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シル編
狡い男
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すやすやと自分の隣で疲れて寝入ったアルを見下ろし、シルは侍従を呼んだ。
侍従の側にはシルの母親であるオアシス王妃がいる。
2人はずっと、傍にいて、一部始終を見ていた。
「あなたが噂が間違いだって証明するって、侍従をよこした時は何かと思ったけど…。おめでとう、といってよいのかしら。この子にはかわいそうなことをしたわ。」
「僕が信じたからというだけでは、噂は払しょくできないでしょうから。何かしら、彼がこういうことをしたことがないという証拠みたいなものが得られればと考えていました。…でも。」
「それだけではないわね。あなた、最後までしてしまって。」
「………狡いことをしました。僕はいつも、選ばれなかった。でも、今度こそは手に入れられるかもしれないと思ったんです。僕は彼を抱いて、彼に妃になることを承諾させた。狡い男ですね。」
「わかっているなら、この子を幸せにしなさい。」
オアシス王妃は、こと恋愛のことではダメになる息子にため息をついて、出て行った。
「若様、私と王妃様が証人です。アル様は、初めてだった。噂は根も葉もないこと。そして、シル様の5人目の妃となることについて、触れを出しましょう。アル様に勘違いで不埒なことをせんとする輩が近づかぬよう、きつく言っておきます。」
「ありがとう。あと、噂の出処を調べておいてくれ。スラムから新しく雇った者の中にいるらしい。それから、彼の警護役について、信頼できる者を選んでつけてほしい。」
「分かりました。私の甥が騎士の中におります。今、陛下の警護の一人になっておりますが、太鼓判を押しますよ。彼を充てましょう。彼は騎士団長の周知の妻ですから、いらぬ噂も憶測も出ないでしょうし、適任かと存じます。」
侍従は下がっていった。
「ごめんね。アル。」
赤銅色の髪を、撫でて、アルを抱き寄せて、シルは床についた。
侍従の側にはシルの母親であるオアシス王妃がいる。
2人はずっと、傍にいて、一部始終を見ていた。
「あなたが噂が間違いだって証明するって、侍従をよこした時は何かと思ったけど…。おめでとう、といってよいのかしら。この子にはかわいそうなことをしたわ。」
「僕が信じたからというだけでは、噂は払しょくできないでしょうから。何かしら、彼がこういうことをしたことがないという証拠みたいなものが得られればと考えていました。…でも。」
「それだけではないわね。あなた、最後までしてしまって。」
「………狡いことをしました。僕はいつも、選ばれなかった。でも、今度こそは手に入れられるかもしれないと思ったんです。僕は彼を抱いて、彼に妃になることを承諾させた。狡い男ですね。」
「わかっているなら、この子を幸せにしなさい。」
オアシス王妃は、こと恋愛のことではダメになる息子にため息をついて、出て行った。
「若様、私と王妃様が証人です。アル様は、初めてだった。噂は根も葉もないこと。そして、シル様の5人目の妃となることについて、触れを出しましょう。アル様に勘違いで不埒なことをせんとする輩が近づかぬよう、きつく言っておきます。」
「ありがとう。あと、噂の出処を調べておいてくれ。スラムから新しく雇った者の中にいるらしい。それから、彼の警護役について、信頼できる者を選んでつけてほしい。」
「分かりました。私の甥が騎士の中におります。今、陛下の警護の一人になっておりますが、太鼓判を押しますよ。彼を充てましょう。彼は騎士団長の周知の妻ですから、いらぬ噂も憶測も出ないでしょうし、適任かと存じます。」
侍従は下がっていった。
「ごめんね。アル。」
赤銅色の髪を、撫でて、アルを抱き寄せて、シルは床についた。
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