聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!

竜鳴躍

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悪い予感

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「はぁ……っふ。」


修道院の朝は早い。


まだ薄暗く、鶏も鳴く前に中年の新人修道士は朝の支度を始める。


冷たい水で掃除をし、家畜に餌をやり、そして祈りを捧げた。




本当は、いや、本当に愛していたのに。
失ってしまった幸せは、元には戻らない。

ただのケンは、亡き妻のために祈りを捧げた。



事故ではなく、自分が妻にしていた女性と御者として入り込んでいた男に殺された妻。

妻亡き後、侯爵家を維持するために彼女が行っていた分の仕事も引き継いだが、なかなか上手くいかないことも多かった。

マリー=ホワイトという人間を信頼しての取引も多かったから。


その頃は、自分は愛されていなかったと思い込み、死んだマリーを憎んでいたから、余計に憎々しかった。


今思えば、マリーは自分の体質に引け目を感じていたんだ。

だから、女遊びをしても何も言わなかったし、仕事にのめりこんだ。



全く自分はなんて愚か者なんだろう。

マリーはちゃんと、必要なことは伝えてくれていたのに。

あんなに愛して、自分から求婚して、手に入れた妻だったのに。



寝ても覚めても、婚約者時代や新婚当時、こじれる前のマリーとの日々が頭をよぎり、マリーの笑顔が離れない。


リリーとマリーの笑顔は違う。

華やかな薔薇のような笑顔。

自分に似ていない、自分の子ではないと思い込んでいたリリーは、よく考えれば自分に笑顔が似ていた。

耳の形や、爪の形、自分に似ているところもあったのに。




祈りを捧げていると、フッとろうそくが揺れ、あたりが瞬間的に暗くなった。



ふと窓の外を見れば、何か黒いものが、オランジュリー帝国の方角へ向かって蠢いている。




―――――――――悪い予感がする。





ケンは、急ぎ院長の下へ走った。

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