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第1章
朝食の席
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夜会から先に帰った私は、自分の部屋に戻りさっさと就寝してしまった。
今まで夫婦の部屋でアシェル様が戻るまで待っていたけれど、それももうやめるのだ。
(お兄様たちはいつでも帰ってきていいと言っていた……隣国もそろそろ諦めたでしょうし、もしかして離婚を言い渡されるかもしれないわね)
アシェル様と結婚したのは、隣国の王太子が私との結婚を求めたことを陛下が良しとしなかったからなのだ。
(隣国の王太子殿下と結婚していたら、こんなふうに身につける衣装の色に悩むこともなかったでしょうね)
隣国の王太子は、銀色の髪とアイスブルーの瞳をしている。淡いピンクの髪と空色の瞳をした私と色が合うだろう。
ため息をつきながらベッドから起き上がる。
ずいぶん遅くなってしまった。
きっとお忙しいアシェル様は、もう出掛けているに違いない。
風邪を引いて止められようと、アシェル様を見送り続けた365日。
でも、それだってアシェル様にとっては重荷だったに違いない。
「おはようございます、奥様」
「おはよう、セバスチャン」
呼び鈴を鳴らすと、シルバーグレーの髪と青い瞳の老齢の執事長、セバスチャンが現れ私に挨拶をした。
「夜会でまた具合が悪くなられたとか……お加減はいかがですか?」
「……ごめんなさい。心配をかけたわね」
「とんでもございません。ところで、本日の旦那様のお見送りですが……」
「今日はいいの。申し訳ないけれど、これからはお見送りもお出迎えも最低限にするわ」
「……お、奥様」
セバスチャンが、普段細めている目を大きく見開いた。
アシェル様が出掛けるとなれば、長旅に送り出すくらい別れを惜しみ、帰ってきたとなれば子犬のように駆け寄っていた私を見ていたのだ。それはもちろん驚くに違いない。
(でも、本当にもういいの。きっと、迷惑に思われていたもの)
そもそもアシェル様には、結婚初日に「一回りも上の男との王命での結婚、君は不本意だろう。君が十八歳になるまでの1年間、白い結婚にしよう。君を全力で守るが、こんなに年が離れているんだ。本当の夫婦になるのは難しいだろう」と言われているのだ。
それでもアシェル様に一目惚れしてしまった私は、この1年間似合いもしないアシェル様の色の焦げ茶色や濃い緑の大人びたドレスに身を包み精一杯大人っぽくなろうと努力した。
けれど、彼の隣に立つのは妖艶な美しさを持つ愛人なのだ。
なぜか少し青ざめた侍女。私が通ると頭を下げる使用人たちも、なぜかひどく動揺しているようだ。
「奥様……こちらの色をお召しになるのですか?」
「そうよ、淡い色のほうが私には合うもの」
「確かにこのドレスをお召しになった奥様は花の妖精のように可憐ですが」
「まあ……。ふふ、ありがとう」
この家の使用人たちは、いつも過度なほど私のことを褒めてくる。
アシェル様が、私を守ると言った言葉通り過保護なほどに使用人たちは私に尽くしてくれている。
そんなことを思いながら、淡い水色の花飾りがたくさんついたピンク色のドレスへと着替える。
そして遅めの朝食をとるべく食堂へ行くと、なぜかアシェル様がまだ出掛けずに席に座っていた。
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