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聖女、運命と役割 2
ほんの少し離れていただけなのに、ずっと会わなかった家族のように懐かしい。
そう、シルビアにとって既にアンは、いうなれば姉のような存在なのだろう。
「アンさん!」
「シルビア様」
ようやく下ろしてくれたライナスから離れて、アンに走り寄るシルビア。
子犬のような彼女を受け止めたアンは、もう不調のかけらも感じられない。
「ご無事でよかった!」
「もちろん、これからもシルビア様をお守りするため、生きていきますとも」
「……守らなくていいので、生きてください」
「それでは、生きる意味がありません」
その言葉には、あきらめのような、許しを請うような響きが込められていた。
「……そうですか。それでは、聖女として命令します。生きて、ずっと私を守りなさい」
その声は、聖女のようでありながら、紫の瞳は少しだけ目の前の存在に甘えるように潤んでいる。
「その代わり、私だって守ります」
「それは……」
「大事なものが増えていくのは怖いけれど、全部、守りたいから」
神託で、大切な人たちが苦しむ姿を見るのは苦しい。それでも、それを覆し、距離をとるのではなく守るのだと、シルビアは決める。
「ところで、長老様にはお会いできましたか?」
「……はい。シルビア様のお父上とお母上について、話していただきました」
「そうですか……。やはり、父や母のこと、長老様はご存じだったのですね」
シルビアを見つめていた慈愛に満ちた瞳は、時々遠くの誰かを見ているようだった。
「お茶でも淹れましょうか」
「……本日は私が!」
「……ふふ。もう、体の具合は大丈夫そうだから、普通のお茶にしようと思ったのですが……。それでは、お願いしますね?」
「着替えて参ります!」
慌てて侍女服に着替えるため走って行ったアンの背中を見つめたシルビアは、一つだけため息をついた。
そっと、後からライナスがシルビアを抱きしめる。
「きっと、楽しい話ではないでしょうが……」
「ダメだと言っても、そばにいる」
「……はい。一緒にいて下さいね?」
降る雪は、二人の髪に舞い降りては、刹那輝いて溶けていく。
「甘いものでも、用意しようか」
「……そうですね。その前に、もっと甘いものがほしいです」
「……?」
「かがんでもらえませんか」
背の高いライナスが屈むと、シルビアはその両肩に手を乗せてつま先立ちになった。
それでも、身長差が大きく、ライナスはまだ遠い。シルビアは、ほんの少しだけ頬を膨らませた。
「……もう少し、近くに」
その言葉は、完全に告げられることなく、やわらかく温かい感触に阻まれる。
少し息苦しいほど、長い口づけは、周囲の寒さすら忘れさせるみたいだ。
「……確かに、甘いな」
その言葉だけ告げて、もう一度落ちてきた口づけは、溶けたチョコみたいに甘かった。
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