光の中で

橘天音

文字の大きさ
上 下
3 / 4

三話

しおりを挟む
『カゼアザミといえば、最大の特徴は、皆さん"障がい"を持っていながらも活躍なさっているという素晴らしいところですよね!』
とコメンテーターが答える。
「あほらし。」
ボソリと町崎が言うと
「まぁ、うちらはそれが半分売りのようなもんやし。」と桧山が言った。
「でも、あそこまで誇張をしなくたって…」と食い下がるが、すかさず伊乃畑が
「まぁね、一番ネタにしやすい誰もが好奇の眼差しでみる懐疑的な部分ではあるからね。」といった。
「ま、それに僕も入ってるんだけどね。」
「夏一が一番関係ないのに言われるのは確かだな。」
「ううん。集志、僕が決めたことだから別にいいんだけどさ。」
一人一人のプロフィールがテレビを流れていく。
テレビの言う彼らの特徴。障がい。それは、四季、伊乃畑は目が見えない。町崎は心臓病を抱える小さな女の子。桧山は治りかけのパニック障がい。野々瀬は一般人なのだが、喉仏がなく声が高いままなのだ。という彼らにとっては"ただそれだけの話"なのだ。
ご丁寧にもテレビはそれを一字一句逃さずに解説をしていく。
『えぇ!?』とどよめきがさらに加速する。
『ということで、直撃取材に行ってきました!』というと再びインタビュー画面へと切り替わる。
『…ということですが、皆さんはいつから一緒なんですか?』
『私たちが大学一年生だったからー…今何年目?』と画面内で四季が他のメンバーへと問いかける。
『8年目ー、だね!』と明るく町崎が応えた。
『そんなに長くいらっしゃるんですか!?』
「んー、流しながら今度の計画立てますか!」と画面内と変わらないテンションの高さで彼女は言った。
「うん。そうしてもらえるとありがたい。」と野々瀬がいう。
「夏一くん今日たしか忙しいんだよね」と笑いながら言った。
「うん!四時にはここをでなきゃ!」
「どーせ、今日廃車になるF402に乗りたいんだろ?」
「そ、そういうこと!」クフフと野々瀬が笑う。
「ほんと相変わらずよねぇ」と呆れるように町崎は言うが、その様はもう慣れましたと言わんばかりだった。
「ま、始めようや」
「ええ、桧山さん!今度の仕事なのですが…」
そこには、画面とはまた違う、緩いラフな空気があった。ゆっくり五ヶ月も先の仕事を計画する。
というのも、四季と伊乃畑の点字楽譜のためだった。点字楽譜とはその名の通り楽譜を点字に訳したもので、とても膨大な量なのに付け加え、訳すのに二、三ヶ月時間がかかるなんてザラにある話だった。それ故に、そんな先のスケジュールを組むのだ。
「今度は病院の小児病棟からの依頼です。」
と、町崎が解説をしていく。話している間に、一番回答に困った質問が飛んできていた。
『やはり大変なことは沢山あると思うのですが、こういう活動をしていく上で大変だなぁみたいなことはありますか?』
しおりを挟む

処理中です...