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聖騎士の弟
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薄桃色の桜みたいな花が散る。私は三年生になった。見納めかもしれないこの花も。
そんなふうに気弱になった心に気合を入れたくて、私はバシバシと頬を叩いた。
「あの……大丈夫ですか?」
振り返るとそこには、ディオ様を小さくしたような天使がいた。
いや、正確には黒を基調にしたディオ様の色合いが堕天使様とすれば、この銀の髪にアイスブルーの瞳をしたこの子はまさに天使様!
は?なに……この攻撃力。一撃死するこんなの。
私は思わず、口元を隠して膝をついた。
「わっ!本当に大丈夫ですか?!」
私の心配をしてくれる天使は、心根まで天使らしい。……手遅れだとは思うが、ここはきちんと公爵家令嬢として。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。私、リアナ・ディルフィールです。本当に大丈夫なので……ご迷惑おかけしました」
「……本当に、兄から聞いてた通りおもしろ……いえ、素敵なお方ですね。僕はトア・ベルクールです。いつも兄がお世話になってます!」
――――ディオ様の弟君だった!!
「どっ、通りで攻撃力が高いはずだわ」
「え?」
「あ、いえ。こちらこそ、トア様?ディオ様にはいつもお世話になっております。その学年章、一年生ですか?今年からよろしくお願いしますね」
「はい!こちらこそ。リアナ様」
天使のような笑顔は、ディオ様と共通らしい。ベルクール家は、こんな天使の笑顔で溢れているのか。羨ましい。いや、毎日見てたら本当に萌え死してしまいそうだ。
「トア!一人で行くな……リアナ?」
「ディオ様!お久しぶりです」
私を見ると、ディオ様まで天使のような笑みを見せてくれた。本日のディオ様は、落ち着いた黒の正装だ。入学式に父兄として参加されるんですね?
(えっ、二人並んで笑ってくれないかな?永久保存版のスチルが完成する!)
私はその笑顔に見惚れてしまい、隣の弟君が信じられないようなものを見たとでも言うような表情をしたのを見逃した。
「……に、兄さんがちゃんと笑ってる」
「……俺はいつもちゃんと笑ってる、トア」
「兄さんのいつもの笑顔は嘘くさ……いや、貴族の笑顔ってやつじゃないですか」
どうも、ディオ様と弟君は仲が良い兄弟のようだ。
ディオ様があの時に呪いでいなくなっていたら、弟君が当主になっていたのか。
弟君までどうして攻略対象者じゃなかったんだろうレベルなのだけど。登場が遅いから?
「良かったら、一緒に行きませんか?」
「……トア」
「良いじゃない兄さんもリアナ様と一緒に歩きたいでしょう?」
その言葉を聞いたディオ様は、私の手をそっと握って、自分の方に引き寄せる。弟君の前なのに良いのだろうか。ほら、唖然とした顔してますよ?
「弟がすみません。でも、俺もリアナと一緒に歩いて良いですか?」
「まさかあの兄さんが……」
そんなに驚くことがあるのだろうか。ディオ様は、いつもこんな感じですよ?
「あの?」
「リアナ様、兄をよろしくお願いします」
なんだか、弟君はディオ様そっくりなのに、性格はだいぶ違うようだ。
そして、当たり前のように私の反対側の手を握ってきた。
両手を繋いで登校って、兄とディオ様以来だけど。
目立ちたくはないのだけれど、通行人が全員振り返ってくる。
「あの、トア様?」
「この方が楽しいでしょう?いろいろと」
この天使の笑顔に、ダメと言える人間はいるのだろうか。
いや、いるはずがない。
私は今日もなし崩しに、両手に花状態で登校することになった。
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