【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

本編

アリスに聞こえちゃう

アイスが話を聞いてくれない。

確かにラブレターはもらったけど、ちゃんと断ったし！

学生時代にもらったことがなかったから喜んだだけだし！
それもダメなの!?


こんなふうに攻められるのっていつ以来だろう。
怖い。


団服の上着をはぎ取られたところで、アイスの手が止まった。


「クリス、これ。」


団服の中に着けていた、結婚指輪とロケットを鎖に通したもの。

それを、アイスは見ている。

俺の口から、スカーフが取り除かれた。


「指輪は邪魔だし、まだ公表していないから…。ペンダントにしてるんだけど。」
せき込んで、涙目で言う。


「そうじゃなくて。」

アイスは、ロケットを開いて、写真を見ていた。


家族写真。

可愛い、二人の。アリス。



「だって、俺の一番大事なものだから…。」


話、ちゃんと聞いてくれる？



「ラブレターもらってうれしかったけど、俺、ちゃんと断ったよ。結婚してるし、可愛い子どももいるんだって言った！そこまで言えば、俺になんて関心なくしてくれると思ったから…。」

談笑してたのは、女の子の一人の名前が…。


名前がアイリスだったんだ。


アイスとアリスを足したみたいだなぁって思って。
なんか、面白くて。


なのに、アイスはこっそり見てて、怒ってるし。
話聞いてくれないし。
こんなひどいことしようとするし。


「悪かった、クリス…。」


アタマに上った血がさーっと引いたようで、泣く俺を抱きしめる。

涙を唇ですくい、口づけを落とされる。


「あ…。んっ。」


分かってくれたのに続けるの？

俺、たぶん汗臭いんだけど。


「クリスの匂いは好きだよ。」

「へんたい。なんだから…。」



アイスの首に腕を回す。

甘い、甘い。


「でも、アリスに聞こえちゃう…。」

「大丈夫、私が全部口づけで声を奪ってしまうから。」



このまま夜が更けそうだなあ。


でも、まあいっか。