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俺、雄嬢様………というか雄嫁様だけどな?
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「カリナ!美しいぞ!」
ベタベタとドゥーブルは婚約者の体をなぞった。
久しぶりの夜会。
父にはバレて、お叱りを受けてしまったが、国民にさほど被害は出なかったし、そもそもアンリは既に魔王のイレモノ……。
今更どうしようもない!
俺が王太子であることに変わりはないんだ…!!!
夜会の会場に陛下が現れる。
お母様とトロンはいない…。
まぁ、いいか…??
お母様が体調不良でトロンが付き添っているとかそういうのだろう。
夜会には俺と陛下さえいればいいものな。
陛下の機嫌はまだ悪いみたいだが……何も言わない…。よかった…。
「殿下、顔色が悪いですが大丈夫ですか?」
ビリーが声をかけてくる。
「大丈夫だ。」
いつものように俺の周りにはキシリトールとガンバリ。
ふふふ、キラキラしてるだろう!
どうだ、このロイヤルな集団は!!!
「ルシフル=サターン辺境伯、ジルコニア=サターン辺境伯夫人。並びにマーガレット=ブロン=フリー妃殿下、パール=ブリッジ伯爵、クンツァイト=ブリッジ伯爵令息、シトリン=ブリッジ伯爵令息!」
そう言われてみれば貴族名鑑に名前だけは載っていた気がする辺境伯と辺境の貧乏伯爵の名前が、子が出来ず形ばかりのものとしてここ十数年姿を見せなかったマーガレット妃と一緒に読み上げられ、入場する。
陛下自ら立ち上がり、マーガレット妃の許へ降りてエスコートをしようとするが、マーガレット妃はブリッジ伯爵の腕を掴んだ。
とぼとぼと王座の指定席へ戻る陛下を見ながら、ドゥーブルは目を見張った。
会場中が息をするのも忘れ、その麗人を見つめている。
フリルで胸元を飾った花の妖精のような可憐な姿。
ピンクブロンドの髪は艶やかで、翠の眼はきらきらと輝く。
歩くたびに光が舞い、陛下の前まできて、臣下の礼をとるアンリの隣でカーテシ―を優雅に行う。
(な、なんて美しい人だ……。彼女をみたらカリナなんてゴミクズだ!ゴリラだ!)
本当に一番美しい者はアンリの妻。
しかも、水害の時の話は本当らしい。
あの時活躍した面々が、アンリの側近として控えている。
まるで本物と偽物。
本物の格の違いを見せられたようで、ドゥーブルの手は震えた。
(くやしいくやしいくやしいくやしい!!!)
まるで眼中にないという様子で、目もくれずに横切って、陛下の前に立ったのも許せない。
(俺が王太子なのに!!!!!!)
「ルシフル=サターン辺境伯。……いや、アンリ=ブロン=フリー元第一王子よ。この度の災害では陣頭指揮をとり、そこの側近らとともに被害を最小限にしたこと礼を言う。聖者、パール=ブリッジ伯爵。賢者、クンツァイト=ブリッジ伯爵令息。拳聖、シトリン=ブリッジ伯爵令息。そして、勇者…ジルコニア=サターン辺境伯夫人。ここに勲章と褒章を与える。」
「ありがたき幸せ。」
会場がどよめく。
ブロン??マーガレット妃と同じミドルネーム…。マーガレット妃にも王子殿下がいたのか…。
しかし、どういうことだ?と聞こえてくる。
「アンリは優秀で、治水工事も彼の指揮で行われた。しかし、計画半ばで病に倒れたために引継ぎがうまくいっていなかったようだ…。そのためにあわや被害が拡大するところであった。国王としてお詫びする。」
「現在、私の領地では同じようにダムを造り、治水工事を行っていますが、あわせて山間には地滑り防止の加工を施しています。また、治水は水をためるだけでなく、水資源のコントロールをする役割がある。なので、放流も計画的に行わなければなりません。私の領地の他では、この放流のための設備が欠けているおそれがある。氾濫したダムは応急処置をしましたので、あとはトロン殿下がやってくれるでしょう。」
あれは王太子の策ではなかったのか…。
王太子って優秀ではなかったのか??
皆の目が冷たく、自分にそのように言っているような気がして………。
あの娘………。ほしい…。
「はぁ……。ドレスって歩きにくっ。」
「お嬢様、ダンスの時間ですが?」
ワルツが流れる。
「ダンス?別に踊らなくても…」
「王太子殿下はそんな気分じゃなさそうで、陛下がファーストダンスを私たちにと。私たち夫婦が踊らないと、皆が踊れないですよ?」
「うっわ。確信犯。根回ししたんだろ、どーせ!」
「ジルは私と踊るのは嫌?ジルが踊ってくれないと、さっきから女の子たちが私と踊りたそうにこっちを見ているんだけど…。私はジルだけがいいなぁ。」
「しょ、しょうがねえな!」
お嬢様って言うか雄嬢……雄嫁様だけどな!俺!!
ベタベタとドゥーブルは婚約者の体をなぞった。
久しぶりの夜会。
父にはバレて、お叱りを受けてしまったが、国民にさほど被害は出なかったし、そもそもアンリは既に魔王のイレモノ……。
今更どうしようもない!
俺が王太子であることに変わりはないんだ…!!!
夜会の会場に陛下が現れる。
お母様とトロンはいない…。
まぁ、いいか…??
お母様が体調不良でトロンが付き添っているとかそういうのだろう。
夜会には俺と陛下さえいればいいものな。
陛下の機嫌はまだ悪いみたいだが……何も言わない…。よかった…。
「殿下、顔色が悪いですが大丈夫ですか?」
ビリーが声をかけてくる。
「大丈夫だ。」
いつものように俺の周りにはキシリトールとガンバリ。
ふふふ、キラキラしてるだろう!
どうだ、このロイヤルな集団は!!!
「ルシフル=サターン辺境伯、ジルコニア=サターン辺境伯夫人。並びにマーガレット=ブロン=フリー妃殿下、パール=ブリッジ伯爵、クンツァイト=ブリッジ伯爵令息、シトリン=ブリッジ伯爵令息!」
そう言われてみれば貴族名鑑に名前だけは載っていた気がする辺境伯と辺境の貧乏伯爵の名前が、子が出来ず形ばかりのものとしてここ十数年姿を見せなかったマーガレット妃と一緒に読み上げられ、入場する。
陛下自ら立ち上がり、マーガレット妃の許へ降りてエスコートをしようとするが、マーガレット妃はブリッジ伯爵の腕を掴んだ。
とぼとぼと王座の指定席へ戻る陛下を見ながら、ドゥーブルは目を見張った。
会場中が息をするのも忘れ、その麗人を見つめている。
フリルで胸元を飾った花の妖精のような可憐な姿。
ピンクブロンドの髪は艶やかで、翠の眼はきらきらと輝く。
歩くたびに光が舞い、陛下の前まできて、臣下の礼をとるアンリの隣でカーテシ―を優雅に行う。
(な、なんて美しい人だ……。彼女をみたらカリナなんてゴミクズだ!ゴリラだ!)
本当に一番美しい者はアンリの妻。
しかも、水害の時の話は本当らしい。
あの時活躍した面々が、アンリの側近として控えている。
まるで本物と偽物。
本物の格の違いを見せられたようで、ドゥーブルの手は震えた。
(くやしいくやしいくやしいくやしい!!!)
まるで眼中にないという様子で、目もくれずに横切って、陛下の前に立ったのも許せない。
(俺が王太子なのに!!!!!!)
「ルシフル=サターン辺境伯。……いや、アンリ=ブロン=フリー元第一王子よ。この度の災害では陣頭指揮をとり、そこの側近らとともに被害を最小限にしたこと礼を言う。聖者、パール=ブリッジ伯爵。賢者、クンツァイト=ブリッジ伯爵令息。拳聖、シトリン=ブリッジ伯爵令息。そして、勇者…ジルコニア=サターン辺境伯夫人。ここに勲章と褒章を与える。」
「ありがたき幸せ。」
会場がどよめく。
ブロン??マーガレット妃と同じミドルネーム…。マーガレット妃にも王子殿下がいたのか…。
しかし、どういうことだ?と聞こえてくる。
「アンリは優秀で、治水工事も彼の指揮で行われた。しかし、計画半ばで病に倒れたために引継ぎがうまくいっていなかったようだ…。そのためにあわや被害が拡大するところであった。国王としてお詫びする。」
「現在、私の領地では同じようにダムを造り、治水工事を行っていますが、あわせて山間には地滑り防止の加工を施しています。また、治水は水をためるだけでなく、水資源のコントロールをする役割がある。なので、放流も計画的に行わなければなりません。私の領地の他では、この放流のための設備が欠けているおそれがある。氾濫したダムは応急処置をしましたので、あとはトロン殿下がやってくれるでしょう。」
あれは王太子の策ではなかったのか…。
王太子って優秀ではなかったのか??
皆の目が冷たく、自分にそのように言っているような気がして………。
あの娘………。ほしい…。
「はぁ……。ドレスって歩きにくっ。」
「お嬢様、ダンスの時間ですが?」
ワルツが流れる。
「ダンス?別に踊らなくても…」
「王太子殿下はそんな気分じゃなさそうで、陛下がファーストダンスを私たちにと。私たち夫婦が踊らないと、皆が踊れないですよ?」
「うっわ。確信犯。根回ししたんだろ、どーせ!」
「ジルは私と踊るのは嫌?ジルが踊ってくれないと、さっきから女の子たちが私と踊りたそうにこっちを見ているんだけど…。私はジルだけがいいなぁ。」
「しょ、しょうがねえな!」
お嬢様って言うか雄嬢……雄嫁様だけどな!俺!!
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