破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら

文字の大きさ
49 / 109

兄の休暇をもぎ取ったはずなのに

しおりを挟む

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 兄を神殿に誘いたいのだが、毎日帰りが遅い。それでも日に一度は、公爵家に帰ってきて私に「ただいま」と言ってくれる。そんな兄が好きだ。

 しかし、兄は眠る時間を確保出来ているのか疑惑が、私の中で再び浮上していた。

「お兄様!」

 今日の兄は、文官の裾の長いフロックコート風の制服を着用している。スタイルが良く知的で爽やかな兄にはとてもよく似合う。私はその姿にしばし見とれてしまった。

 白い手袋を外す姿さえ一枚の絵のようだ。このカッコ良さ、同担と共有したい。

 ここにかっこいい文官がいますよー!

「リアナ?何か困ったことでもあるのか?」

「はい。困ったことならあります!お兄様にしか解決できません」

「そ、そうか。一体何があった?」

 なんとなく兄が嬉しそうだ。妹に頼られるのは、やはり兄としては嬉しいことなのかもしれない。

「お兄様のお休みが全然なくて困ってます」

「うん?」

「お兄様と一緒に過ごしたいです」

「え?……俺だってリアナと過ごしたいけど」

 極秘文書管理官と騎士団なんて、ありえないほど忙しい二つの場所を掛け持ちしている兄が、休めないことはわかってる。だが、今日の私には秘策があるのだ。

「お兄様、これを見てくださいませんか?」

「あ、ああ。――――は?これ、何で陛下がサインしているんだよ?え、俺の……休暇届、だと?」

「はい!王命ですのでお休みですね?」

 兄は暫し呆然と私のことを見つめていた。一分近くそのまま固まっていたが、ようやく口を開く。

「いや、でも極秘文書管理室と騎士団に残してきた仕事が……な?」

「大丈夫です!騎士団へは団長候補の研修としてランドルフ様、極秘文書管理室へは王弟としての監査のためにレイド先生が派遣されました!」

 口を再び閉じてしまった兄は、整えられていた髪の毛を手で乱すとまた呆然としてしまった。

「は?理解が追いつかないんだけど。なんで侯爵家や王族巻き込んでるんだよ、リアナ」

「お兄様の命を守るためです。皆さん喜んで協力してくれましたよ?」

 ライアス様も、ランドルフ先輩も、レイド先生もみんな兄が過労で倒れるのではないかと心配していた。相談したところ、快く協力してくれたのだ。みんないい人すぎる。

 というより愛されてますね、兄!

「……俺の命?何で最近俺が死ぬのが前提なんだ。新たな呪いでも流行ってるのか?」

「……私も学校休みです。休みの間ずーっと一緒に過ごしましょう?」

「え?なに、何の褒美なんだこれ?」

 何だか兄の言動がおかしい。まあ、そこはいつものことなので気にしないことにする。ここからが本題なのだ。

「私、ディオ様とライアス様と一緒に神殿の奥にある場所で鍛えることにしたんです。良かったらお兄様も一緒に来てください」

「え?休暇って、それ休暇って言うのか?」
「ご安心ください。対外的には、兄は極秘任務でいない事になっています!だから……」

「なるほど」

 だから、仕事のことは心配せずに、時々私と鍛えながら、兄にはゆっくり過ごして欲しいです。
 しかし段々と兄の目が真剣なものになってきた。あれ?何だか私、また何か失敗したかもしれない。

「俺がまだまだ強くなる機会をくれるんだな?ありがとうリアナ。この命をかけて応えるよ。そしてリアナを守ってみせる」

「え?お兄様……休暇、ですよ?それに命はかけないで欲しいです」

(あれ?兄の雰囲気が、本気スイッチが入った時のそれに変わってしまった?)

 私は、ただ兄に休暇を取って過労にならないようにしたかっただけなのに。これ逆に兄は過労になるのでは?

 私は、兄がどこまでも、他人に理解されないレベルで努力家であることを忘れていたのだった。私たちのレベルを急激に上げる、熱いブートキャンプが始まる鐘の音が聞こえてきた気がした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...