笑うとリアルで花が咲き泣くと涙が宝石になる化け物の俺は、おひとり様を満喫しようと思っていたのに何故か溺愛されています。

竜鳴躍

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弟子にしてください

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俺は気配を消すのがうまいらしい。

お母様もオリーブも、俺に気付くことはない。


そっと片隅に腰掛けた。




親の目を盗み、俺はよくこうした場に潜り込んだ。

やっぱり華やかな布地や色とりどりのアクセサリーは気分が上がる。

スケッチブックにデザイン画を描いて、ビューテ侯爵令息とカカに見せた。

今では、販売しているドレスのいくつかは俺のデザイン。


「伯爵夫人。」

「なにかしら。」

「あの子はどちらの御子さんでしょうか?確か、この家には大きいお坊ちゃまとそちらのお嬢様だけだったと思うのですが…。社交界でも見ませんし、話も聞きませんし…。」


お母様とオリーブが俺に気付いて目を丸くした。

うわぁ、二人してすっげぇ凶悪な顔してるわ…。


「ほほほ。使用人の子ですの!親がいないのでおいてあげているのです!お前、さっさと部屋に戻りなさいっ!」

「そうですわ、こんな愛想のないぶっさいくで役立たずな能無し、私の弟のはずないじゃない!」


残念、俺とお前の顔は瓜二つなんだわ。
俺が適当な服しか着せてもらってないくらいしか違いがない。
本当は使用人が着るような古着なんだけど、あら不思議。俺にかかればみられるレベルにはなるんだわ。


「うわぁ、使用人の子なんですねっ!じゃあ、この子、私がもらってもいいですか?!」

「えっ?」


「丁度カカだけじゃ足りないって思っていて。あと一人雑用を覚えてもらう弟子がほしかったんですよ。このくらいの年頃の方が、仕込みやすいですからね。どうでしょう、今回のドレス代はタダにして差し上げますよ?それに、この子を譲ってもらうんですから…。契約書を結んで、お金もお支払いしますよ!」


「え??あ、やだ結構…。いいわ。今日からそれの所有はそちらにお渡ししますわ!」


「交渉成立ということで…。じゃあさっそく今日連れ帰りますね!」

「えっ?」

「何か不都合でも?」

「い、いえ。不都合なんてありませんわ!不愛想で何を考えているか分からない子ですけど、読み書きはできるようですから役には立つでしょう。リリアン、しっかりとお仕えするのですよ!」

「はい。よろしくお願いします。ビューテ侯爵令息様。」


やったー。俺は自由だぁああ!ありがとう!

グレイシャス様は、奴らが印鑑をとりに出た瞬間、魅力的なウインクをした。

俺の兄貴分になるカカも、ぐっと親指を立てる。


「本当にお前の言うとおりになったな。」

「お母様たちは分かりやすいですから。」

「でも、本当はお前はこのうちの次男だろうに。こんなにあっさり手続きとれるってことは…。まあ、社交界に出ていない、皆に知られていない時点で察しはついていたが…。」

俺はたぶん、この家の子として出生届さえ国に出ていないんですよ。

流石に口に出すのもはばかられて、俺は苦笑いしかできない。


「ま、ようこそ。『ビューテ』へ。」


「はい。」









「お父様…。」

ソファに残された長男は、向かいに佇む父親を見やる。

「リリアンですが……。」

「その名を口にするな。あいつと関わるな。あいつに近寄るな。お前はアルファだ、汚らわしいオメガに毒されるかもしれん。お前の兄妹はベータのオリーブだけだ。全く死にぞこないが…。男のオメガなんて恥だ。そのまま死んでいればよかったものを。」

「…………。はい。」

リリアンが読んでいた本は、経営学の難しい指南書だった。
お父様は、本当にリリアンに関心がないんだね。
気付いていないでしょう?
まだ6歳になったばかりだというのに、あの幼い弟は、虐げられながらも才覚を発揮して、アルファの僕などよりよほど優秀だ。
もう、この家の本は全部読んでしまっただろう。
僕が理解できない高難易度の本でさえも知識に入れて、きちんと教育を受けさせれば名を残す人間になれるだろうに。
この家は古い価値観に凝り固まって、自ら益を逃している気がする。
乳母のケイトにしか懐かないリリアン。
乳母から専属の使用人になったあの平民あがりの男爵夫人だけが、リリアンの側にいる。
…本当にオメガは汚らわしいのだろうか。
この家の汚点なのだろうか。
よく見れば、この家の誰よりも整った美しい顔をしている弟。
きちんと育てれば、男でも王妃を狙えるかもしれないのに。

この家は、誰もリリアンのすばらしさを気づいていない…。

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