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熟年編

隠された王弟

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「オリエ、オリエぇ…。」

ヒューズは幼子のようにオリエに抱き着くと、オリエもぎゅっと抱きしめた。



「そなたは…?」

王妃が声をかけたとき、なかなか戻らないのを心配したシュヴァリエたちもやってきた。


「え?オリエ!?」


「シュヴァリエ様、お知合いですか?」


「ええ、幼馴染……なんですけれど。」




「……ここで話は少し。別室でお願いしたいのですが。」


オリエの提案で、一同はこっそりと別室へ移動した。




「彼は、ヒューズ。前陛下が退位したのち、お妃さまを失った後にもうけた御子です。」


「……なんと!父上め…。ケヴィンよりも年下ではないか…。」

別室へは陛下もいらしている。


「…とすると、彼は私たちにとっては年下の叔父にあたるわけですね。お父様の弟君なのですから。」

「でもなんで離宮で隠していたんだ?」


「……彼、幼すぎると思いませんか?年齢的には18歳なのに。まるで子ども…。」



なくなった前陛下は、妻を失った悲しみで侍女に手を出し、子を産ませた。
侍女がのち添えになることを望んでいたのだろうし、侍女が生きていれば、家族幸せだったかもしれない。

実際に、侍女を自分の妻のように着飾らせて、扱っていたようだ。


しかし、下級貴族の娘だった彼女は、前陛下を誘惑した女として後ろ指を刺され、重圧に耐えかねて、やがて気を病み、まだ1歳にも満たない我が子を残して彼女は死んだ。



前陛下は寂しさのあまり、狂った愛情を生まれた子に向けた。

表に出さず、人目に触れさせず、学校にも行かさず、社会から隔絶させて、いつまでも子どものように扱って溺愛した。


そうして、昨年、息を引き取った。



残されたのは、何もできない、子どものような、無垢なヒューズ。



「俺は、前陛下の専属の諜報兼護衛役でした。彼の存在は、王家にとって混乱の素になります。こんな状態では、もはや普通の生活もできません。なので、俺は、彼の保護者になったのです。」


みると、王妃様とリリーナ様は、だばぁあと涙を零していた。


「子どもに罪はないわ!知ったからには、離宮でふたりぼっちなんてよくないわよ!離宮で暮らしたいならそれで構わないけれど、このひげのおじさんは貴方のお兄様になの。だから、いつでも遊びに着て頂戴。」


「え!いいの~!うれしい!」




本当は引き取りたいけれど。今さらどうやって紹介すればいいのか…。

王妃は悩んでいた。





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