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第1章
お茶会
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「いってらっしゃいませ、アシェル様」
文官の制服である白いロングコートを羽織った仕事姿のアシェル様はとても素敵だ。
アシェル様が、そっと私の頬に手を触れて微笑む。
「行ってくる……ところで」
「何かありましたか?」
「新しいドレス、よく似合うな」
アシェル様の指摘通り、今日の私は普段着のドレスではなくお茶会用に新しく作ってもらったドレスを着ている。
クリーム色のドレスは、裾が大きく広がったデザインだ。今日のお茶会は外で行われるので、スカート裾は少し短めで足首がのぞいている。
白い小さな花とリボンががたくさんついていて、まるでドレス自体が花束のように可愛らしい。
「ありがとうございます」
「まるで、淡い黄色と白い花畑に一輪だけ咲いた淡いピンク色の美しい薔薇のようだ」
「……褒めすぎですよ」
アシェル様の褒め言葉はいったいどこから引用しているのか。
そろそろその原典が気になり始めた。
「今日は第三王女マリーナ殿下とのお茶会だったな」
「はい」
「……王城に来るのか、心配だな」
「お仕事の邪魔はしないようにいたしますよ?」
「そうではなく……こんなにも可愛らしい姿で現れたら、騒ぎになる」
「……?」
可愛らしいことと騒ぎになることが繋がらなすぎて、ついつい首を傾げてしまう。
「自覚がないのにも困りものだ」
「アシェル様?」
ポツリと呟いたあと、アシェル様はもう一度微笑んだ。
「遅刻してしまうな、本当に行かなくては」
「お気をつけて」
「ああ、フィリアも気をつけるように」
「はい」
なぜか何度も振り返りながら出掛けていく姿を見えなくなるまで見送る。
(私も準備を終えないと……お茶会に遅刻したら大変だわ)
私はお茶会に参加するための準備を慌ただしく進めることにしたのだった。
* * *
会場に着くとすでにお茶会には、何人かが集まり和やかな雰囲気だった。
王立学園に通ってもいなかったから、王都には同世代の友人がいない。
不安な気持ちで会場に足を踏み入れると、一人の女性が私に近づいてきた。
「まあ! ベルアメール伯爵夫人、珍しいですわね」
「ミリアリア公爵夫人、お会いできて光栄です」
声をかけてきたのは、セバスチャンがお茶会に誘うと良いと言っていたミリアリア公爵夫人だった。
赤みのある茶色の髪に緑の瞳をした夫人は、とても優しそうだ。
声をかけてくださる人がいてホッとする。
「ベルアメール伯爵夫人は、お一人で公の場に来るのは初めてね」
「はい……」
「あら、緊張しているの?」
「お恥ずかしながら……とても緊張しております」
「ふふ、可愛らしいこと」
微笑んだミリアリア公爵夫人は、とても優しそうだ。
そのとき、会場の視線が一方向に向かった。
「マリーナ様がいらしたみたいね。いらっしゃい、一緒にごあいさつしましょう」
「はい」
第三王女マリーナ・ミラバス殿下。
豊かな金の髪はゆるやかなウェーブを描き、青い瞳は空のように美しい。
けれど、ミリアリア公爵夫人のあとをついて行こうとした私の歩みは、マリーナ殿下の隣に予想外の人を見つけたせいで止まってしまった。
(まさか……)
マリーナ殿下の隣にいる人は、アシェル様とお揃いの白いロングコートを羽織っている。少しデザインが違うのは、その人が女性だからだ。
胸元には濃い緑色の宝石のブローチが輝いている。
(まさか、ランディス子爵令嬢もお茶会に参加するの!?)
向こうも私の存在に気がついたのだろう。金の瞳でじっとこちらを見つめている。
図らずも私たちは、お茶会で互いに見つめ合うことになったのだった。
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