53 / 72
カタルシスらと悪女
しおりを挟む
カタルシスさんと愉快な仲間たちは、小高い山の採掘場で今日も暮らしていた。
ここには、現場監督と同じように鉱山送りになった人たちもいる。
熊みたいだったカタルシスさんは、男性機能を失って、すっかり女性のようになってしまった。
身長が高いのは変わりないものの、ひげが生えなくなり、体毛が薄くなり、最初の頃より幾分か女性化して美しくなり、ぱっと見、カタルシスだとは分からない。
それは、カナタをはじめとする4人の夫が代わる代わる愛してくれているからにほかならなかった。
鉱山送りになった他の者にカタルシスを穢されたくはない一心で、4人が独占しているのだ。
だって、鉱山には女はいない。
孕める男が来たら、もう、どうなるかは分かるというもの。
「あっ、ぴくって今動いた気がするぅ♡」
「カタルシスはゆっくりしててください。その分、俺たちが働いてくるんで!カナタ、俺たちがいない間、お守りしろよ!」
「任せてください!」
「ああ、素敵です。カタルシス様。あなたがこんなにかわいくなるなんて…。あなたは僕たちの奥さんですよ。ずっと、ずっと僕たちの腕の中で踊ってくださいね。」
「う、うん…♡」
カタルシスのお腹には、今、4人の誰かの子がいる。
カタルシスが子を産んだら、4人の実家が子の父親を判定後、その子を引き取ることになっていることを4人は知らない。
そして、彼らにこんな顛末を与えるきっかけになった悪女は、今、ブリザード王国へ渡ろうとしていた。
ローザの金を狙って。
「あーあ。王子様のお妃になれると思ってたのに…。なんで私が修道院に行かなきゃいけないのよ。」
宿の外で涼みながら星を見上げていると、鈴の音のような声が聞こえてくる。
「本当よねぇ。」
「あなたは誰?」
赤いワンピースを着た綺麗な人。長い黒髪を下ろして、白い肌に真っ赤な唇。夜の闇のような真っ黒な瞳。
「私は、ステラ=ミレニアム。この国の男爵令嬢だったのだけど、王太子に見初められて、結婚するはずだった。だけど、私は捨てられて、修道院に連れていかれて…。でも、今は娼婦をさせられているのよ。分かる?この意味。あなたも私と同じよね?」
修道院の生活が苦しくて逃げだしたが、生活費がなく勝手に娼婦に堕ちたのに、さも修道院の陰謀があるかのように悪女はローザに囁いた。
「ねえ、あなたはまだお金を持っているんでしょう?修道院に行けば、寄付金とか支度金とか性根を入れ替えたら返すだとか体のいいこと言って盗られるわ。逃げるなら今のうち。私はこのあたりに住んで長いから、地理に利がある。一緒に逃げましょう。北の国に行けば、私たちは自由よ。」
ローザはごくりと唾をのんで。
悪女の手を取った。
ここには、現場監督と同じように鉱山送りになった人たちもいる。
熊みたいだったカタルシスさんは、男性機能を失って、すっかり女性のようになってしまった。
身長が高いのは変わりないものの、ひげが生えなくなり、体毛が薄くなり、最初の頃より幾分か女性化して美しくなり、ぱっと見、カタルシスだとは分からない。
それは、カナタをはじめとする4人の夫が代わる代わる愛してくれているからにほかならなかった。
鉱山送りになった他の者にカタルシスを穢されたくはない一心で、4人が独占しているのだ。
だって、鉱山には女はいない。
孕める男が来たら、もう、どうなるかは分かるというもの。
「あっ、ぴくって今動いた気がするぅ♡」
「カタルシスはゆっくりしててください。その分、俺たちが働いてくるんで!カナタ、俺たちがいない間、お守りしろよ!」
「任せてください!」
「ああ、素敵です。カタルシス様。あなたがこんなにかわいくなるなんて…。あなたは僕たちの奥さんですよ。ずっと、ずっと僕たちの腕の中で踊ってくださいね。」
「う、うん…♡」
カタルシスのお腹には、今、4人の誰かの子がいる。
カタルシスが子を産んだら、4人の実家が子の父親を判定後、その子を引き取ることになっていることを4人は知らない。
そして、彼らにこんな顛末を与えるきっかけになった悪女は、今、ブリザード王国へ渡ろうとしていた。
ローザの金を狙って。
「あーあ。王子様のお妃になれると思ってたのに…。なんで私が修道院に行かなきゃいけないのよ。」
宿の外で涼みながら星を見上げていると、鈴の音のような声が聞こえてくる。
「本当よねぇ。」
「あなたは誰?」
赤いワンピースを着た綺麗な人。長い黒髪を下ろして、白い肌に真っ赤な唇。夜の闇のような真っ黒な瞳。
「私は、ステラ=ミレニアム。この国の男爵令嬢だったのだけど、王太子に見初められて、結婚するはずだった。だけど、私は捨てられて、修道院に連れていかれて…。でも、今は娼婦をさせられているのよ。分かる?この意味。あなたも私と同じよね?」
修道院の生活が苦しくて逃げだしたが、生活費がなく勝手に娼婦に堕ちたのに、さも修道院の陰謀があるかのように悪女はローザに囁いた。
「ねえ、あなたはまだお金を持っているんでしょう?修道院に行けば、寄付金とか支度金とか性根を入れ替えたら返すだとか体のいいこと言って盗られるわ。逃げるなら今のうち。私はこのあたりに住んで長いから、地理に利がある。一緒に逃げましょう。北の国に行けば、私たちは自由よ。」
ローザはごくりと唾をのんで。
悪女の手を取った。
50
あなたにおすすめの小説
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
婚約破棄された悪役令息は大公に嫁ぐ
佐倉海斗
BL
アレン・ブラッドフォードは侯爵家の三男として誕生した。その為、産まれた時から金山に恵まれているカーティス伯爵家に嫁ぐことが決められており、アランもそれ自体に不満はなかった。
アレンは転生者である。
この世界が前世の姉が買っていたBLゲームの世界と酷似していることを知っており、その世界における悪役令息と呼ばれる主人公の恋を邪魔する役目だということも、知っていた。だからこそ、魔法学院では息を潜めて過ごしてきた。
悪役令息の役目は果たされなかった。
その為、油断していたのである。
「婚約破棄をしてほしい」
婚約者のコリー・カーティスから婚約破棄を告げられるまでは、悪役令息だということを忘れていたくらいだった。
破滅回避のため、悪役ではなく騎士になりました
佐倉海斗
BL
三年前の卒業式の日を夢に見た。その夢は前世の記憶に関わるものだった。
本来ならば、婚約破棄を言い渡される場面のはずが、三年間の破滅を回避するために紳士的に接していた成果がでたのか、婚約破棄にはならず、卒業式のパートナーとして無事に選ばれ、BLゲームの悪役令息から卒業をしたのだ。
「……なにをしているのですか?」
夜中に目が覚めた。
腕に違和感があったからだ。両腕は紐でベッドの柵に縛られており、自由に動かすことができなくなっている。その上、青年、レイド・アクロイドの上を跨るように座り、レイドの服に手をかけていたのは夫のアレクシス・アクロイドだった。
本日、無事に結婚をしたのだ。結婚式に疲れ眠っていたところを襲われた。
執着攻め×敬語受けです。
元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。
くまだった
BL
新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。
金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。
貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け
ムーンさんで先行投稿してます。
感想頂けたら嬉しいです!
薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない
くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・
捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵
最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。
地雷の方はお気をつけください。
ムーンライトさんで、先行投稿しています。
感想いただけたら嬉しいです。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる