人魚姫は復讐する~婚約破棄してくれてありがとうございます~

竜鳴躍

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聖なる魔女の子孫

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「俺が最初に異変を確信したのは、陛下たちや城の者たちのふるまいだった。いつもぼーっとして、話しかけても返事がない。そのくせ、宰相の言うことだけには反応し、言われるがままだった。陛下たち以外は、まだ自我が残っていたが、ことリチャードのこととなると、異様なほどお前を褒めちぎっていて、変だと思ったんだ。だから、様子が変わってしまったマリーンも、もしかしたら…。そう思った。」

お前には魔法はかかっていなかったのに、マリーンが変だって思わなかったんだな。



俺は、マリーンの手を握って、彼を見つめた。


「君は、もうリチャードの婚約者ではない。俺の婚約者に戻ってくれないか。」


「……はい。」


頬を赤らめ、潤んだ瞳でうなずく彼の細い指に、ダイヤモンドの指輪を嵌めた。



「…………グレイシャス侯爵!!!!!あなたって言う人は!私は、確かにリチャードの健康を願いました!立派な王子になってくれればと。ですが、こんな非道なことをしてまでかなえたかったわけではありません!!!」


王妃はマリーンの話を聞いて、怒り狂い、淑女のふるまいも忘れて公爵の襟首を縛り上げた。



「………くぅっ。」



「グレイシャス侯爵。あなたより俺の血筋の方が魔女として格が上だ。もう呪いのような魔法はかからないよう、みなを清めてありますので。」


トールは冷たい視線で侯爵を睨みつけた。



「トール!!!俺は信じないぞ! お前がマリーンを手に入れるためにこんな茶番を考えて、魔法をかけたのだろう!自分でかけたのなら、解くのもできるものな!」


「…リチャード、お前馬鹿か。ああ、バカだったな。お前の成績は魔法でYESマンになった教師が色を付けていただけだからな。」


トールは、自分から愛するマリーンを奪っておきながら、彼の窮地に気づかず、それどころか虐げて婚約破棄まで行った兄が許せなかった。



「黙れ黙れ!」


「リチャードさま、いいじゃないですか。リチャード様にはビビアンがおります!」


「お前なんかいらない、この偽物!」

「きゃあああ!」

リチャードはビビアンを手で振り払い、あまりにその扱いが乱暴だったため、ビビアンの顔に服の装飾で傷をつけてしまった。

顔面を抑えて流血し、うずくまる彼を気にも留めないリチャードは、衛兵から剣をぶんどると、トールに向かっていく。


「死ね!この悪しき魔女め!!!!!」



「……トール!」


マリーンの悲鳴にも、トールは落ち着いていた。

「全く分かってないな、身の程知らずだ。」


トールは落ち着いて、リチャードの剣先をいなすと、赤子の手をひねる様に彼の腕から剣を払い落とし、衛兵に向かって蹴って渡すと、腕を後ろ手に拘束して体を抑え込んだ。


「お前の剣の腕も、周りがほめていただけで、お前はそれほど腕がたつわけではないんだよ。全部侯爵の魔法のせいだ。魔法で、YESマンだらけにして、褒められるだけで叱られることはない。本当の実力が分からないまま、すごくなったと思い込んで、努力する機会を奪われたんだ。誰からも愛される、優秀でカリスマ性のある王太子はまやかし。自分で気づいて、自分を律するべきだったんだ。たとえお前が病弱でも、陛下はお前を次代の王にするつもりでいたんだから…。」


「そうだ。正妃の子が継ぐのが一番いい。私はお前たち二人とも同じように愛していたし、争いは嫌だった。トールはお前をよく支えるつもりでいたというのに。」

陛下が悔しそうに、ぐっと言葉を詰まらせた。





「うるさい!魔女!!!魔女めっ!」



「リチャード、もうやめなさい!」


「…母上。」


「亡くなったトールの母君はね、昔この国の王女が生まれたときに呪いをかけられたのを助けた魔女の子孫なのよ。
聞いたことがあるでしょう、ミシンの針に指をさして眠りにつく呪いをかけられた先祖の話を。彼女を救う魔法をかけた魔女。王女の誕生パーティに遅刻して、一番最後に祝福の魔法をかけた『聖女』の家系なのです。それを、貶めることは、貴方でも許されません!!」




正妃は、もう、自分の息子を見限っていた。
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