フルコンタクト!!

みそしょうゆ

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特訓②

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「ねえ心真君!特訓付き合ってー!」

朝。心真にもう静かな朝は訪れない。佳歩に稽古をつけるように青木先生に言われた次の日。早速佳歩に付きまとわれる一日が始まった。

「嫌だ。」
心真はその一点張り。このやり取りをもう10分続けている。すると佳歩が
「んじゃもういいですよ!1人でやりますー」

心真に「あっかんべー」と舌を出し佳歩は走って学校に向かった。





時は流れその日の夜。心真は小説を書いていた。『ロックはひたすら練習をした。全ては憧れのため。剣を振り、いつか憧れの存在のように華麗に舞う剣士を夢見て。
朝日が、夕日が、月明かりが照らしてくれた。』周りに認められたい少年ロックが、いつか皆に認められる日を夢見て鍛錬に励むシーン。
心真も「天才小学生時代」は家族に、先生に褒められるのが嬉しくて稽古に励んでいた。「自然と自分のこと書いてるみたいになっちゃってるなぁー」と少し照れくさくなり、文字を消した。



只今9時半。外は街灯に照られる住宅街。静かな夜の街から「せいっ!」と聞き慣れた(慣れてしまった)声が聞こえてきた。心真の家の隣は公園で自分の部屋から見ることが出来る。心真はまさかと思いカーテンを開け外の公園を見ると、そこにはぎこち無い動きで突き、蹴りの練習をしている佳歩の姿があった。

「今の文面でも、良かったかも」
心真はそう呟いて、上着を着た。

「お母さん、ちょっと稽古してくる」

「え、今から?遅くならないでね?」

「うん、わかってる。」

外に出ると、やはり佳歩が蹴りの練習をしていた。

「軸足が全く機能してないよ。気持ちかかとを相手に見せる感じでいいよ。」
いきなり心真の初めてのアドバイス。佳歩はポカンとして途端にニコッと笑った。

「押忍!」
佳歩は十字を切って返事をした。

「あと突きも肘を擦りつけるように突いて。肘が離れると見栄えが悪いから。」
心真も少し微笑んで更にアドバイス。

「あと…………………………………」
そしてもう一つ、心真は佳歩に空手について伝えた。佳歩は分からなそうだったが、少し考えて「お、押忍!」と返事をした。




それから次の日も、その次の日も、心真は佳歩の稽古に付き合った。何故か同時に心真の小説作品も、はかどっていた。

(んにしても、佳歩の覚えがいい…)

明日は入門テスト当日だ。






入門テスト当日。放課後佳歩と心真は道場に向かった。まだ稽古前があり、人は誰もいなかった……
「拳太以外な!」
バカだが真面目な拳太は稽古時間前から自主稽古で道場に来ていた。

「え、しんしんお前…………彼女?」
拳太は真剣な顔で聞いた。

「違う違う、こいつは…」
「私、村上佳歩って言います!同じ学校です!よろしくお願いします!!」

心真を振り払い佳歩は拳太に自己紹介をした。

「彼女じゃないのか!なんだ!よろしくな!」
拳太はノリよく挨拶を返した。

(拳太は佳歩と勢いがほぼ同じだから、勢いに押されることがないのか…)
振り払われた心真は似ている二人を少し距離をとって見ていた。


「おう、来たか村上。」
道場の奥から青木先生がやってきた。

「押忍!特訓してきました!」
佳歩も元気よく返す。

「では早速だが、入門テストの内容を発表する……」

心真の予想は単なる基本動作のテスト。そのために一週間、基本を佳歩に叩き込んできた。

「心真と村上に、組手をしてもらう。」

「シーン」と道場が静まった。時間差で3人は状況を飲み込み、「ハアアアア!?」と声を合わせて叫んだ。

心真のストーリーが、またもや崩された。
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