破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら

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ドラゴン討伐の報酬

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 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「それで、ドラゴン討伐の褒賞をもらうことになったの?」

 ミルフェルト様に会いに、今日も禁書庫に来ている。
 最近どうも鍛えすぎているせいか、魔力の強化に本気なせいか、心が疲れた時には猛烈にミルフェルト様に会いたくなる。

「そうなんです。大量のドラゴンの解体とか褒賞の計算がやっと終わったらしくて、明日王宮に呼び出されているんですよ」

「まあ、あれだけの数のドラゴンを倒したなんて記録、今までにないからね。ところで、先日もフリードと二人でドラゴンを討伐したらしいじゃないか」

「……ほとんどお兄様が倒したようなものですけどね」

 ミルフェルト様は、私の話をいつも楽しそうに聞いてくれる。
 だから私も、ついつい会いに来ていろいろ話してしまうのだろう。

 ミルフェルト様の話も、たくさん聞けたらいいのに……。

 ミルフェルト様から話を聞くのは、何が制約に引っかかってこの間のようなことが起こってしまうか怖くてなかなかできない。その気持ちを正直に伝えてみる。

「いいんだよ。ボクは聞いてもらうより、リアナの話を聞く方が楽しいんだ。それにボクの話なんて聞いても楽しくないと思うよ?」

「それについては、全力で否定します。ぜったいミルフェルト様のお話は楽しいと思います。聞きたいです。聞けないのが歯がゆいです」

「そこまで言ってくれるなら、ボクのすべてをリアナに教えるのも吝かじゃないけど」

 それを聞いて私は焦ってしまう。ミルフェルト様のあんな顔、もう見たくない。
 心臓に蔦が絡まっているだけでも痛いのに、あんなふうに蔦を生み出してしまう苦痛って……。

 でもなんだかミルフェルト様は、こちらを伺いながら楽しそうだ。

「もしかしてまた、ボクのこと考えているのリアナ?うれしいけど、気にしすぎは良くないからね。もう長い年月の事で慣れてるし」

 ミルフェルト様は今日もやさしい。それに慣れてるとかそんなのって。
 思わず私はうるんだ瞳で見つめてしまった。

「……リアナには自分の事をもっと気にして欲しいなボクは。――――そうそう、ドラゴン討伐の褒賞の件だったよね」

 そうだった。今日はミルフェルト様に会うためだけに来たのではなかった。
 相談があって来たのだった。

「そうでした。あの、ミルフェルト様。褒賞は何でもいいって言われていて困っているんです。ディオ様まで自分の分も合わせたものをもらえばいいとか言ってくるし……」

「ふふっディオらしいね。でも、いい案はあるよ」

 ミルフェルト様の案は、とっておきだった。そうだ、ライアス様に忍び込ませてばかりでは申し訳ない。
 私はその案を採用することにした。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

「聖騎士ディオ、聖女リアナ。遅くなったがあれだけ多くのドラゴンが発生していながら、被害を最小限に抑えた功績に対し褒賞を与える。何なりと申すがよい」

 その言葉を、待っていた。
 何なりと、とか言ってはいけないんですよ?

 しかし、今日の私は聖女の正装である白いドレスを纏い、聖女の仮面をかぶっているので表情を変えたりはしない。

「私は、聖女リアナにすべての褒賞を選ぶ権利を委任いたします」

 対するディオ様は欲がなさすぎる。欲しいものはないのだろうか。まあ、ディオ様が褒賞を頂くのはいつものことらしいので、今回だけは甘えさせてもらうことにする。

 呪いを解くカギがあるかもしれないアイテムを私は所望する。

「漂流物を一つ私に下さい」

 その瞬間、陛下が左右を見渡して私の近くに寄ってきた。
 他の世界や時間軸から流れてくる漂流物のことを知っているのは、王家の一部とミルフェルト様だけらしい。

「まさか、ミルフェルト様からの情報か?」

「情報源は命綱です。いくら陛下であっても、おいそれと伝えるわけには……ご命令とあらばもちろんお伝えいたしますが」

「いや、余計なことを言った。たしかに何なりと申せと言ったからな。ついてくるが良い」

 国王陛下についていく。宝物庫のさらに奥にその扉はあった。
 そして、厳重に施錠されている漂流物が隠されている部屋に入っていく。

「…………ゴミ捨て場みたいですね」

「聖女はこれがゴミだと?」

 とても、とても懐かしいものが散らばっている。
 壊れている感じの掃除機とか、古そうな冷蔵庫とか……確かにこれは、ゴミとか言ってはいけないやつだ。こんな技術がいきなりこの世界に出回ってしまうと騒ぎになるかもしれない。

 いわゆるオーパーツというものだろう。
 科学の概念がほとんどないこの世界に、こんなにも科学が持ち込まれているとは。

 その中のたった一つ、無造作に置かれていたそれに私の視線はくぎ付けになる。

 それは一冊のノートだった。日本語で書かれている。そう、日本語だ!

 とても古びてしまっているそのノートを手に取る。
 そこには日本語で日記らしきものが綴られていた。

「これ……転移者が書いたものだわ」

 私は陛下の方を振り返る。陛下は一つ頷いてくれた。それだけで、十分だった。
 私はそのノートをそっと布で包む。

 ミルフェルト様のお父様は、古の竜と呼ばれているが真実は転移者だった。
 そして、きっとここには呪いが生まれた時の状況が書かれているに違いない。
 たぶん物語の歯車が再び音を立てて動き出す。そんな予感がした。
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