5 / 7
特訓②
しおりを挟む
「ねえ心真君!特訓付き合ってー!」
朝。心真にもう静かな朝は訪れない。佳歩に稽古をつけるように青木先生に言われた次の日。早速佳歩に付きまとわれる一日が始まった。
「嫌だ。」
心真はその一点張り。このやり取りをもう10分続けている。すると佳歩が
「んじゃもういいですよ!1人でやりますー」
心真に「あっかんべー」と舌を出し佳歩は走って学校に向かった。
時は流れその日の夜。心真は小説を書いていた。『ロックはひたすら練習をした。全ては憧れのため。剣を振り、いつか憧れの存在のように華麗に舞う剣士を夢見て。
朝日が、夕日が、月明かりが照らしてくれた。』周りに認められたい少年ロックが、いつか皆に認められる日を夢見て鍛錬に励むシーン。
心真も「天才小学生時代」は家族に、先生に褒められるのが嬉しくて稽古に励んでいた。「自然と自分のこと書いてるみたいになっちゃってるなぁー」と少し照れくさくなり、文字を消した。
只今9時半。外は街灯に照られる住宅街。静かな夜の街から「せいっ!」と聞き慣れた(慣れてしまった)声が聞こえてきた。心真の家の隣は公園で自分の部屋から見ることが出来る。心真はまさかと思いカーテンを開け外の公園を見ると、そこにはぎこち無い動きで突き、蹴りの練習をしている佳歩の姿があった。
「今の文面でも、良かったかも」
心真はそう呟いて、上着を着た。
「お母さん、ちょっと稽古してくる」
「え、今から?遅くならないでね?」
「うん、わかってる。」
外に出ると、やはり佳歩が蹴りの練習をしていた。
「軸足が全く機能してないよ。気持ちかかとを相手に見せる感じでいいよ。」
いきなり心真の初めてのアドバイス。佳歩はポカンとして途端にニコッと笑った。
「押忍!」
佳歩は十字を切って返事をした。
「あと突きも肘を擦りつけるように突いて。肘が離れると見栄えが悪いから。」
心真も少し微笑んで更にアドバイス。
「あと…………………………………」
そしてもう一つ、心真は佳歩に空手について伝えた。佳歩は分からなそうだったが、少し考えて「お、押忍!」と返事をした。
それから次の日も、その次の日も、心真は佳歩の稽古に付き合った。何故か同時に心真の小説作品も、はかどっていた。
(んにしても、佳歩の覚えがいい…)
明日は入門テスト当日だ。
入門テスト当日。放課後佳歩と心真は道場に向かった。まだ稽古前があり、人は誰もいなかった……
「拳太以外な!」
バカだが真面目な拳太は稽古時間前から自主稽古で道場に来ていた。
「え、しんしんお前…………彼女?」
拳太は真剣な顔で聞いた。
「違う違う、こいつは…」
「私、村上佳歩って言います!同じ学校です!よろしくお願いします!!」
心真を振り払い佳歩は拳太に自己紹介をした。
「彼女じゃないのか!なんだ!よろしくな!」
拳太はノリよく挨拶を返した。
(拳太は佳歩と勢いがほぼ同じだから、勢いに押されることがないのか…)
振り払われた心真は似ている二人を少し距離をとって見ていた。
「おう、来たか村上。」
道場の奥から青木先生がやってきた。
「押忍!特訓してきました!」
佳歩も元気よく返す。
「では早速だが、入門テストの内容を発表する……」
心真の予想は単なる基本動作のテスト。そのために一週間、基本を佳歩に叩き込んできた。
「心真と村上に、組手をしてもらう。」
「シーン」と道場が静まった。時間差で3人は状況を飲み込み、「ハアアアア!?」と声を合わせて叫んだ。
心真のストーリーが、またもや崩された。
朝。心真にもう静かな朝は訪れない。佳歩に稽古をつけるように青木先生に言われた次の日。早速佳歩に付きまとわれる一日が始まった。
「嫌だ。」
心真はその一点張り。このやり取りをもう10分続けている。すると佳歩が
「んじゃもういいですよ!1人でやりますー」
心真に「あっかんべー」と舌を出し佳歩は走って学校に向かった。
時は流れその日の夜。心真は小説を書いていた。『ロックはひたすら練習をした。全ては憧れのため。剣を振り、いつか憧れの存在のように華麗に舞う剣士を夢見て。
朝日が、夕日が、月明かりが照らしてくれた。』周りに認められたい少年ロックが、いつか皆に認められる日を夢見て鍛錬に励むシーン。
心真も「天才小学生時代」は家族に、先生に褒められるのが嬉しくて稽古に励んでいた。「自然と自分のこと書いてるみたいになっちゃってるなぁー」と少し照れくさくなり、文字を消した。
只今9時半。外は街灯に照られる住宅街。静かな夜の街から「せいっ!」と聞き慣れた(慣れてしまった)声が聞こえてきた。心真の家の隣は公園で自分の部屋から見ることが出来る。心真はまさかと思いカーテンを開け外の公園を見ると、そこにはぎこち無い動きで突き、蹴りの練習をしている佳歩の姿があった。
「今の文面でも、良かったかも」
心真はそう呟いて、上着を着た。
「お母さん、ちょっと稽古してくる」
「え、今から?遅くならないでね?」
「うん、わかってる。」
外に出ると、やはり佳歩が蹴りの練習をしていた。
「軸足が全く機能してないよ。気持ちかかとを相手に見せる感じでいいよ。」
いきなり心真の初めてのアドバイス。佳歩はポカンとして途端にニコッと笑った。
「押忍!」
佳歩は十字を切って返事をした。
「あと突きも肘を擦りつけるように突いて。肘が離れると見栄えが悪いから。」
心真も少し微笑んで更にアドバイス。
「あと…………………………………」
そしてもう一つ、心真は佳歩に空手について伝えた。佳歩は分からなそうだったが、少し考えて「お、押忍!」と返事をした。
それから次の日も、その次の日も、心真は佳歩の稽古に付き合った。何故か同時に心真の小説作品も、はかどっていた。
(んにしても、佳歩の覚えがいい…)
明日は入門テスト当日だ。
入門テスト当日。放課後佳歩と心真は道場に向かった。まだ稽古前があり、人は誰もいなかった……
「拳太以外な!」
バカだが真面目な拳太は稽古時間前から自主稽古で道場に来ていた。
「え、しんしんお前…………彼女?」
拳太は真剣な顔で聞いた。
「違う違う、こいつは…」
「私、村上佳歩って言います!同じ学校です!よろしくお願いします!!」
心真を振り払い佳歩は拳太に自己紹介をした。
「彼女じゃないのか!なんだ!よろしくな!」
拳太はノリよく挨拶を返した。
(拳太は佳歩と勢いがほぼ同じだから、勢いに押されることがないのか…)
振り払われた心真は似ている二人を少し距離をとって見ていた。
「おう、来たか村上。」
道場の奥から青木先生がやってきた。
「押忍!特訓してきました!」
佳歩も元気よく返す。
「では早速だが、入門テストの内容を発表する……」
心真の予想は単なる基本動作のテスト。そのために一週間、基本を佳歩に叩き込んできた。
「心真と村上に、組手をしてもらう。」
「シーン」と道場が静まった。時間差で3人は状況を飲み込み、「ハアアアア!?」と声を合わせて叫んだ。
心真のストーリーが、またもや崩された。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる