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お前はトロワ
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「………クッ!」
組織の指示で、一斉に各地で暴動が起きるはずだった。
なのに、今のところ何処も騒ぎになっていない。
しかも、退路の一つとして、自分が確保するはずだった港には、なんの因果か自分と同じような赤毛の男が立っている。
レッドは歯ぎしりして、男を睨んでいた。
「……抵抗しても無駄だ。私達は準備してきた。誰も漏らさぬよう。」
男のバリトンが響く。
何でもなければ、どこか懐かしささえ感じるような声。
だが、それが冷たく続く。
「国境付近は、辺境伯が抑えている。各領地も、その貴族が。君たちの潜伏先、行動は全て追っていた。城への潜入だけは、見落としていたが。騎士団や憲兵、衛兵だけじゃない。国内の貴族が一丸となって動いているのだ。」
「ばかな、俺たちを潰すのに、そこまでっ……。よく動かせたな。」
「簡単だ。」
男の冷たい目の中が揺らいだ。
「皆、拐われた我が子を助けたい。助けられなかった妻や子の仇を討ちたい。全員、組織に妻子を奪われた者たちなのだから。」
体が固まり、脳が理解を拒否する。
組織に?
拐われた?
子ども⁉
男が歩み寄る。
「私はこの国の宰相。サンダルフォン公爵。君はトロワ。私の末の息子。会いたかった。ずっと、ずっと、ずっと!!! 私たちは生きていると信じて、探してきたのだ!!!!!」
フワッと良い香りがして、レッドは抱きしめられた。
辺りには、憲兵たちが、組織の者が逃げてこないか目を光らせている。
時々聞こえる遠くの唸り声は、捕まるかやられているかもしれない。
だが、レッドは何も考えられず、動けなかった。
ただ、自分を抱きしめて、大人なのに泣いている男の体温を感じて、武器さえ落としていた。
組織の指示で、一斉に各地で暴動が起きるはずだった。
なのに、今のところ何処も騒ぎになっていない。
しかも、退路の一つとして、自分が確保するはずだった港には、なんの因果か自分と同じような赤毛の男が立っている。
レッドは歯ぎしりして、男を睨んでいた。
「……抵抗しても無駄だ。私達は準備してきた。誰も漏らさぬよう。」
男のバリトンが響く。
何でもなければ、どこか懐かしささえ感じるような声。
だが、それが冷たく続く。
「国境付近は、辺境伯が抑えている。各領地も、その貴族が。君たちの潜伏先、行動は全て追っていた。城への潜入だけは、見落としていたが。騎士団や憲兵、衛兵だけじゃない。国内の貴族が一丸となって動いているのだ。」
「ばかな、俺たちを潰すのに、そこまでっ……。よく動かせたな。」
「簡単だ。」
男の冷たい目の中が揺らいだ。
「皆、拐われた我が子を助けたい。助けられなかった妻や子の仇を討ちたい。全員、組織に妻子を奪われた者たちなのだから。」
体が固まり、脳が理解を拒否する。
組織に?
拐われた?
子ども⁉
男が歩み寄る。
「私はこの国の宰相。サンダルフォン公爵。君はトロワ。私の末の息子。会いたかった。ずっと、ずっと、ずっと!!! 私たちは生きていると信じて、探してきたのだ!!!!!」
フワッと良い香りがして、レッドは抱きしめられた。
辺りには、憲兵たちが、組織の者が逃げてこないか目を光らせている。
時々聞こえる遠くの唸り声は、捕まるかやられているかもしれない。
だが、レッドは何も考えられず、動けなかった。
ただ、自分を抱きしめて、大人なのに泣いている男の体温を感じて、武器さえ落としていた。
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