1 / 144
プロローグ
「榎木さん、お疲れ様です!」
「おつかれさま~!」
「キャー、和哉さんお疲れ様ぁ。今日もえりりんのこと可愛くしてくれてありがとうございましたぁ~!」
テレビ局のスタジオで、仕事仲間やタレントとすれ違う。
俺は局から委託を受けて派遣されている衣装係だ。
局では別の会社から派遣されているメイク係がいるからやらないけれど、メイクアップアーティストでもある。
本日の業務を終えると、もう時計の針は深夜で、電車なんかない。
スタジオ近くの物件は割高だったけど、気ままな独り身はワンルームのアパートで構わない……、そう思って近くに家があって正解だ。
「ふぅ……。夕飯どうしようかなあ。もう遅いしなあ…。コンビニで適当につまむものを買っちゃおうか…。コラボ商品出てたし…。」
もうすぐ30になろうっていう人間が不摂生かなぁ。でもなあ。分かってるんだけどついついコンビニ飯になっちゃうんだよなあ。
俺は綺麗なものが好き。
可愛いものが好き。
子どもの頃から、外を駆けまわるよりも家の中でキラキラするお姫様の物語を読んだり、虫取りよりもお花を摘んで花冠を作ったり押し花やハーバリウムを作る方が好き。
ビーズでアクセサリーを作るのも大好き。
編み物や、縫物だって。
俺はどちらかというと小柄で顔も中性的で、子どもの頃からあまり雰囲気が変わらなくて。
髭面の自分に違和感があって、毎日綺麗に手入れしていたせいもあるかもしれないけど。
だからかな。
男の友人もいたけど、女の子の友人も多かった。
同性愛者?って聞かれたこともあるけどよくわからない。
恋愛感情もよくわからない。
素敵な人は男でも女でも素敵だなって思うし…。
本当はヒラヒラ可愛い衣装を着て、メイクだってしてみたかったけど…、親の目とか勇気が出なくて。
専門学校いって、スタイリスト兼メイクアップアーティストになって、親がホッとしたのを感じた。
俺がゲイなんじゃないかって思ってたんだよね?
女装をしてニューハーフになるんじゃないかって。
いつか男の恋人を連れてくるんじゃないかって。
随分女々しい趣味嗜好だと兄ちゃん姉ちゃんにも言われてきたけど、日本って不思議なもんで、『職業』になった途端バカにされないところがある…。
俺の性嗜好や性が本当のところどうだったのか、それは俺にも分からない。
だって、友達がいて、仕事があって、生活に困らなくて、毎日充実してて、それで俺は充分幸せだった。
だから、どうでもよかったんだ。
それに、自分をどこかの定義に当てはめる必要なんてないんじゃないかって。
自分は自分だから。
「和哉………。」
自分を呼ぶ声にハッとなり、振り返る。
物陰から現れたのは、ひょろっとした高身長の男。
自分が知るより細長く感じるのは、痩せてやつれたからだろうか。
「……い 石井さん……。どうしたんですか?」
女性にモテそうな知的で端正な顔が台無しだ。
眼鏡の下の隈は酷く、目が濁っているような感じで表情がおかしい。
うん、おかしい。
この人はおかしい人だ。
この人は派遣元の社員で元同僚…。
だから俺は逃げたのだ…。上司にお願いして、テレビ局に出向できるように。
この人は都外に異動していたはずなのに。
「和哉くん…酷いよ。僕に黙ってテレビ局に出向するなんて…、あっ、そうか。和哉くんは照れ屋さんだから恥ずかしくなったんだよね。」
き…きもぉ…っ。
「僕にはすぅぐわかったよー♪このドラマの衣装さんは和哉くんだって…。だって和哉君のセンスは輝いてるからね…っ。さ、やっとマンションを買えたんだ。今日から一緒に暮らそう。愛しのハニー…♡」
ハニーってなんだよ!
付き合ってないし!
「い、石井さんっ、やめてくださいっ!」
振り切って走り出す。
そして俺は―――――――
キキィイイイイ!!!!! ガシャン!!
29年の生涯を終えた。
あー、ふわふわ。
あたたかい。
ねむたい。
微睡む目を開けると、視界は不鮮明で。
ん、なんだか体も動かしづらい…。
事故で脊髄でも損傷したのだろうか。
あー…もう仕事できないのかなぁ。
腕は動きそうだ。
ゆっくり持ち上げて、目の前に………。
「ふへ?」
目の前に現れた俺の腕は、どうみても『赤ちゃん』の腕だった。
ももももももももももももしかしてこれは異世界転生とかいうやつでは!?
やったぁ!無双系かなあ?だけど、物騒なのは嫌だなあ。
お股の感覚は前世と変わらないから、多分男の子だと思うんだけど、この世界は男の子が縫物したり刺繍したりすることに寛容なのかな?
お部屋の中はまだよく見えないけど、いい匂いがするし、天井高そうだし、なにより俺が寝かされている布団もふわふわだし、きっと貴族かそうじゃなくても相当の金持ちだと思う!
うへへ…。
この世界の洋服ってどんなかなぁ。
素敵なレースとかあるのかなぁ。
ぽろぽろっ。
(ん?)
い、いま。俺のほっぺから何か落ちた…????
おそるおそる腕を動かして掴むと、それはピンクの薔薇…………
こっ こわ……。
「ふ、ふぇ…。」
恐ろしさに涙がこぼれる。
だが、その涙は、頬を伝う間にダイヤモンドに変わった。
えええええ!!なんなの、これ!
確かに好きでよく読んでた童話とかは、美少女を表す表現として、笑うと頬に花が咲き、瞳からは宝石が……ってよくあったけど!あったけどさぁああ!!
それって比喩表現じゃなかったの!?まじで?リアルに俺のカラダ、花とか石とか生むの!?
俺、化け物じゃん!!!
「おつかれさま~!」
「キャー、和哉さんお疲れ様ぁ。今日もえりりんのこと可愛くしてくれてありがとうございましたぁ~!」
テレビ局のスタジオで、仕事仲間やタレントとすれ違う。
俺は局から委託を受けて派遣されている衣装係だ。
局では別の会社から派遣されているメイク係がいるからやらないけれど、メイクアップアーティストでもある。
本日の業務を終えると、もう時計の針は深夜で、電車なんかない。
スタジオ近くの物件は割高だったけど、気ままな独り身はワンルームのアパートで構わない……、そう思って近くに家があって正解だ。
「ふぅ……。夕飯どうしようかなあ。もう遅いしなあ…。コンビニで適当につまむものを買っちゃおうか…。コラボ商品出てたし…。」
もうすぐ30になろうっていう人間が不摂生かなぁ。でもなあ。分かってるんだけどついついコンビニ飯になっちゃうんだよなあ。
俺は綺麗なものが好き。
可愛いものが好き。
子どもの頃から、外を駆けまわるよりも家の中でキラキラするお姫様の物語を読んだり、虫取りよりもお花を摘んで花冠を作ったり押し花やハーバリウムを作る方が好き。
ビーズでアクセサリーを作るのも大好き。
編み物や、縫物だって。
俺はどちらかというと小柄で顔も中性的で、子どもの頃からあまり雰囲気が変わらなくて。
髭面の自分に違和感があって、毎日綺麗に手入れしていたせいもあるかもしれないけど。
だからかな。
男の友人もいたけど、女の子の友人も多かった。
同性愛者?って聞かれたこともあるけどよくわからない。
恋愛感情もよくわからない。
素敵な人は男でも女でも素敵だなって思うし…。
本当はヒラヒラ可愛い衣装を着て、メイクだってしてみたかったけど…、親の目とか勇気が出なくて。
専門学校いって、スタイリスト兼メイクアップアーティストになって、親がホッとしたのを感じた。
俺がゲイなんじゃないかって思ってたんだよね?
女装をしてニューハーフになるんじゃないかって。
いつか男の恋人を連れてくるんじゃないかって。
随分女々しい趣味嗜好だと兄ちゃん姉ちゃんにも言われてきたけど、日本って不思議なもんで、『職業』になった途端バカにされないところがある…。
俺の性嗜好や性が本当のところどうだったのか、それは俺にも分からない。
だって、友達がいて、仕事があって、生活に困らなくて、毎日充実してて、それで俺は充分幸せだった。
だから、どうでもよかったんだ。
それに、自分をどこかの定義に当てはめる必要なんてないんじゃないかって。
自分は自分だから。
「和哉………。」
自分を呼ぶ声にハッとなり、振り返る。
物陰から現れたのは、ひょろっとした高身長の男。
自分が知るより細長く感じるのは、痩せてやつれたからだろうか。
「……い 石井さん……。どうしたんですか?」
女性にモテそうな知的で端正な顔が台無しだ。
眼鏡の下の隈は酷く、目が濁っているような感じで表情がおかしい。
うん、おかしい。
この人はおかしい人だ。
この人は派遣元の社員で元同僚…。
だから俺は逃げたのだ…。上司にお願いして、テレビ局に出向できるように。
この人は都外に異動していたはずなのに。
「和哉くん…酷いよ。僕に黙ってテレビ局に出向するなんて…、あっ、そうか。和哉くんは照れ屋さんだから恥ずかしくなったんだよね。」
き…きもぉ…っ。
「僕にはすぅぐわかったよー♪このドラマの衣装さんは和哉くんだって…。だって和哉君のセンスは輝いてるからね…っ。さ、やっとマンションを買えたんだ。今日から一緒に暮らそう。愛しのハニー…♡」
ハニーってなんだよ!
付き合ってないし!
「い、石井さんっ、やめてくださいっ!」
振り切って走り出す。
そして俺は―――――――
キキィイイイイ!!!!! ガシャン!!
29年の生涯を終えた。
あー、ふわふわ。
あたたかい。
ねむたい。
微睡む目を開けると、視界は不鮮明で。
ん、なんだか体も動かしづらい…。
事故で脊髄でも損傷したのだろうか。
あー…もう仕事できないのかなぁ。
腕は動きそうだ。
ゆっくり持ち上げて、目の前に………。
「ふへ?」
目の前に現れた俺の腕は、どうみても『赤ちゃん』の腕だった。
ももももももももももももしかしてこれは異世界転生とかいうやつでは!?
やったぁ!無双系かなあ?だけど、物騒なのは嫌だなあ。
お股の感覚は前世と変わらないから、多分男の子だと思うんだけど、この世界は男の子が縫物したり刺繍したりすることに寛容なのかな?
お部屋の中はまだよく見えないけど、いい匂いがするし、天井高そうだし、なにより俺が寝かされている布団もふわふわだし、きっと貴族かそうじゃなくても相当の金持ちだと思う!
うへへ…。
この世界の洋服ってどんなかなぁ。
素敵なレースとかあるのかなぁ。
ぽろぽろっ。
(ん?)
い、いま。俺のほっぺから何か落ちた…????
おそるおそる腕を動かして掴むと、それはピンクの薔薇…………
こっ こわ……。
「ふ、ふぇ…。」
恐ろしさに涙がこぼれる。
だが、その涙は、頬を伝う間にダイヤモンドに変わった。
えええええ!!なんなの、これ!
確かに好きでよく読んでた童話とかは、美少女を表す表現として、笑うと頬に花が咲き、瞳からは宝石が……ってよくあったけど!あったけどさぁああ!!
それって比喩表現じゃなかったの!?まじで?リアルに俺のカラダ、花とか石とか生むの!?
俺、化け物じゃん!!!
あなたにおすすめの小説
ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!
迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!
【完結】自称ヒロイン役を完遂した王家の影ですが、断罪パーティーをクリアした後に王太子がぐいぐい来ます。
竜鳴躍
BL
優秀過ぎる王太子×王家の影(失業)。
白い肌に黒髪黒瞳。小柄な体格で――そして両性具有。不出来な体ゆえ実の親に捨てられ、現在はその容姿を含め能力を買われて王家の影をしていたスノウ=ホワイト。男爵令嬢として王太子にハニトラを仕掛け、婚約者を悪役令嬢に仕向けて王太子への最終試験をしていたのだが、王太子は見事その試練を乗り越えた。これでお役御免。学園を退学して通常勤務に戻ろう――――――。
そう思っていたのに、婚約者と婚約解消した王太子がぐいぐい来ます!
王太子が身バレさせたせいで王家の影としてやっていけなくなり、『男子生徒』として学園に通うスノウとそんなスノウを妃にしたくてつきまとう王太子ジョエルの物語。
☆本編終了後にいちゃいちゃと別カップル話続きます。
☆エンディングはお兄ちゃんのおまけ+2ルートです。
断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました
ちとせ
BL
美形王子×容姿端麗悪役令息
——これ、転生したやつだ。
5歳の誕生日、ノエル・ルーズヴェルトは前世の記憶を取り戻した。
姉が夢中になっていたBLゲームの悪役令息に転生したノエルは、最終的に死罪かそれ同等の悲惨な結末を迎える運命だった。
そんなの、絶対に回避したい。
主人公や攻略対象に近づかず、目立たずに生きていこう。
そう思っていたのに…
なぜか勝手に広まる悪評に、むしろ断罪ルートに近づいている気がする。
しかも、関わるまいと決めていた第2王子・レオンには最初は嫌われていたはずなのに、途中からなぜかグイグイ迫られてる。
「お前を口説いている」
「俺が嫉妬しないとでも思った?」
なんで、すべてにおいて完璧な王子が僕にそんなことを言ってるの…?
断罪回避のはずが、いつの間にか王子に捕まり、最後には溺愛されるお話です。
※しばらく性描写はないですが、する時にはガッツリです
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。