最愛を亡くした男は今度こそその手を離さない

前世の記憶がよみがえる

俺の名前は加賀美竜。


俺が生まれる前にちょっと魔王が復活しちゃって、人間界と魔界の境界線がぐちゃぐちゃになった。

魔王を封印したのは、聖女である俺の母さん。


今では、魔族も人間も仲良しで、異世界婚をしている人も多い。




俺は、俺が生まれる前は母さんの兄だった。




俺が名前を貰った、リュウ＝シータ＝ユプシロン。




きっと、最後に見たアルが心残りだったんだな。


アルファ=キル＝フレイム。


魔界の南の辺境伯令息。


俺の親友。



そして、俺の我儘のために、右目と右腕を無くした人。


意識が完全になくなる直前、俺の頬に堕ちたアルの血液。

弓師なのに目と腕をなくして。



５歳の頃、その時の記憶が突然蘇った。




俺も、アルと『親友』という立ち位置が心地よくて、アルの気持ちに気づいていたのに蓋をしていたんだ。





今度こそは、逃げない。



幸い、この体は人間の血が入っていて、魔族よりは成長が早い。






まってて、アル。