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異世界で幼なじみともう一度
王宮と新たな出会い
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「ご苦労」
「はっ。第二騎士団長殿お疲れ様です!」
先ほどまでの態度とは打って変わって、レオン団長が王宮を守る衛兵に声を掛けた。
(当たり前なのかもしれないけど、こう言う場にも慣れているのね…)
リリアは、レオン団長にエスコートされながらも一人だけ置いておかれたような気持ちになって、少し寂しく感じた。
振り返ると衛兵が驚いたような顔をしてこちらを見ている。リリアは愛想笑いをしておいた。
「どこに敵がいるかわからないんだから、笑顔を振りまいたらダメだ」
「え?そうなの?」
(確かに貴族同士は笑顔を見せながらも水面下で戦っているのだと何かの本で読んだことがあるわ)
偏った知識をもとにそんなふうに納得したリリア。その手を握るレオン団長の力が少し強くなった。
「鬼団長とも呼ばれるお方が、随分可愛らしいご令嬢を連れているのですね」
「お久しぶりです。ディアス第一騎士団団長殿」
「久しぶりだね。レオン第二騎士団団長殿。まさか、このご令嬢が戦場の聖女ですか?想像していたより可憐で美しい」
「ちっ。……国王陛下と将軍閣下のお呼びで参上しております。先を急ぎますので、またの機会に」
(早速、水面下の戦いを見てしまったわ。途中レオン団長が小さく舌打ちしたた気がするけど、まさか…ね?)
「それは残念。ご令嬢、またお会いしましょう」
ディアス団長は、リリアの手の甲に口づけを落とすと爽やかに去っていった。
何だか、レオン団長が握る力がさっきより強くなっている気がする。
「はあ。油断も隙もない」
「仲が悪いのですか?」
「いや。ディアスとは騎士学校からの腐れ縁だが」
「そうですか」
何だか2人の間に見えない火花が散っていた気がしたのは、リリアの気のせいだったらしい。では、敵とは何なのだろう?とリリアは首を傾げた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
広い客室に案内されると、いかつい感じの男性が2人を待っていた。
「久しぶりだな。レオン、活躍は聞いている」
「お久しぶりです閣下」
「そちらの御令嬢が、リリアかな?」
リリアは緊張したが、ドレス姿ではこちらが作法にかなうだろうと神殿で教えられてきた通りに淑女の礼を取る。
聖女になった場合、王族と会う機会も多いためリリアも一通りのマナーを完璧に身に付けている。
「お初にお目にかかります。第二騎士団癒し手リリアと申します。閣下にはごきげん麗しく」
少し目を見開いた将軍閣下が、口角を上げて声をかけてくる。
「これはこれは。作法も礼も完璧ではないか。……差し支えなければ、なぜ神殿に残らなかったのか伺っても?」
「それは…。私の願う救いが、神殿の中には見つからなかったからです」
「ふっははははは!……面白いお嬢さんだ」
その時、口をつぐんだ将軍と騎士団長が臣下の礼を取った。それを見たリリアも深く淑女の礼をする。
「久しいな、レオン。そこの御令嬢が噂のリリアか?顔を上げよ」
リリアが顔を上げると、まさに王者の風格という言葉が相応しい男性がこちらを見ていた。
「此度は第二騎士団の活躍見事であった。レオンはいつも通りだが、リリア。其方の噂は余の耳まで届いている」
「陛下……。ありがたき幸せに存じます」
「ふむ。其方のもつ不可思議な知識が気になるのだが、無理に聞こうとすればレオンに連れられて本当に国外逃亡されそうだな。それにそのドレスと魔石。レオンの心そのままか?」
そう言われたリリアには思い当たることがあり、顔を青ざめさせた。背中に冷たい汗が流れる。
(洋服店での会話、聞かれていたの?)
ちらっとレオン団長に目をやると、不機嫌そうに将軍を睨んでいるのが見えた。なるほど、将軍の手による情報のようだ。
「まぁ、良い。余が興味があるのはひとつだけ。これには答えてもらうぞ?」
「はい、陛下の御心のままに」
「其方はその力、王国のために使う気はあるか?」
「もちろんです。この力我らが王と王国のために」
「……いわゆる模範解答だな。だが今はそれで良しとしよう。面白いものも見られたしな」
そう言うと国王陛下は面白いものでも見たと言うように、レオン団長に声をかけた。
「レオンがそんなにも感情をあらわにしている姿、初めて見た。愉快だからその件は聞かなかったことにしよう」
「リリアに手を出せば、この国から離れるのに躊躇いはないですよ?」
「ひゃう?!」
おかしな声をあげてしまったリリアに、全員が残念なものを見るような視線を向ける。
「くっ。本当に今宵は楽しい。この今にも爆発しそうな雰囲気さえも壊してしまう、これも天から与えられた才能かもしれんな」
「も……申し訳ございません」
「くくくっ。……いや、くっ。また来るがよい」
陛下は肩を揺らして笑いを堪えているようだ。
一方リリアは寿命が今日だけで5年は縮んだ気がする。レオン団長が、あんなことを言っておいて飄々としているのが恨めしかった。
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