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今までの行いがすべてに
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目の前が白くなり、気が付くと血だらけだった。
何度も何度も正しい歴史とやらは、イスリスやイスリスを傀儡の王として擁立する者たちによって大切なものを滅茶苦茶にする。
母を喪い。
父を喪い。
国を喪い。
愛する者を救えず、一生が終わる。
これまでの人生が夢で、本当はここが現実だったのではないかという気持ちになる。
だけど、僕は諦めない。
同じようにローゼも囚われているだろう。
(母上。僕に力を貸してください。)
願うと、空間が歪み、そこにローゼが見えた。
なんで僕たちが惹かれたのか、理解できた。
何回繰り返して、人の妻だと分かっていても、僕は彼を好きになってしまった。
結ばれなくてもいい、彼を助けてあげたかった。
お互いに、愛していた。
その関係が、夫婦や恋人でなくても。
キスどころか手をつなぐことすらなくても。
彼の笑顔に、優しい心に、惹かれていたのだ。
だから、僕は。
助力を願って訪れた冒険者ギルドで彼を見つけたのだ。
自分に自信があったころなら、何でも一人でやってしまって、ギルドに依頼しにいくなんて発想はなかった。
まだ誰のものでもない彼と出会うことはなかっただろう。
彼と冒険して、ますます彼に惹かれた。
何が運命の神だ。
「僕は」
「俺は」
「俺たちはお前を許さない!お前を神とは認めない!お前なんか要らない!俺たちは、生きとし生きるこの世のものは、神が運命を定めなくても生きていけるんだ!」
歪みに腕を突き入れ、手を伸ばせば、ローゼの手が握り返す。
霧が晴れるように、再び。
俺たちの意識は城に繋がる。
「…ッ!どうしてッ!お前ら!」
ローブの男が後ずさる。
「神様!神様ぁっ!俺は……俺はどうしたら!」
イスリスが涙と鼻水を垂れ流す。
その両腕は、ない。
「いやあぁああ、私っ、私の顔がぁ!顔に傷がぁ!」
「わ、私の足……!」
オディールと元ラム伯爵も叫んでいる。
ラム伯爵の両足はねじりきられた痕があり、オディールの頬は剣によって裂かれた傷がある。衣服や体にも傷があった。
「………よぅ、よく 帰って来た。流石俺の息子たちだ…。」
「おかえりなさい。」
父上と伯父上が彼らと戦っていたのだ。
「さあ、アーサー。アイツをぶちのめそうぜ!」
「ああ!」
キィィィィィ!
今まで二人で助けて来た、火竜や山の聖獣たち、妖精たちが『僕たちも一緒に!』と言わんばかりに集まって来た。
天から降りた彼らとともに。
「な……ッ!お、俺は神……」
「ホーリークロス!」
「ぎぇ!」
神のくせにアーサーの放つ聖属性の十字の波動に身を焼く。
「ブースト!フレイムエンチャント!」
光速で移動し、火を纏った剣でそいつを焼き切る。
その後から、火竜が怒りの焔を吐き、雷獣が雷撃をうち、妖精たちが呪い、風の刃で切り裂き。
「………うぅ、俺は…神なのに…。」
ぼろぼろのそいつはふと、天を見て、驚愕する。
黒い雲がそいつの頭上にのみ現れ、天から巨大な腕が現れた。
そして、それは、ソレを掴み。
「ギャアアァアアアアアア!いやだ、俺は神なんだ、俺が運命の神として正しいんだあ!」
天から白い球が降り、腕に捕まれたそいつの周りをくるくると飛ぶ。
「ひぃ、お前は、先代…………ッ、い、」
ソレはいなくなり、白い球はこちらに向かって頭を下げた気がした。
腕もなくなり、雲も晴れた。
神の世界も色々あるらしい。
よくわからない、神の奇跡をもしかしたら目の当たりにしたのかもしれないが、分かったのは、『神である自分が定めた運命のシナリオに絶対従ってもらわないといけない』と考える傲慢な者は、もういないということだ。
後日、陛下から時戻りの力を与えてくれたのは、あの白い球だったと聞いた。
何度も何度も正しい歴史とやらは、イスリスやイスリスを傀儡の王として擁立する者たちによって大切なものを滅茶苦茶にする。
母を喪い。
父を喪い。
国を喪い。
愛する者を救えず、一生が終わる。
これまでの人生が夢で、本当はここが現実だったのではないかという気持ちになる。
だけど、僕は諦めない。
同じようにローゼも囚われているだろう。
(母上。僕に力を貸してください。)
願うと、空間が歪み、そこにローゼが見えた。
なんで僕たちが惹かれたのか、理解できた。
何回繰り返して、人の妻だと分かっていても、僕は彼を好きになってしまった。
結ばれなくてもいい、彼を助けてあげたかった。
お互いに、愛していた。
その関係が、夫婦や恋人でなくても。
キスどころか手をつなぐことすらなくても。
彼の笑顔に、優しい心に、惹かれていたのだ。
だから、僕は。
助力を願って訪れた冒険者ギルドで彼を見つけたのだ。
自分に自信があったころなら、何でも一人でやってしまって、ギルドに依頼しにいくなんて発想はなかった。
まだ誰のものでもない彼と出会うことはなかっただろう。
彼と冒険して、ますます彼に惹かれた。
何が運命の神だ。
「僕は」
「俺は」
「俺たちはお前を許さない!お前を神とは認めない!お前なんか要らない!俺たちは、生きとし生きるこの世のものは、神が運命を定めなくても生きていけるんだ!」
歪みに腕を突き入れ、手を伸ばせば、ローゼの手が握り返す。
霧が晴れるように、再び。
俺たちの意識は城に繋がる。
「…ッ!どうしてッ!お前ら!」
ローブの男が後ずさる。
「神様!神様ぁっ!俺は……俺はどうしたら!」
イスリスが涙と鼻水を垂れ流す。
その両腕は、ない。
「いやあぁああ、私っ、私の顔がぁ!顔に傷がぁ!」
「わ、私の足……!」
オディールと元ラム伯爵も叫んでいる。
ラム伯爵の両足はねじりきられた痕があり、オディールの頬は剣によって裂かれた傷がある。衣服や体にも傷があった。
「………よぅ、よく 帰って来た。流石俺の息子たちだ…。」
「おかえりなさい。」
父上と伯父上が彼らと戦っていたのだ。
「さあ、アーサー。アイツをぶちのめそうぜ!」
「ああ!」
キィィィィィ!
今まで二人で助けて来た、火竜や山の聖獣たち、妖精たちが『僕たちも一緒に!』と言わんばかりに集まって来た。
天から降りた彼らとともに。
「な……ッ!お、俺は神……」
「ホーリークロス!」
「ぎぇ!」
神のくせにアーサーの放つ聖属性の十字の波動に身を焼く。
「ブースト!フレイムエンチャント!」
光速で移動し、火を纏った剣でそいつを焼き切る。
その後から、火竜が怒りの焔を吐き、雷獣が雷撃をうち、妖精たちが呪い、風の刃で切り裂き。
「………うぅ、俺は…神なのに…。」
ぼろぼろのそいつはふと、天を見て、驚愕する。
黒い雲がそいつの頭上にのみ現れ、天から巨大な腕が現れた。
そして、それは、ソレを掴み。
「ギャアアァアアアアアア!いやだ、俺は神なんだ、俺が運命の神として正しいんだあ!」
天から白い球が降り、腕に捕まれたそいつの周りをくるくると飛ぶ。
「ひぃ、お前は、先代…………ッ、い、」
ソレはいなくなり、白い球はこちらに向かって頭を下げた気がした。
腕もなくなり、雲も晴れた。
神の世界も色々あるらしい。
よくわからない、神の奇跡をもしかしたら目の当たりにしたのかもしれないが、分かったのは、『神である自分が定めた運命のシナリオに絶対従ってもらわないといけない』と考える傲慢な者は、もういないということだ。
後日、陛下から時戻りの力を与えてくれたのは、あの白い球だったと聞いた。
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