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王弟教師
しおりを挟む兄とランドルフ先輩が消えると急に禁書庫が静かになった。
「なあ、ライアス。俺も帰ろうかな」
「はは、何言っているんですか叔父上。今更逃げられるはずがないでしょう」
「そんな感じだな。――――今までリアナがなぜか俺を避けてた理由の一端を見た。あれは嫌われてるんじゃなく優しさだったんだな」
そう言って笑ったレイド先生は、急に柔らかい印象になる。
そんな素敵な笑顔で、そこまで買い被られると困る。フラグ回避のためとか言えないじゃないか。
そう。レイド先生は王弟なのだ。王弟ルート……個人的趣味としてはそのルート萌える。
それにしても、先生まで私の呪いに巻き込んでしまったようだ。……申し訳ない。できるだけ迷惑かけたくないけど、ここまでくると無理かもしれない。
しかし、予想を裏切って先生は私の前まで来て片膝をついた。
「ディオの呪いのことは俺も王弟として知っていた。だが、高位貴族の間で噂になっていた姫君はやはりお前だったのかリアナ」
「ひ……姫君?」
「ああ、聖騎士を呪いから救った慈悲深い姫君だよ」
「うぐ?!」
先生のいつもある眉間の皺が深くなる。
「王族が嫌いで飛び出して教師をしている理由の一つがその呪いだ。巻き込んでしまいすまない、リアナ」
(――――わああああ!レイド先生まで、ヒロインへの台詞を悪役令嬢に間違って言ってしまう病に罹ってしまいました!)
「王族としてのケジメをつけたいという自分勝手な理由だが、俺も協力させてもらえるか?リアナ……」
(眼鏡教師の言葉の破壊力!!)
「レイド先生……ありがとうございます」
私はもう、それだけしか言えない。他に何が言えるというのか。
それなのに、その言葉を聞いたレイド先生は少しホッとした様子だ。
「じゃ、たまにはうちに帰って来てください。叔父上、帰りに作戦会議でもしましょう。闘技場でもいいですが」
「ライアス……なんかお前変わったな?」
たしかにライアス様は変わった。もっと傲慢なところが強かったように思うのに。責任感は人を変えてしまうのだろうか。
チラリとライアス様がこちらを見た。
「危うすぎて目が離せないやつを守らないといけないもので」
「ああ……それわかるな」
えっ?なんで二人揃ってこっち見るんですか。ヒロインは今、不在なのでそういうのやめましょう?
二人も王宮へと帰っていった。意外と仲が良いのかもしれない。『春君』では、叔父と甥で険悪な雰囲気が多かった気がするのに?
まあ、叔父と甥の仲が良いことは美しい。つまり良いことなのだろう。
残ったのはディオ様と私とミルフェルト様。
「リアナを守る人間が増えてとても喜ばしいのに、少し妬けてしまうな」
「ボクも最近その気持ちがわかってしまいそうでイヤだな」
んん?二人までどうして見つめてくるんですか?
「リアナ、あなたを守りたいという人間は多い。俺は希望を捨てないですよ。だから望みが叶った時には」
「ディオ様。ありがとうございます」
「俺もやらなければいけないことが山積みなのでそろそろお暇します。ミルフェルト様」
「うん。キミたち面白くて退屈しないから、また来て良いよ?」
小さく手を振るミルフェルト様とようやく二人になった。約束のリアナの手記について話を進めなければなるまい。
「……覗いてないで入っておいで?」
しかし、もう一人の来客でさらに『リアナの手記』は明らかになっていくのだ。ピンクブロンドのヒロインの登場によって。
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