49 / 62
嫉妬
しおりを挟む
さっと教室が静まり、ここにある視線がすべて俺に注がれる。
今、俺は人生において一番注目を浴びているところだ!
もったいぶって堪能したいところではあるが、これ以上はさすがヤバイよな。
「お義姉さま!」
グローリアちゃんが飛びついてくる。
「ありがとう。よく頑張ってくれたわ」
「あ……はい! えへへ」
「エリヴィラさん。ごめんなさいね。私が後先考えずに飛び込んだせいで、こんなことになっちゃって」
「……レティシアさんのせいじゃないわ」
何でもない風を装っているけど、顔色が悪い。
髪を結いなおす暇もなかったのか、片方のおさげをほどいて真っすぐに落とした彼女は、固い表情も相まって、よくできたお人形みたいだ。
「みんな、こんなことやめてちょうだい」
少し低い声で、威厳をもって……って、こんな感じだろうか?
できる限りのお姉さまっぽい雰囲気を出せてるといいなぁ。
「ひゃっ」
「レティシアさん」
「でも」
たっぷりすぎるほど様子をうかがったおかげで呪いがめちゃめちゃ怖いわけではなく、それに加えてレティシアたちと仲のいいエリヴィラちゃんへの嫉妬もあっての行動なのだとわかった。
ならば、それを使わずしてどうする。
レティシアが特別だとみんなが思い込んでるなら、それをさらに演出するしかない!
今だけでいいので、素敵なお姉さまだと認識させるのだ!
そして『なお姉さまが言うのなら~」的になんとかノリと勢いで丸め込みたい!
まあ、すぐにレティシアも少し年上なだけのただのクラスメイトだと気付くだろうけど。
とにかく今だけなんとか!
けど、嫉妬ねぇ。
嫉妬。
嫌いじゃないよ~?
ドロドロしたマイナイメージが強いけど、それも人間としての素直な感情のひとつ!
嫉妬=悪。
みたいになってるけど、憧れと尊敬とかの気持ちの一部でもあると思うね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼女のことを考えるたびに、胸が痛くなる。
私より少しだけ勉強ができて。
私より少しだけ運動ができて。
私より少しだけ背が高くて。
私より少しだけきれいなあの子。
私より少し素敵なだけなのに、私よりものすごく輝いて見える。
それがうらやましくて、悔しくて、けど、彼女をうらやむ自分が嫌い。
こんな感情、彼女は持っていないんだろうな。
気にしても仕方ないのに、つい目で追ってしまう。
斜め後ろの角度から見える彼女は、相変わらず私より少しだけきれいな髪をしている。
彼女みたいだったら、もっと自信を持てただろうか?
彼女の隣で、自分が恥ずかしくて俯かないでいられただろうか?
ものすごい美人になれなくてもいい。
せめて今より少しだけきれいになれないだろうか?
だから、少しだけ、頑張ってみよう。
今日は胸を張ろう。
彼女が好きだと言ってくれる私を、好きになれるように。
彼女に恥じない自分になれるように。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
うん、有寄りのアリアリでしょう!
そんなわけで、エリヴィラちゃんをつるし上げてる子たちも、やっぱりかわいいのである。
なので、なるべく彼女たちも傷つけずこの場を切り抜けたい!
「この通り私はなんともないわ。エリヴィラさんを責めるのはお門違いよ! でも、心配かけてごめんなさいね」
「けど……」
「呪いだし」
「邪悪なものだし」
「やっぱり怖いわ」
「呪いなんかちっとも怖くないわ。私が証拠よ。こうして元気でいるんだから」
二年寝てたけどね!
中身変わってるけどね!
……うっわあぁぁぁぁぁーーー!!
呪い怖い!!
めっちゃ怖い!!
だ、だけど今言っちゃいけないやつな!
「それにエリヴィラさんは別に呪いを使うわけじゃないでしょ? 源流が呪いだったってだけ。今は魔法と呼ばれているものも遡れば呪いだったものも多いはずよ」
「そんなことは……」
「まさか……」
完全に口から出まかせだったが、動揺してるな。
「大体、魔法だって万能じゃないでしょ。呪いだってきっとおんなじ。エリヴィラさんにできるのはゴーレム術。私を眠らせたような呪いじゃないわ」
レティシアになって魔法をちょこちょこと見てきたけれど、この世界の魔法はけっこう不自由なのだ。
制限がかかった中で、研究して工夫して便利に使えるようにしていってる。
「だ、だけど……そうよ! ゴーレムを操れるなら人間だって操れるんじゃないの!? 呪いっ、お菓子に髪の毛入れて食べさせたら操れたりっ」
おお! それは面白いな!
「まあ、そんなことできるの?」
今、俺は人生において一番注目を浴びているところだ!
もったいぶって堪能したいところではあるが、これ以上はさすがヤバイよな。
「お義姉さま!」
グローリアちゃんが飛びついてくる。
「ありがとう。よく頑張ってくれたわ」
「あ……はい! えへへ」
「エリヴィラさん。ごめんなさいね。私が後先考えずに飛び込んだせいで、こんなことになっちゃって」
「……レティシアさんのせいじゃないわ」
何でもない風を装っているけど、顔色が悪い。
髪を結いなおす暇もなかったのか、片方のおさげをほどいて真っすぐに落とした彼女は、固い表情も相まって、よくできたお人形みたいだ。
「みんな、こんなことやめてちょうだい」
少し低い声で、威厳をもって……って、こんな感じだろうか?
できる限りのお姉さまっぽい雰囲気を出せてるといいなぁ。
「ひゃっ」
「レティシアさん」
「でも」
たっぷりすぎるほど様子をうかがったおかげで呪いがめちゃめちゃ怖いわけではなく、それに加えてレティシアたちと仲のいいエリヴィラちゃんへの嫉妬もあっての行動なのだとわかった。
ならば、それを使わずしてどうする。
レティシアが特別だとみんなが思い込んでるなら、それをさらに演出するしかない!
今だけでいいので、素敵なお姉さまだと認識させるのだ!
そして『なお姉さまが言うのなら~」的になんとかノリと勢いで丸め込みたい!
まあ、すぐにレティシアも少し年上なだけのただのクラスメイトだと気付くだろうけど。
とにかく今だけなんとか!
けど、嫉妬ねぇ。
嫉妬。
嫌いじゃないよ~?
ドロドロしたマイナイメージが強いけど、それも人間としての素直な感情のひとつ!
嫉妬=悪。
みたいになってるけど、憧れと尊敬とかの気持ちの一部でもあると思うね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼女のことを考えるたびに、胸が痛くなる。
私より少しだけ勉強ができて。
私より少しだけ運動ができて。
私より少しだけ背が高くて。
私より少しだけきれいなあの子。
私より少し素敵なだけなのに、私よりものすごく輝いて見える。
それがうらやましくて、悔しくて、けど、彼女をうらやむ自分が嫌い。
こんな感情、彼女は持っていないんだろうな。
気にしても仕方ないのに、つい目で追ってしまう。
斜め後ろの角度から見える彼女は、相変わらず私より少しだけきれいな髪をしている。
彼女みたいだったら、もっと自信を持てただろうか?
彼女の隣で、自分が恥ずかしくて俯かないでいられただろうか?
ものすごい美人になれなくてもいい。
せめて今より少しだけきれいになれないだろうか?
だから、少しだけ、頑張ってみよう。
今日は胸を張ろう。
彼女が好きだと言ってくれる私を、好きになれるように。
彼女に恥じない自分になれるように。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
うん、有寄りのアリアリでしょう!
そんなわけで、エリヴィラちゃんをつるし上げてる子たちも、やっぱりかわいいのである。
なので、なるべく彼女たちも傷つけずこの場を切り抜けたい!
「この通り私はなんともないわ。エリヴィラさんを責めるのはお門違いよ! でも、心配かけてごめんなさいね」
「けど……」
「呪いだし」
「邪悪なものだし」
「やっぱり怖いわ」
「呪いなんかちっとも怖くないわ。私が証拠よ。こうして元気でいるんだから」
二年寝てたけどね!
中身変わってるけどね!
……うっわあぁぁぁぁぁーーー!!
呪い怖い!!
めっちゃ怖い!!
だ、だけど今言っちゃいけないやつな!
「それにエリヴィラさんは別に呪いを使うわけじゃないでしょ? 源流が呪いだったってだけ。今は魔法と呼ばれているものも遡れば呪いだったものも多いはずよ」
「そんなことは……」
「まさか……」
完全に口から出まかせだったが、動揺してるな。
「大体、魔法だって万能じゃないでしょ。呪いだってきっとおんなじ。エリヴィラさんにできるのはゴーレム術。私を眠らせたような呪いじゃないわ」
レティシアになって魔法をちょこちょこと見てきたけれど、この世界の魔法はけっこう不自由なのだ。
制限がかかった中で、研究して工夫して便利に使えるようにしていってる。
「だ、だけど……そうよ! ゴーレムを操れるなら人間だって操れるんじゃないの!? 呪いっ、お菓子に髪の毛入れて食べさせたら操れたりっ」
おお! それは面白いな!
「まあ、そんなことできるの?」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる