破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら

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三年生新学期と聖騎士の本分

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 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 入学式の新入生代表は、ディオ様の弟君、トア様だった。新入生代表は、入学試験の首席がすることに決まっている。

(さすが、ディオ様の弟君。兄弟揃って優秀なのね)

 弟君が席に座るまで、だれも目を離すことができなった。
 そこにいるだけで、圧倒的な存在感を放つ。

 それが、トア・ベルクールに誰もが持つ最初の印象だった。

 そして、三年生の代表は、ライアス様だった。
 さすがメイン攻略者。私はなんとか学業では勝てているが、実技ではとても勝てなくなってしまった。

 最近のライアス様は挨拶を一つする間も、場の空気をすべて飲み込んでしまう。

 そして、ライアス様の隣には、ピンクブロンドの髪をした美少女が微笑みながら佇んでいる。
 たぶん、フローラの前でだけ本当のライアス様の笑顔を見ることができるのだというのが最新の研究結果だ。
 早く婚約したらいいのに!というのが、私個人の感想であり二人への要望だ。

 ちなみに今年はフローラが副会長になった。
 私に打診があったのを、絶対嫌だとお断りしたわけではない。断じてない。
 でも、学業も教養やマナー、もちろん実技もとびぬけている最近のフローラ。

 言動が残念脳筋ヒロインであることだけは、変わらないのが残念だ。

 遠目に見ると、本当にメインヒーローとヒロイン然とした二人。
 でも、たぶん楽し気に話している内容は新入生の戦闘力についてだと思う。

 絶対間違っていないと確信している。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 入学式が終わり、帰ろうとするとディオ様に呼び止められた。

「リアナ!待ってください」

「ディオ様、お久しぶりですね?騎士団でのお仕事忙しいですか?」

「……最近は、魔獣の数が増えてきていますから。世界樹の呪いが原因なのかもしれませんね。リアナは変わりないですか?」

「変わりないですよ?」

 確かに心臓に巣くう呪いの蔦を押さえなくてはいけないから、魔力をいつも消費している。
 でも、その分なぜか私の魔力はどんどん増えてきているようなのだ。

(ディオ様の強さの秘訣の一つを体感している気がする……)

 幼い頃から、今の私と同じ状態だったディオ様も、無意識に蔦を押さえるために魔力を使っていたのだと思う。そして、ここまで強くなったに違いない。

 なにかの養成ギプスみたいな話よね。

 私は一人納得していた。

「そういえば、少しだけ試してみてもいいですか」

「ディオ様?」

 ディオ様が私の頬に手を当て目を瞑る。
 心地よい魔力を感じる。
 誰よりも強いのに、ディオ様の魔力は、穏やかで優しい。

 その魔力が、私の蔦をそっと抑え込む。

「――――ディオ様?!」

「不思議に思っていたんです。聖騎士の最上位魔法が愛しい人が危険になった時にそばに行くだけなんて。本当の使い方は……」

 ディオ様が使った魔法のせいか、急に胸のつかえが取れた気がした。

「あ、あの!すごい楽になったんですけど。ディオ様まさか」

「成功したみたいだね。良かった」

 全く変わらないかのように見えるディオ様。
 でも、そのつもりで見ればその力がかなり減ってしまっているのがわかってしまう。

「俺は、蔦を抑え込むのは慣れているから。むしろないと、戦う時に制御が利かないからちょうどいいんだよ」

「う……うそです!」

 ディオ様が制御が利かない戦い方をしている姿なんて見たことがない。
 私を心配させないための嘘だ。

「――――うそじゃない。リアナの事を心配すればするほど、制御が利かない。それなのに、日に日に強くなる一方だ」

「ディオ様はずっと強かったじゃないですか」

「確かに否定しないけど……この俺には過分なほどの力を制御できているのは、リアナがいるからだと思うから。俺を助けると思って、受け入れてほしいな」

 心臓に意識を向けると確かにディオ様と繋がっているのがわかる。
 
「――――わかりました。ディオ様、ありがとうございます」

 たぶんこの力は、私が受け入れて初めて本当に機能する。
 だって、今、ディオ様のなかで暴れるような強大な魔力も強く感じることができるから。

 ディオ様一人で背負うには、確かに大きすぎる力なのかもしれない。
 兄と私で結構倒すのに時間がかかったドラゴンも、ディオ様は瞬殺するし。

 ディオ様は、どうして運命の荒波、つねにその真ん中にいる運命なのだろうか。
 その答えに最近私は仮説を立てている。
 たぶん、世界樹の呪いがなければこの世界では聖騎士は真のメインヒーローなのだろう。

「ディオ様。私にも力になれることがあるなら、うれしいです」

 世界樹の呪いのない世界で、その笑顔を見てみたい。
 
 私はそっと、自分の胸に手を当てて世界樹に祈りを捧げた。
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