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狼の悶絶
廊下を行く佐々木の背を見つめながら、五十嵐は一瞬で決断する。
——今、このタイミングを逃したら、彼女にこの話を聞くチャンスは恐らく二度とやって来ない。
「——佐々木さん。なんだか嬉しそうだね。彼氏と電話?」
背後から不意にかけられた五十嵐のさりげない声に、佐々木は驚いたように振り返ったが、すぐに隠しきれない笑みを口元に浮かべた。
「あ、五十嵐さんお疲れ様です~♪
やだぁー彼氏じゃないですよー! ただの元カレです~。
ほんと自己中で、いきなり電話一本で別れたいって言ってくるようなヤツですよ~。でも、バンドでギター弾いてる時だけはほんとカッコいいんですけどねー♪」
どこか高揚したように、佐々木は自ら「元カレ」のことを饒舌に話して聞かせる。
この話題に困惑したり、躊躇したりするような気配は全くない。
この女、本当に篠田のことを想っているんだろうか——
そんな強い違和感が、ざわざわと五十嵐の脳内をよぎる。
複雑に波立つ内心を一切見せることなく、五十嵐はさらりと続ける。
「へえ。バンドマンなんだ……かっこいいね。なんてバンド?」
「『BLACKJOKE』って、最近すごく人気出てきたバンドなんです。今度渋谷でライブやるから、来ないかって……私の分のチケット買ってくれたらしくて」
「……ふうん。
——で、行くの?」
「……どうせ会ってもムカつくことばっかりだろうけど……ライブは行こうかな。
せっかくのチケット無駄にするのもあれだし」
言葉とは裏腹に、彼女の表情からは、その男を嫌っているような気配は全く感じられない。
むしろ——。
『私は今そういう人はいない』——。さっきの通話の中に確かに混じった、その言葉。
それがどういう意味なのか……そんなことは、ここで自分が問いただすとこじゃない。
「——人気バンドのライブなんてめちゃくちゃ盛り上がりそうだねー。思い切り楽しんでね」
「ありがとうございます~!」
五十嵐のあくまでビジネスモードな微笑に、佐々木はニコっと軽く会釈を返すと、軽い足取りで自席へ戻っていった。
「——……」
セーブすべきニコチンをやたらに追加したくなり、五十嵐は眉間を深く寄せて喫煙スペースへと踵を返した。
*
煙草を立て続けに二本吸っても脳内のざわつきを追い払うことができず、五十嵐はもやもやとしたものを抱えたまま自席へと戻った。
終業時刻まであと一時間ほどだが、なんだか業務に集中できる気がしない。
この前の日曜。
篠田の妹である真琴に協力してもらい、仲林美優の通うクッキングスクールから至近距離にあるカフェのオープンテラスで、これ見よがしに真琴とティータイムを過ごした。
その効果が現れたのかどうか。
日曜の夜、美優からメッセージが入った。
『今度の土曜に約束していた映画の予定、ちょっと変更してもいいでしょうか?
なんだか急に、海が見たくなっちゃって。……もしよかったら、近くの海までドライブに連れて行ってくれませんか?
わがまま言って、ごめんなさい』
「昼間連れてた女は誰よ!?」というようなあからさまな言葉は、どこにも見つからない。
それがむしろ落ち着かないざわざわ感を増幅させる。
彼女は、目論見通り俺たちの姿を目撃したのだろうか。
それともあの日、こちらに視線を向けることは結局なかったのだろうか?
ただ——
映画ではなくドライブに変更、という点は……
外ではできない話を車内でじっくりしたい、という意図がチラチラと見える気がしてならない。
当然、美優の希望は快諾した。
そもそもそういう機会を作りたくてこの計画を実行に移したのだ。
ただ、彼女が車内でどんな風にその話を切り出すのか——
それを考えると、果てしなく憂鬱だ。
——例えどんな行動に出られても、彼女の想いを受け止められないという自分の主張を曲げる気はないのだが。
そんな憂鬱に、つい今しがた、新たなもやつきが追加された。
さっきの佐々木の不可解な言葉や表情が、脳内を往復する。
その本心が、気になって仕方なく——
篠田がそれに気づいているのかも、気がかりでならない。
彼女の本心が、もし自分の予想通りなのだとしたら……
そして、篠田がもしもそのことで不安や痛みを抱えているとしたら——。
優しく純粋な彼の心を弄ぶようなクズ女ならば、断じて許せない。
まあ、彼女の想いがどうであれ、いずれ彼を奪い取ってやる予定だけどな。
そんなことを考えながらふうっと一つため息をつき、何気なく顔を上げた瞬間——向かい側の篠田と、視線がぶつかり合った。
「——……
ど、どうした篠田くん?」
自分の苦悩の中心にいるその相手の眼差しを雑に逸らしてしまうことができず、五十嵐はドギマギと何とも不器用な言葉を呟く。
「……あ、いえ……
五十嵐さん、煙草の匂いがする気がして……
もし違ってたら、すみません」
篠田もやはりドギマギとしながら、少し困ったように微笑んだ。
立て続けに喫ってきたせいで、匂いを気づかれたようだ。
「あ? ああ……煙草な。
数年前にやめたんだけどな。最近、何となくぶり返し気味……というか」
「……そうなんですか?
喫いたくなる気持ちって、俺にはわからないですけど……また逆戻りしてしまわないように、気をつけてください」
篠田の瞳に、本気で五十嵐の身体を気遣う色が漂う。
…………。
かっ……
可愛い……
んあああああーーーっっ可愛い!!!!
目の前のパソコンを叩き潰したいレベルで可愛いんだがっっっ!!!!???
「……ん、そうだな。気をつけなくちゃ」
そんな内心の叫びをぐっと押し殺し、努めて無表情に通常モードの返事を返す。
「口で言うだけじゃダメですよ?」
「……」
ふっと微笑む彼の表情の奥に、不意に濃い疲れの色がよぎった気がして——五十嵐は思わず篠田をじっと見つめた。
「……あの、五十嵐さん?」
強い視線に戸惑い始めた篠田に、五十嵐は直球な質問を抑えきれない。
「——篠田くん。
何か、気がかりなことでもあるのか?」
「——え……
なんでですか」
「いや……少し、疲れた顔をしている気がしたから」
そんな五十嵐の言葉に、篠田は一瞬ピクリと動きを止めたように見えたが——すぐに、すっと穏やかな笑顔を浮かべた。
「ええ……
少し、というか、ちょっといろいろ……。
でも……ついさっき、解決の糸口が掴めた、と言うか……なんだか少し、自分の中で気持ちに整理がつけられそうな感じです。
——やっぱり悩みは自分一人で抱えてちゃダメですね」
誰かに悩みでも打ち明けたのだろうか、どこかスッキリとした表情で篠田はそんなことを言う。
…………気持ちに、整理をつける……?
五十嵐の胸に、むくりと新たな不安が湧き上がる。
——自分の中で、整理をつける……って。
一体何を、どんな風に整理するんだ?
それは、佐々木との関係のことだろうか?
それとも……
一緒に飲んだあの夜、彼が取り乱すように垣間見せてくれた、自分への想いを——
せっかく自分に向けようとしてくれた、その想いを……やはりなかったことにするつもりだ……とか??
まさか、そんなよりによって——。
——いや。
充分有り得るだろ。
彼が俺の方を一度でも向いてくれたそのことが、既に奇跡に近いのだから。
「——……
そうか。
整理がつきそうなら、まあいいんだが」
激しい焦燥を堪えつつ、五十嵐はいつもより一層無表情に答える以外にない。
「——まだいろいろモヤついたものが目の前にありますが……
全て整理がついたら、五十嵐さんに、ちゃんとお話しします」
穏やかながら確かな口調でそう言うと、篠田は真っ直ぐに五十嵐を見つめる。
「——……」
話す……
話すって、何をだ——!?
頭を抱えて絶叫したい思いを必死に堪えながら、五十嵐は目の前の愛おしい微笑をあくまでクールな眼差しで見つめ返した。
——今、このタイミングを逃したら、彼女にこの話を聞くチャンスは恐らく二度とやって来ない。
「——佐々木さん。なんだか嬉しそうだね。彼氏と電話?」
背後から不意にかけられた五十嵐のさりげない声に、佐々木は驚いたように振り返ったが、すぐに隠しきれない笑みを口元に浮かべた。
「あ、五十嵐さんお疲れ様です~♪
やだぁー彼氏じゃないですよー! ただの元カレです~。
ほんと自己中で、いきなり電話一本で別れたいって言ってくるようなヤツですよ~。でも、バンドでギター弾いてる時だけはほんとカッコいいんですけどねー♪」
どこか高揚したように、佐々木は自ら「元カレ」のことを饒舌に話して聞かせる。
この話題に困惑したり、躊躇したりするような気配は全くない。
この女、本当に篠田のことを想っているんだろうか——
そんな強い違和感が、ざわざわと五十嵐の脳内をよぎる。
複雑に波立つ内心を一切見せることなく、五十嵐はさらりと続ける。
「へえ。バンドマンなんだ……かっこいいね。なんてバンド?」
「『BLACKJOKE』って、最近すごく人気出てきたバンドなんです。今度渋谷でライブやるから、来ないかって……私の分のチケット買ってくれたらしくて」
「……ふうん。
——で、行くの?」
「……どうせ会ってもムカつくことばっかりだろうけど……ライブは行こうかな。
せっかくのチケット無駄にするのもあれだし」
言葉とは裏腹に、彼女の表情からは、その男を嫌っているような気配は全く感じられない。
むしろ——。
『私は今そういう人はいない』——。さっきの通話の中に確かに混じった、その言葉。
それがどういう意味なのか……そんなことは、ここで自分が問いただすとこじゃない。
「——人気バンドのライブなんてめちゃくちゃ盛り上がりそうだねー。思い切り楽しんでね」
「ありがとうございます~!」
五十嵐のあくまでビジネスモードな微笑に、佐々木はニコっと軽く会釈を返すと、軽い足取りで自席へ戻っていった。
「——……」
セーブすべきニコチンをやたらに追加したくなり、五十嵐は眉間を深く寄せて喫煙スペースへと踵を返した。
*
煙草を立て続けに二本吸っても脳内のざわつきを追い払うことができず、五十嵐はもやもやとしたものを抱えたまま自席へと戻った。
終業時刻まであと一時間ほどだが、なんだか業務に集中できる気がしない。
この前の日曜。
篠田の妹である真琴に協力してもらい、仲林美優の通うクッキングスクールから至近距離にあるカフェのオープンテラスで、これ見よがしに真琴とティータイムを過ごした。
その効果が現れたのかどうか。
日曜の夜、美優からメッセージが入った。
『今度の土曜に約束していた映画の予定、ちょっと変更してもいいでしょうか?
なんだか急に、海が見たくなっちゃって。……もしよかったら、近くの海までドライブに連れて行ってくれませんか?
わがまま言って、ごめんなさい』
「昼間連れてた女は誰よ!?」というようなあからさまな言葉は、どこにも見つからない。
それがむしろ落ち着かないざわざわ感を増幅させる。
彼女は、目論見通り俺たちの姿を目撃したのだろうか。
それともあの日、こちらに視線を向けることは結局なかったのだろうか?
ただ——
映画ではなくドライブに変更、という点は……
外ではできない話を車内でじっくりしたい、という意図がチラチラと見える気がしてならない。
当然、美優の希望は快諾した。
そもそもそういう機会を作りたくてこの計画を実行に移したのだ。
ただ、彼女が車内でどんな風にその話を切り出すのか——
それを考えると、果てしなく憂鬱だ。
——例えどんな行動に出られても、彼女の想いを受け止められないという自分の主張を曲げる気はないのだが。
そんな憂鬱に、つい今しがた、新たなもやつきが追加された。
さっきの佐々木の不可解な言葉や表情が、脳内を往復する。
その本心が、気になって仕方なく——
篠田がそれに気づいているのかも、気がかりでならない。
彼女の本心が、もし自分の予想通りなのだとしたら……
そして、篠田がもしもそのことで不安や痛みを抱えているとしたら——。
優しく純粋な彼の心を弄ぶようなクズ女ならば、断じて許せない。
まあ、彼女の想いがどうであれ、いずれ彼を奪い取ってやる予定だけどな。
そんなことを考えながらふうっと一つため息をつき、何気なく顔を上げた瞬間——向かい側の篠田と、視線がぶつかり合った。
「——……
ど、どうした篠田くん?」
自分の苦悩の中心にいるその相手の眼差しを雑に逸らしてしまうことができず、五十嵐はドギマギと何とも不器用な言葉を呟く。
「……あ、いえ……
五十嵐さん、煙草の匂いがする気がして……
もし違ってたら、すみません」
篠田もやはりドギマギとしながら、少し困ったように微笑んだ。
立て続けに喫ってきたせいで、匂いを気づかれたようだ。
「あ? ああ……煙草な。
数年前にやめたんだけどな。最近、何となくぶり返し気味……というか」
「……そうなんですか?
喫いたくなる気持ちって、俺にはわからないですけど……また逆戻りしてしまわないように、気をつけてください」
篠田の瞳に、本気で五十嵐の身体を気遣う色が漂う。
…………。
かっ……
可愛い……
んあああああーーーっっ可愛い!!!!
目の前のパソコンを叩き潰したいレベルで可愛いんだがっっっ!!!!???
「……ん、そうだな。気をつけなくちゃ」
そんな内心の叫びをぐっと押し殺し、努めて無表情に通常モードの返事を返す。
「口で言うだけじゃダメですよ?」
「……」
ふっと微笑む彼の表情の奥に、不意に濃い疲れの色がよぎった気がして——五十嵐は思わず篠田をじっと見つめた。
「……あの、五十嵐さん?」
強い視線に戸惑い始めた篠田に、五十嵐は直球な質問を抑えきれない。
「——篠田くん。
何か、気がかりなことでもあるのか?」
「——え……
なんでですか」
「いや……少し、疲れた顔をしている気がしたから」
そんな五十嵐の言葉に、篠田は一瞬ピクリと動きを止めたように見えたが——すぐに、すっと穏やかな笑顔を浮かべた。
「ええ……
少し、というか、ちょっといろいろ……。
でも……ついさっき、解決の糸口が掴めた、と言うか……なんだか少し、自分の中で気持ちに整理がつけられそうな感じです。
——やっぱり悩みは自分一人で抱えてちゃダメですね」
誰かに悩みでも打ち明けたのだろうか、どこかスッキリとした表情で篠田はそんなことを言う。
…………気持ちに、整理をつける……?
五十嵐の胸に、むくりと新たな不安が湧き上がる。
——自分の中で、整理をつける……って。
一体何を、どんな風に整理するんだ?
それは、佐々木との関係のことだろうか?
それとも……
一緒に飲んだあの夜、彼が取り乱すように垣間見せてくれた、自分への想いを——
せっかく自分に向けようとしてくれた、その想いを……やはりなかったことにするつもりだ……とか??
まさか、そんなよりによって——。
——いや。
充分有り得るだろ。
彼が俺の方を一度でも向いてくれたそのことが、既に奇跡に近いのだから。
「——……
そうか。
整理がつきそうなら、まあいいんだが」
激しい焦燥を堪えつつ、五十嵐はいつもより一層無表情に答える以外にない。
「——まだいろいろモヤついたものが目の前にありますが……
全て整理がついたら、五十嵐さんに、ちゃんとお話しします」
穏やかながら確かな口調でそう言うと、篠田は真っ直ぐに五十嵐を見つめる。
「——……」
話す……
話すって、何をだ——!?
頭を抱えて絶叫したい思いを必死に堪えながら、五十嵐は目の前の愛おしい微笑をあくまでクールな眼差しで見つめ返した。
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