真面目な近衛騎士は借金返済のために雄っぱぶ嬢になりました。

竜鳴躍

文字の大きさ
62 / 89
番外編

イチゴちゃんと私3(オリバーの回想)

しおりを挟む
「おじいさま!おばあさま!お父さま!お母さま!」

34年前の冬の日をボクは忘れない。あの時、ぼくはまだたった3歳だった。

帝国を二分した、魅了の王女・スパイシーを支持する王女派と武力の王子・ガラム=マサラを支持する王子派の抗争は、中立の立場を貫き、静観していた僕たちをも巻き込んだ。

どちらの陣営も僕らを引き込もうとして、引き込めないのであれば……と。そして屋敷に火をつけた。

火の熱さと、小さな僕をがれきの隙間からやっと逃がして、灰になって消えてしまった家族を忘れない。



ボクの家は、オリエント帝国の公爵家だった。

元々は、帝国に吸収された小国・ウインド王国の王族だったらしい。


ボクのおじい様おばあ様の代で吸収されたから、ボクは寝物語でしか聞いていないけれど、自然豊かな山岳地帯で、大きな風車が特徴的なお花でいっぱいの国だったんだって。
僕たちは大した戦力もなくて、妖精の血が混ざっている僕らの一族以外はたいして身を守る術などなくて、あっという間に侵略されてしまった。

だけど、なるべく元国民が良い条件で生活できるよう、自治権を求めて自ら差し出したから、僕らは公爵位をもらえたし、民の生活も悪くはなっていない。

綺麗な花の代わりに野菜が育てられて、鉱石は掘り尽くされ、すっかり景色は変わってしまったけど。

人によっては実際に、のんびりとしたウインド王国時代より、近代的なものに囲まれた今の方が幸せだという民もいる。

だから、思うところはあっても大人しく暮らしていた。
重税を課されても、みんなで助け合って乗り切った。
どうしようもない時は、背中の妖精の羽から粉をおとして、進呈して許してもらっていた。

僕の羽は火事の時に燃えてなくなってしまったけど、妖精の粉は万病に効いたらしいよ。




魅了の王女自体は、全く王位簒奪の意思はなかったらしく、戦況は王子の勝利で終わった。
王女は、王子に嫌われてることに気付かないまま、ティーポット王国に嫁に行った。

そして、生き残った貴族たち。

ガラム=マサラは、陛下に即位すると、自分の陣営の貴族を重用した。
王女陣営の貴族は、処刑され、または奴隷に身をやつした。

僕は、ただ、がれきで蹲っていた。
その一帯を面倒見ている修道士が、他の孤児と同じように僕を助けてくれた。


けれど、ガラム=マサラの長男であるターメリック。

ボクと同い年で、お茶会でよくみかけた彼はボクが嫌いだったらしい。
僕たちの一族が王女派だったとか言いがかりをつけて、僕を奴隷商人に売り飛ばした。

僕は綺麗な顔をしていたけど、愛玩用ではなく、戦闘奴隷にするようにというのが、ターメリックの注文だった。



僕は必死に生きて来たよ。
あちこちをこの身一つで戦って、生きて来た。

ジェームズ=スプーンに買われて、戦場から解放された。



ねえ、ドライ。

僕も君も、魔女に人生を滅茶苦茶にされたね。



体は大きくておじさんだけど、僕に弱音を吐く君はとっても可愛かった。
僕にしか、弱音を言えなかったんだよね。

幼子のような君が愛しい。


ずっとずっと、君を大切にするね。


ボクが君に愛をあげる。
君の愛はボクだけのものだよ。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる

すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。 第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」 一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。 2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。 第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」 獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。 第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」 幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。 だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。 獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

おれの超ブラコンでちょっと変態な兄がかっこよすぎるので

しち
BL
兄(バスケ選手)の顔が大好きな弟(ファッションモデル)の話。 これの弟ver.です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/557561084/460952903

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい
BL
 若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。  昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。  年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。  リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。  

処理中です...