俺がお前を王にしてやる―隠れオメガクイーンは勇者様―

竜鳴躍

文字の大きさ
21 / 78

恋におち愛が芽生えたとき

しおりを挟む
母さんと2人、いつかこの家を出ていこうと思ってた。
出ていけたら何とかなるって。

だって、母さんは隣国シュヴァイツァー王国の貴族だったし、何より俺たちには才能があったから。

だけど、シュヴァイツァー王国とタリスマン王国との間で戦争が始まってしまって、俺たちは隣国にいる叔父さんたちを頼れなくなってしまった。



何でも第二王子のイスリス殿下がシュヴァイツァー王国の境界線を開拓して、そこをねぐらにしているモンスターが怒り、隣国に多大な被害を出してしまったらしい。


俺は細々と冒険者稼業で小銭を稼いでいたけれど、少し腕が立つといってもソロではたいして貯められず、ただでさえ情勢が不安定な中、成人後に自力で母さんと2人生きていくのは、リスクが高いと感じられた。



だから俺は………。

態と変装を解き、抑制剤を断って婚約者の前に出たのだ。



婚約者のスパイス=ビリヤニは、俺の『運命の番』で、優し気な青年だった。

だから…………。



「君は何もしなくていいんだよ。」

「ずっと僕の側にいておくれ。」

「君を誰にも見せたくないよ。」


最初はこそばゆいくらいに愛されていると思った言葉が、段々恐怖になっていく。

俺はただ愛されて、抱かれて、子どもを産めばいいの?

スパイスの隣でほほ笑んでいるだけでいいの?

余計なことはしちゃだめって、何が余計なの?

出入りの業者や使用人と話をしているだけで、髪を掴まれ部屋に閉じ込められて折檻された。

スパイスは俺とお母様を引き離し、お母様をシュヴァイツァー王国に引き渡した。
それで、王国とのパイプを得て、もしこの国がだめになったら向こうに移住しようという。

お母様は俺がこんなふうに扱われていることを知らない。


ある時、黒髪の男の人が家の庭で倒れているのを見つけた。




「…………うっ、」


「だ、だいじょうぶ、ですか……。」

男の人は深手を負っている。
このままでは死んでしまう。

思わず、納屋に連れ込んだ。


「俺……回復魔法は苦手だけど……傷を塞ぐくらいなら…。」

よく見ると、菫色の瞳の素敵な人。

着ている服は汚れているけど、上物だ。


この人は一体……。



「戻らないといけないけど、ここに水と果物を置いておきます。起きたら食べてくださいね。そして見つかる前に出て行ってください。うちの夫は嫉妬深いので………。」


言い残すと、頷くように少し手が動いた。




翌朝、彼は納屋からいなくなっていた。





でも、時々、こっそりとスパイスが仕事に出た後に来るようになった。


「今は連れていけない。でもきっと、迎えに来る。君を助けに来るから。」



俺たちは夢を語り、愛を語るようになっていた。






でも、彼は迎えに来なかった。

迎えに来ることが出来なかった。




ああ、アーサー。アーサー!アーサー!!!!!!愛してる!!








「もう君は逃げられない。逃げる足がない。離さないよ、ローゼ。僕の妻。」


違う。


ここは幻。



「お前は俺の運命じゃない。俺の運命は俺が決める。」





「そうだよ、ローゼ!」

決意した瞬間、愛するアーサーの声が聞こえた。




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~

なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。 傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。 家のため、領民のため、そして―― 少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。 だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。 「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」 その冷たい声が、彼の世界を壊した。 すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。 そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。 人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。 アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。 失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。 今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

処理中です...