まで書き終わってます。
※他のサイトにも連載してます
『沈黙の聖女』と呼ばれ蔑まれる私ですが、喋れない代わりに『神々の心の声』が全部聞こえるので、そろそろ神託(と称して暴露)の時間です
白桃
恋愛
言葉を失った聖女候補、アリアンナ。神殿で「役立たず」と虐げられる彼女の唯一の慰めは、神々の(かなり俗っぽい)心の声を聞くことだった。ある日、ライバルにいじめられているところを、真面目な騎士団長ライオスに助けられる。彼もまた、内心ではアリアンナを心配し、惹かれているようで…? 声なき聖女候補と、その心の声(と神々の声)が織りなす、ちょっと不思議で心温まる恋物語が今はじまる。
塔に住むのは諸事情からで、住み込みで父と暮らしてます
ちより
恋愛
魔法のある世界。
母親の病を治す研究のため、かつて賢者が住んでいたとされる古塔で、父と住み込みで暮らすことになった下級貴族のアリシア。
同じ敷地に設立された国内トップクラスの学園に、父は昼間は助教授として勤めることになる。
目立たないように暮らしたいアリシアだが、1人の生徒との出会いで生活が大きく変わる。
身分差があることが分かっていても、お互い想いは強くなり、学園を巻き込んだ事件が次々と起こる。
彼、エドルドとの距離が近くなるにつれ、アリシアにも塔にも変化が起こる。賢者の遺した塔、そこに保有される数々のトラップや魔法陣、そして貴重な文献に、1つの意思を導きだす。
身分差意識の強い世界において、アリシアを守るため、エドルドを守るため、共にいられるよう2人が起こす行動に、新たな時代が動きだす。
ハッピーエンドな異世界恋愛ものです。
【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女イデアよ、もう祈らなくとも良くなった」
ブラークメリル王国の新米国王ロブリーは、節約と経費削減に力を入れる国王である。
どこの国でも、聖女が作る結界の加護によって危険なモンスターから国を守ってきた。
国として大事な機能も経費削減のために不要だと決断したのである。
そのとばっちりを受けたのが聖女イデア。
国のために、毎日限界まで聖なる力を放出してきた。
本来は何人もの聖女がひとつの国の結界を作るのに、たった一人で国全体を守っていたほどだ。
しかも、食事だけで生きていくのが精一杯なくらい少ない給料で。
だがその生活もロブリーの政策のためにリストラされ、社畜生活は解放される。
と、思っていたら、今度はイデア自身が他国から高値で取引されていたことを知り、渋々その国へ御者アメリと共に移動する。
目的のホワイトラブリー王国へ到着し、クラフト国王に聖女だと話すが、意図が通じず戸惑いを隠せないイデアとアメリ。
しかし、実はそもそもの取引が……。
幸いにも、ホワイトラブリー王国での生活が認められ、イデアはこの国で聖なる力を発揮していく。
今までの過労が嘘だったかのように、楽しく無理なく力を発揮できていて仕事に誇りを持ち始めるイデア。
しかも、周りにも聖なる力の影響は凄まじかったようで、ホワイトラブリー王国は激的な変化が起こる。
一方、聖女のいなくなったブラークメリル王国では、結界もなくなった上、無茶苦茶な経費削減政策が次々と起こって……?
※政策などに関してはご都合主義な部分があります。
【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!
綺咲 潔
恋愛
クリスタ・ウィルキンスは魔導士として、魔塔で働いている。そんなある日、彼女は8000年前に聖女・オフィーリア様のみが成功した、生贄の試練を受けないかと打診される。
本来なら受けようと思わない。しかし、クリスタは身分差を理由に反対されていた魔導士であり婚約者のレアードとの結婚を認めてもらうため、試練を受けることを決意する。
しかし、この試練の裏で、レアードはクリスタの血の繋がっていない妹のアイラととんでもないことを画策していて……。
試練に出発する直前、クリスタは見送りに来てくれた騎士団長の1人から、とあるお守りをもらう。そして、このお守りと試練が後のクリスタの運命を大きく変えることになる。
◇ ◇ ◇
「ずっとお慕いしておりました。どうか私と結婚してください」
「お断りいたします」
恋愛なんてもう懲り懲り……!
そう思っている私が、なぜプロポーズされているの!?
果たして、クリスタの恋の行方は……!?
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる