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新章(アリスの結婚編)
火薬と花火とヤマタノオロチ
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ザオラルの発情期が終わったところで、二人には1月ほどジャホンに行くと伝えた。
来月、王太子の即位式までには帰る。
そういう約束だ。
「えええ、また行っちゃうの!!」と、アヴニールは泣いたが、キャッツアイがいるから大丈夫だろう。
しばらく騎士団に行かなかったアヴニールだが、病気でもしたかと心配したキャッツアイが見舞いに来たので、また、騎士団に通い始めた。
ぶたいちょを守れるお母さまみたいなすごい騎士になる!と息巻いて、一所懸命勉強しているようだ。
時々、お母さまが日替わりで違う国の言葉でアヴニールに話しかけているのは、訓練の一種らしい。
「じゃあ、行ってくるね。」
「気を付けて行ってらっしゃいませ。あまり向こうにはいかれないのですから、しっかりと孕ませてあげてくださいな。」
ふふっと笑う彼女に苦笑いする。
でも、こうでなければ3人も妻を娶ろうなんて男には嫁げないのだろう。
「僕、一足先に卵産んで待ってるからね!」
ザオラルが、ニコニコ手を振った。
できれば、3人、同じ学年くらいで生まれるといいなと思う。
妻にも子にも順列はつけさせたくないから。
とはいえ、今回はそれだけではないのだけど。
なんか最近、自分が繁殖馬になったようで、まあそれも立場上仕方ないことだとは思っているけれど、ちがうそうじゃない感もある。
複雑だな…。
もっと、まったりみんなと過ごしたいんだけど。
それだけ、僕との子を早く抱きたいということかな。
甲板で、みんなが見えなくなるまで岸を眺め、風に吹かれる。
ツーっと、トレンチコートを着た黒髪の男が音をたてずに隣に立った。
その男のさらに隣には、恋人のように細身で釣り目気味の怜悧な印象の綺麗な男が腕を組んで寄り添う。
ピーターとティンカー。
目で合図をして、別れた。
ジャホンでは、二人は宿に泊まるが、僕はタケルの待つ城で泊まる。
城に着くと、タケルは喜んで抱き着いてくれた。
僕は無線を隠し持っているから、ピーターたちと僕の情報は共有できている。
タケルにジャホンの火薬の話を聞いてみた。
意外なことに、タケルはニコニコして答えた。
「ジャホンは火薬の調合が得意なんですよ! 森の獣を倒すのに、猟銃の弾として製造しているのもそうなんですが、芸術的なんです!ぜひ、今夜、アリス様にもお見せしたいです。」
「今夜?」
「ええ、この火薬は、夜、楽しむものなんですよ。それに丁度、打ち上げる時期ですから。」
日が沈み、あたりが真っ暗になってきた。
部屋の前の渡り廊下に出て、空を見上げると、轟音。
凄い音が聞こえたと思ったら、空の闇に現れたのは、色とりどりの花。
「アリスさま、これが火薬の芸術。『花火』です。」
魔除けと鎮魂の意味も込められているんですよ。
そろそろ人食いの大蛇が姿を現す時期なんです。大きな音で追い払わねば。
その名は、ヤマタノオロチ。
そういいます。
来月、王太子の即位式までには帰る。
そういう約束だ。
「えええ、また行っちゃうの!!」と、アヴニールは泣いたが、キャッツアイがいるから大丈夫だろう。
しばらく騎士団に行かなかったアヴニールだが、病気でもしたかと心配したキャッツアイが見舞いに来たので、また、騎士団に通い始めた。
ぶたいちょを守れるお母さまみたいなすごい騎士になる!と息巻いて、一所懸命勉強しているようだ。
時々、お母さまが日替わりで違う国の言葉でアヴニールに話しかけているのは、訓練の一種らしい。
「じゃあ、行ってくるね。」
「気を付けて行ってらっしゃいませ。あまり向こうにはいかれないのですから、しっかりと孕ませてあげてくださいな。」
ふふっと笑う彼女に苦笑いする。
でも、こうでなければ3人も妻を娶ろうなんて男には嫁げないのだろう。
「僕、一足先に卵産んで待ってるからね!」
ザオラルが、ニコニコ手を振った。
できれば、3人、同じ学年くらいで生まれるといいなと思う。
妻にも子にも順列はつけさせたくないから。
とはいえ、今回はそれだけではないのだけど。
なんか最近、自分が繁殖馬になったようで、まあそれも立場上仕方ないことだとは思っているけれど、ちがうそうじゃない感もある。
複雑だな…。
もっと、まったりみんなと過ごしたいんだけど。
それだけ、僕との子を早く抱きたいということかな。
甲板で、みんなが見えなくなるまで岸を眺め、風に吹かれる。
ツーっと、トレンチコートを着た黒髪の男が音をたてずに隣に立った。
その男のさらに隣には、恋人のように細身で釣り目気味の怜悧な印象の綺麗な男が腕を組んで寄り添う。
ピーターとティンカー。
目で合図をして、別れた。
ジャホンでは、二人は宿に泊まるが、僕はタケルの待つ城で泊まる。
城に着くと、タケルは喜んで抱き着いてくれた。
僕は無線を隠し持っているから、ピーターたちと僕の情報は共有できている。
タケルにジャホンの火薬の話を聞いてみた。
意外なことに、タケルはニコニコして答えた。
「ジャホンは火薬の調合が得意なんですよ! 森の獣を倒すのに、猟銃の弾として製造しているのもそうなんですが、芸術的なんです!ぜひ、今夜、アリス様にもお見せしたいです。」
「今夜?」
「ええ、この火薬は、夜、楽しむものなんですよ。それに丁度、打ち上げる時期ですから。」
日が沈み、あたりが真っ暗になってきた。
部屋の前の渡り廊下に出て、空を見上げると、轟音。
凄い音が聞こえたと思ったら、空の闇に現れたのは、色とりどりの花。
「アリスさま、これが火薬の芸術。『花火』です。」
魔除けと鎮魂の意味も込められているんですよ。
そろそろ人食いの大蛇が姿を現す時期なんです。大きな音で追い払わねば。
その名は、ヤマタノオロチ。
そういいます。
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