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閑話 ケインとローザとワイナリー、そして領民たち
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自分は仕事ができる男だと思っていた。
それなのに、実はただの『はんこ押し機』だった…。
影ではみんなお荷物だと思いながら、一応伯爵だし、兄のヴェネツィアには恩義があるから、何かしらの役職を与えないわけにはいかず、そこに置いてもらってただけだった。
領地経営もシンがやっていた。
卒業パーティの後、息子のケインと2人、執務室へ足を踏み入れて帳簿やノート類等を見てみたが、何が問題があるのか、この家に今どれだけお金があるのかチンプンカンプンだった…。
私だってケインだって、ローザも、学園の成績はよかったはずなのに。
テストでいい点を取る、その場限りのテスト対策が上手だっただけで、何も身についていなかったのだ。
私たちは自分が優秀だと思い込んでいる愚か者だった。
それが自覚できた時、情けなくて、その場にへたり込んで絶望してしまった。
シンが家のことを整えてくれていた。
使用人がいないから、今や、料理を作ってくれる者も、身支度を手伝ってくれる者も、掃除をしてくれる者も誰もいない。
ローザにやるように言ったが、癇癪を起された。
逆にドレスを脱がせろ、風呂に入りたいと言われたが、私たちにできるものか。
なんとかドレスを脱がせたが、少し破いてしまった。
ケインもローザもお嬢様おぼっちゃま育ちで、家の中のことは何一つできない。
仕方がないから、父の屋敷で少しは執事経験のある私が慣れない家事をがんばった。
ロザリアがいたなら、あれは侍女をさせられていたから、少しはできただろうに。
家の中のことをするのが精いっぱいで、でも、うまくやれず、息子と娘が騒ぎ立てる。
そんな時に、レイヤード殿下が我が家にやってきた。
廃太子になったレイヤードはローザと結婚することになっている。
まだ王子の身分だが、新しいヴェール伯爵になるらしい。
レイヤード殿下はシンの残した書類を見て、仕事をてきぱきとやりだした。
この領は、領民が愚かなせいで危機的状況にあるが、領民をある意味突き放して、強制的にことを進めることで、まだなんとかなるかもしれないと仰った。
レイヤード殿下は、必要最小限の使用人を雇い、草むしりや庭の手入れは私の仕事になった。
領民は、強硬な殿下に反感を抱き、デモまで行ったが、殿下が一喝し、今では大人しくなっている。
『なんてこった……。ヴェネツィア様がおっしゃってたことが、全て正しかったのか。』
『シン様の勧めた通りやっていたら…。私たちは幸せだったのに…。』
『着いて行く人を間違えた。』
自分たちのことは棚に上げて、酷い奴らだと思う。
レイヤード殿下は、外部から業者や技術者を招き入れ、シンの残した教育機関やリサイクル工場を機能させ、領地を盛り上げ始めた。
ついていけない元々の領民は、今は、昔の行いを後悔しながら、貧しい生活を送っている。
殿下の護衛とは名ばかりで、ただ後ろに突っ立っているばかりのケインには、就職先がない。
それならば、きちんとした護衛になって欲しいし、背後霊のように常に殿下のお尻を守っているよりは、町の入口にでも突っ立っていてほしいと思う。
そう注意したら、殿下が狙われるかもしれないから!とかいう阿保なことを言い出した。
殿下はもはや、私たちに何も期待していない目をしている。
ローザはローザで、殿下が構ってくれなくなった、冷たい!ドレスも買ってくれない!と文句ばかり言っている。
バカじゃないだろうか。
殿下は、すっかり傲慢さがなくなり、領地経営を上向きにする手腕が評価されつつある。
性格に難があり、ローザに騙されただけで、私とは違って彼は優秀なのだ。
廃太子にはなったが、まだ王族籍からは抜かれていない殿下。
きっと、そのうち殿下は行いを許され、こちらとは婚約を解消し、まともな家に臣籍降下するのではないか。
殿下は気づいていないが、たまに様子を見に来る使いの方々の表情や、陛下たちから殿下への手紙を見るに、そう思う。
殿下に捨てられた時、私たちはどうなるのだろう。
殿下の背後にいるのなら、ただボケーっとしていないで、殿下の仕事ぶりを学んでほしいものである。
それなのに、実はただの『はんこ押し機』だった…。
影ではみんなお荷物だと思いながら、一応伯爵だし、兄のヴェネツィアには恩義があるから、何かしらの役職を与えないわけにはいかず、そこに置いてもらってただけだった。
領地経営もシンがやっていた。
卒業パーティの後、息子のケインと2人、執務室へ足を踏み入れて帳簿やノート類等を見てみたが、何が問題があるのか、この家に今どれだけお金があるのかチンプンカンプンだった…。
私だってケインだって、ローザも、学園の成績はよかったはずなのに。
テストでいい点を取る、その場限りのテスト対策が上手だっただけで、何も身についていなかったのだ。
私たちは自分が優秀だと思い込んでいる愚か者だった。
それが自覚できた時、情けなくて、その場にへたり込んで絶望してしまった。
シンが家のことを整えてくれていた。
使用人がいないから、今や、料理を作ってくれる者も、身支度を手伝ってくれる者も、掃除をしてくれる者も誰もいない。
ローザにやるように言ったが、癇癪を起された。
逆にドレスを脱がせろ、風呂に入りたいと言われたが、私たちにできるものか。
なんとかドレスを脱がせたが、少し破いてしまった。
ケインもローザもお嬢様おぼっちゃま育ちで、家の中のことは何一つできない。
仕方がないから、父の屋敷で少しは執事経験のある私が慣れない家事をがんばった。
ロザリアがいたなら、あれは侍女をさせられていたから、少しはできただろうに。
家の中のことをするのが精いっぱいで、でも、うまくやれず、息子と娘が騒ぎ立てる。
そんな時に、レイヤード殿下が我が家にやってきた。
廃太子になったレイヤードはローザと結婚することになっている。
まだ王子の身分だが、新しいヴェール伯爵になるらしい。
レイヤード殿下はシンの残した書類を見て、仕事をてきぱきとやりだした。
この領は、領民が愚かなせいで危機的状況にあるが、領民をある意味突き放して、強制的にことを進めることで、まだなんとかなるかもしれないと仰った。
レイヤード殿下は、必要最小限の使用人を雇い、草むしりや庭の手入れは私の仕事になった。
領民は、強硬な殿下に反感を抱き、デモまで行ったが、殿下が一喝し、今では大人しくなっている。
『なんてこった……。ヴェネツィア様がおっしゃってたことが、全て正しかったのか。』
『シン様の勧めた通りやっていたら…。私たちは幸せだったのに…。』
『着いて行く人を間違えた。』
自分たちのことは棚に上げて、酷い奴らだと思う。
レイヤード殿下は、外部から業者や技術者を招き入れ、シンの残した教育機関やリサイクル工場を機能させ、領地を盛り上げ始めた。
ついていけない元々の領民は、今は、昔の行いを後悔しながら、貧しい生活を送っている。
殿下の護衛とは名ばかりで、ただ後ろに突っ立っているばかりのケインには、就職先がない。
それならば、きちんとした護衛になって欲しいし、背後霊のように常に殿下のお尻を守っているよりは、町の入口にでも突っ立っていてほしいと思う。
そう注意したら、殿下が狙われるかもしれないから!とかいう阿保なことを言い出した。
殿下はもはや、私たちに何も期待していない目をしている。
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バカじゃないだろうか。
殿下は、すっかり傲慢さがなくなり、領地経営を上向きにする手腕が評価されつつある。
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きっと、そのうち殿下は行いを許され、こちらとは婚約を解消し、まともな家に臣籍降下するのではないか。
殿下は気づいていないが、たまに様子を見に来る使いの方々の表情や、陛下たちから殿下への手紙を見るに、そう思う。
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