【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

竜鳴躍

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本編

母は強い

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泣き崩れてるんじゃだめだ。
俺がしっかりしないといけない。

「ミカエル、みんな、公爵の息子が連れ攫われた。すでに捜索に当たっていると思うが、情報をくれ。」

「それが…。攫ったのはその道のプロだと思うわ。男爵夫人に見つかってしまったのが、予想外だったはず。
それ以外、何の痕跡もないの。」

「そもそも、どうしてこの公爵家に潜めたんだ?」

ミカエルとハデスが考える。



「ちょっといいかね。」

おじいさまが挙手をする。

「私も、公爵家の情報を探りに、その道の者を雇ったことがある。この屋敷は、普段受け入れる人間を選んでいる割には、身辺がはっきりしていて、権力と無関係の人間についてはすんなり受け入れる傾向にある。例えば、出入りの業者とか。な。」

「意外と配置している護衛とか少ないから、入ってしまえば楽ちんよね。ねえ、今日かその前の日でもいいわ。新しい業者を入れたかしら?」

「そういえば、昨日、お庭にブランコを…。」

「そいつ、洗ってくれる?」と、部下に指示を出す。




「クリス…。」

ふるふる震える俺の肩を、アイスが抱き寄せた。

ちゃんとしなきゃ。俺がやらなきゃ。でも、考えがまとまらないんだ。でも、やらなきゃ…。
はやくはやくはやく…。

ぽろっと、涙がこぼれる。

みんなの前なのに。


「…みんな。実は、俺が公爵夫人なんだ。誘拐されたのは、俺とアイスの子なんだ。絶対に、無事に取り戻す。
そして、もう二度と同じことが起きないように、ぶっ潰す!」


ミカエルたち以外には知られていないと思ってたけど、みんなから『気づいてた。』と言われた。



『おとうさん、おとうさん。』

庭で待っていたメガンテが、話しかけてくる。

『ぼく、おとうさんの子の匂いさがせるよ。僕たちにお手伝いさせて。』

「ありがとう!」

時間との勝負だ。ありがたい。



さあ、反撃の時間だ。


母は強い。


お父様もおじいさまも、ひいおじいさまも、みんなでアリスを助けに行くからね。
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