貧乏伯爵の三男(勇者?)は潜伏魔王に嫁ぐ

竜鳴躍

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ルシフル=サターン辺境伯とは

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私、ルシフル=サターン辺境伯の本名は、アンリ=ブロン=フリー。

かつて魔族との最終決戦地となり、最初に魔族の侵攻を許した地であり、他国から隔絶される小さな王国………フリー王国の第一王子………。

何故、我が国がそういう場所であったのか。
それは元々この地が魔王の治める地だったからだ。
この世から悪しき感情が消えることはない。
この世界に人間が多いだけ、憎悪や妬みといった感情は消えない。
そういった負の感情が魔物を生み、いつしか魔族、それを束ねる魔王という個体を産んだ。
拓けた地ならば取り返しがつかなくなる前にどこかの聖職者が気づいて浄化できたのだろうが、この地は外界から切り離されていたために、魔王が生まれるまで誰も気付かなかったのだ。

この場所には元々人間はいなかったが、魔物たちが食糧にするために各地から人間を集めていた。
その生き残りがこの国の国民であり、彼らの中で元々貴族家だった者たちが貴族になった。
勇者パーティーの一人だった二人の剣士は魔物に滅ぼされた小さな王国の兄弟王子だった。
戦いの末に魔王を弱体化することはできたものの、魔物を全て討ち取ることも出来ず、弟王子は自らの身に魔王を封じ、勇者パーティーはそれを見守るためその傍で暮らし始めた。
兄王子は仲間を見守りながら国を興し……、弟王子はその命耐える時まで魔王のイレモノとして家族を持たずに世界に尽くした。

以降、この国では王家は必ず複数の王子を生み、うち一人が代々魔王のイレモノとなった。
ゆえに、成人するまで王子は外にその身を明かさない。
イレモノとなった王子はそれまでの名前を捨て、「ルシフル=サターン辺境伯」となるから…。




いつしか、イレモノとなる王子は、魔王への生贄として、王子達を競わせて最も要らない王子が選ばれるようになった。


本当は、現・王太子であるドゥーブル=ブラン=フリー。
奴が、イレモノに選ばれるはずだった。


私の功績を掠め取り、事実を歪め、父の信頼を得て。

いない者として扱われたあの屈辱。

父親の失望。


そのおかげでジルコンと出会えたのだからよかったのだが、私はお前を許さない。

私がイレモノになるのはよい。

だが、そのメッキをはがし、私の名声を取り戻す。


お前は失望され、両親は後悔するだろう。

そのためにも、私は許されなかった結婚をし、社交界にだって現れてやる。
お前の婚約者の何倍も美しい妻を伴って。
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