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第1章
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――生きて帰れたらだけどな。
クロノが心中で漏らした自嘲混じりの呟き。
彼女は気付かなかっただろう。要は「戦わずに勝つ」と言うわけだ。
暫定〝鍵〟を相手にずいぶん余裕ある大人の対応みたいにも思えるが、考えようによっては、まともにぶち当たるより勝算があるのかもしれない。
と言うのは、あくまで希望的観測だった。
クロノには、つむじを見せたまま黙りこくっているそいつが、こちらの話に聞く耳を持ってくれるようにはどうしても見えなかった。その通りだと言わんばかりに、茶髪は荒ばせた砂塵からサッカーボール大の石塊を繰り出してくる。まだ作戦タイム中だと言うのに。
ミントと離れてしまっては、恐らく砂埃に阻まれて声も届かない。
おまけに、相手はこちらが設けた話し合いのテーブルなんか、ちゃぶ台を返す要領で引っ繰り返さんばかりの剣幕だ。
「空気読んでほしいよな……!」
攻撃を紋章術で受け止めようとするミントの手を引いて、疾走する。
間合いは変えない。ここ一帯は全て、奴の操作する砂が占めている。下手に近付いたり離れたりして、予測出来ない攻撃手段を用いてきたら面倒だった。
標的を軸にして旋回。
硬式どころではない尖ったサッカーボールが、背後で次々に砕け飛ぶ。
「く、クロノさんっ」
「――わかってる。連発は避けろ」
いくら鍵と関わりのある人間とはいえ、ミントが模造品の失敗作と呼ばれていたことも念頭に置かないといけない。状況が状況だ。彼女が紋章術を乱用して、前みたいにガス欠を起こしたのでは話にならない。
ざらついた音を立てながら、ひしめき合う砂丘。
両刃剣を中心に波紋がうねるさまは、磁石に操られる砂鉄の波のようにも見えた。
クロノは標的の動向を視界に捉えたまま、横目遣いに聞いた。
「あいつ、他に何か言ってたか」
「え?」
「何でも良い。他に話してたこと、何かないかな」
考え込む沈黙。
ややあって、はっきりとはわからないんですけど、と彼女は切り出し始めた。
「この地は我々が根差す場所だ、とか。私たちの聖地から立ち去れ、とか……」
要するに、縄張り意識過剰なチンピラの言い分か、心霊スポットの悪霊の恨み言か、ともかく見当違いなことを並べているわけだ。ついでに言えば、「我々」なんてわざわざ複数形で語る所以も良くわからない。やっぱり声なき声なんかに耳を傾けている場合じゃないのか。
見ると、ミステリーサークルのように軌跡を描き、うごめく砂礫の渦。
何か嫌な予感がする。
あからさまに眉を曇らせるクロノ。後ろでミントが語を続けた。
「何だか、あの人自身のことより、この場所のことばかり伝えようとしてた気がします」
「この場所のこと?」
「この場所そのものに、入れ込んでいるような……そんなイメージです」
イメージなんてスピリチュアルなことを言い切られてしまったら、どうにも答えようがない。
諦観混じりにため息をついた彼だったが。
ふと止まった。
「この場所そのもの」
うわ言のような、おうむ返し。
流砂の中心に立つローブ姿を、クロノの両眼が睨み据える。
相手が用いたのは、今のところ砂と石。
それだけでは、クロノが空気中にある水分を集積して繰り出すのと同じように、単に触覚出来る結晶か何かを操る紋章術のようにしか見えなかったが。
もしミントが聞いたと言うその言葉が、イメージが正しいのだとしたら。
〝大地〟そのものを操る紋章術。
――四大元素のひとつか。
紋章術の使い手として教科書的な知識が、クロノの脳裏を掠めた。
紋章術は、太古から人々の間で引き継がれてきた力、魔法術が派生したものだ。本来、火、水、風、地の四大元素のみを操ることが出来たと言われている魔法術。それが時代と継承を経て様々に派生したことで、クロノのように、四大元素と関連性のある能力を持つ者、紋章術の使い手が現れた。人間に誰しも個性や特徴があるように、それぞれ属性を持つ紋章術だが、その原型は全て古の魔法術だ。
今や純粋な四大元素を扱う紋章術の方が、貴重とされている時代だった。
相手が七つの鍵である推測が、さらに真実味を増した。
「……あの、クロノさんっ。どうかしたんですか?」
どこか焦ったような声音が飛んできた。
彼女も不穏な空気を感じ取っているらしい。
まあ見ればわかるか、と目前を見据えるクロノ。
とぐろを巻いた砂の海は、もはや巨大な生物と化していた。ミステリーサークルを思わせた円陣へ、砂と言う砂が大河のように流れ込んでいく。
さっきまでの波状攻撃とは、わけが違う。
――何か仕掛けてくる。
全身を刺すような、今までにない圧迫感。
クロノはおもむろにベルトに忍ばせていたフォールディングナイフを引き抜いた。指先で刃音を立て、折りたたまれた刃先を出す。
傍から見れば、ナイフ一本でどうするのかと失笑を呼ぶような状況だ。
しかも、ミントを振り返ったその横顔は、凶器とはあまりに不釣合いだった。
「……ごめん、また君に手伝ってもらうことになりそうなんだけど。良いかな?」
デートにでも誘っているつもりなのだろうか。
カッコつかないな、なんて付け足すクロノはばつが悪そうに金髪をかく。
ナイフを取り出したのに、調子外れな様子に、ミントも拍子抜けしたようだった。
「え、あ、はい。わたしが役に立てるなら――」
「奴の紋章術は、多分この場所そのものを操る、地の属性だ。で、紋章術には元々四つの属性があって、それぞれが相互関係を持つ。基本的に相反と相乗の二つだったかな」
「……あの、クロノさん?」
「確か、火と水、地と風は相反するんだ。相乗関係については――今はどうでも良いか。生きて帰れたら話す」
「…………」
「それで、なんだけど」
彼は金髪を砂交じりの風に揺らし、煙たげに目を細めると。
「作戦は変わらない。ただ君は奴の紋章術を打ち消してほしい。俺が引き付けるから」
慣れた風にナイフを片手で回して見せた。
ようやく彼の思惑を察したミントは、息を呑んだ。ふるふると首を振る。
「そんな! ナイフだけで引き付けるなんて――」
「ああ、もちろん紋章術も使う。紋章術を相手にナイフ一本じゃ、丸腰と同じだし。まあ、奴の気を引くための小道具かな」
当然だろ、といつものように苦笑するクロノ。
言うまでもない、彼は嘘をついていた。
この空間では紋章術は使えない。
二度目の嘘。
今度は出まかせとはいかないだろうと、そうとわかっていて、これほどまでに自然な言い草を貫ける少年は、相当に底意地が悪いに違いなかった。
「奴が純粋な魔導具なら、真逆の属性を体に直接干渉させれば、大人しくなるはずだろ。……と言うか、なってくれないと困る。もう時間がない」
「……でも、それで、あの人は大丈夫なんですか?」
「いや、俺は奴より君の方が危ないと思うんだ」
そんなの構っていられません、と言いたげに目付きを強めるミント。
それを遮るように、彼の言葉は率直に伝えられた。
「地に相反するのが風ってことは、風に相反するのも地だ。上手くいけば良いけど、対になる属性同士、相殺し合ったら君も――」
「大丈夫です」
躊躇ない口調。
クロノは思わず見つめ返した。ラズベリー色に揺らぎはない。
ミントも奴と同じように四大元素である風を操ることが出来る人間ではあるが、それはグラールの実験によって無理矢理に埋め込まれた、不安定な紋章術の可能性がある。しかも、例え首尾よく奴を黙らせることが出来たとしても、互いに相殺し合ったりしたら、その結果、彼女にどんな影響が及ぶかもわからないのだ。
砂原が、鳴動した。
ビリビリと背骨に電流が走るようだった。
魔導反応もここまでくると、もはや殺気も良いところだ。
この状況で何を根拠にそんな目をしているのだろうと、彼女に対して単純な疑問を抱いたクロノだったが。
「クロノさんがいるから、大丈夫です」
ミントは、とても柔らかく笑った。
今まで見てきた中で、一番穏やかな表情だった。
二の句が継げなかった。
だから、彼も思わず笑い返してしまう。
「……まあ、何とかなるか」
君もいるし。
とんちんかんな軽口を口際に、クロノはナイフのグリップを握り直した。
攻撃はしない。……いや、出来ない。
この切っ先が届く前に、紋章術の餌食だ。
でも、何故だろうか。不思議と恐怖はなかった。そして、迷いも。
――囮も二度目だからかな。
ふと笑みを零すと、彼は勢い良く砂上を蹴った。
クロノが心中で漏らした自嘲混じりの呟き。
彼女は気付かなかっただろう。要は「戦わずに勝つ」と言うわけだ。
暫定〝鍵〟を相手にずいぶん余裕ある大人の対応みたいにも思えるが、考えようによっては、まともにぶち当たるより勝算があるのかもしれない。
と言うのは、あくまで希望的観測だった。
クロノには、つむじを見せたまま黙りこくっているそいつが、こちらの話に聞く耳を持ってくれるようにはどうしても見えなかった。その通りだと言わんばかりに、茶髪は荒ばせた砂塵からサッカーボール大の石塊を繰り出してくる。まだ作戦タイム中だと言うのに。
ミントと離れてしまっては、恐らく砂埃に阻まれて声も届かない。
おまけに、相手はこちらが設けた話し合いのテーブルなんか、ちゃぶ台を返す要領で引っ繰り返さんばかりの剣幕だ。
「空気読んでほしいよな……!」
攻撃を紋章術で受け止めようとするミントの手を引いて、疾走する。
間合いは変えない。ここ一帯は全て、奴の操作する砂が占めている。下手に近付いたり離れたりして、予測出来ない攻撃手段を用いてきたら面倒だった。
標的を軸にして旋回。
硬式どころではない尖ったサッカーボールが、背後で次々に砕け飛ぶ。
「く、クロノさんっ」
「――わかってる。連発は避けろ」
いくら鍵と関わりのある人間とはいえ、ミントが模造品の失敗作と呼ばれていたことも念頭に置かないといけない。状況が状況だ。彼女が紋章術を乱用して、前みたいにガス欠を起こしたのでは話にならない。
ざらついた音を立てながら、ひしめき合う砂丘。
両刃剣を中心に波紋がうねるさまは、磁石に操られる砂鉄の波のようにも見えた。
クロノは標的の動向を視界に捉えたまま、横目遣いに聞いた。
「あいつ、他に何か言ってたか」
「え?」
「何でも良い。他に話してたこと、何かないかな」
考え込む沈黙。
ややあって、はっきりとはわからないんですけど、と彼女は切り出し始めた。
「この地は我々が根差す場所だ、とか。私たちの聖地から立ち去れ、とか……」
要するに、縄張り意識過剰なチンピラの言い分か、心霊スポットの悪霊の恨み言か、ともかく見当違いなことを並べているわけだ。ついでに言えば、「我々」なんてわざわざ複数形で語る所以も良くわからない。やっぱり声なき声なんかに耳を傾けている場合じゃないのか。
見ると、ミステリーサークルのように軌跡を描き、うごめく砂礫の渦。
何か嫌な予感がする。
あからさまに眉を曇らせるクロノ。後ろでミントが語を続けた。
「何だか、あの人自身のことより、この場所のことばかり伝えようとしてた気がします」
「この場所のこと?」
「この場所そのものに、入れ込んでいるような……そんなイメージです」
イメージなんてスピリチュアルなことを言い切られてしまったら、どうにも答えようがない。
諦観混じりにため息をついた彼だったが。
ふと止まった。
「この場所そのもの」
うわ言のような、おうむ返し。
流砂の中心に立つローブ姿を、クロノの両眼が睨み据える。
相手が用いたのは、今のところ砂と石。
それだけでは、クロノが空気中にある水分を集積して繰り出すのと同じように、単に触覚出来る結晶か何かを操る紋章術のようにしか見えなかったが。
もしミントが聞いたと言うその言葉が、イメージが正しいのだとしたら。
〝大地〟そのものを操る紋章術。
――四大元素のひとつか。
紋章術の使い手として教科書的な知識が、クロノの脳裏を掠めた。
紋章術は、太古から人々の間で引き継がれてきた力、魔法術が派生したものだ。本来、火、水、風、地の四大元素のみを操ることが出来たと言われている魔法術。それが時代と継承を経て様々に派生したことで、クロノのように、四大元素と関連性のある能力を持つ者、紋章術の使い手が現れた。人間に誰しも個性や特徴があるように、それぞれ属性を持つ紋章術だが、その原型は全て古の魔法術だ。
今や純粋な四大元素を扱う紋章術の方が、貴重とされている時代だった。
相手が七つの鍵である推測が、さらに真実味を増した。
「……あの、クロノさんっ。どうかしたんですか?」
どこか焦ったような声音が飛んできた。
彼女も不穏な空気を感じ取っているらしい。
まあ見ればわかるか、と目前を見据えるクロノ。
とぐろを巻いた砂の海は、もはや巨大な生物と化していた。ミステリーサークルを思わせた円陣へ、砂と言う砂が大河のように流れ込んでいく。
さっきまでの波状攻撃とは、わけが違う。
――何か仕掛けてくる。
全身を刺すような、今までにない圧迫感。
クロノはおもむろにベルトに忍ばせていたフォールディングナイフを引き抜いた。指先で刃音を立て、折りたたまれた刃先を出す。
傍から見れば、ナイフ一本でどうするのかと失笑を呼ぶような状況だ。
しかも、ミントを振り返ったその横顔は、凶器とはあまりに不釣合いだった。
「……ごめん、また君に手伝ってもらうことになりそうなんだけど。良いかな?」
デートにでも誘っているつもりなのだろうか。
カッコつかないな、なんて付け足すクロノはばつが悪そうに金髪をかく。
ナイフを取り出したのに、調子外れな様子に、ミントも拍子抜けしたようだった。
「え、あ、はい。わたしが役に立てるなら――」
「奴の紋章術は、多分この場所そのものを操る、地の属性だ。で、紋章術には元々四つの属性があって、それぞれが相互関係を持つ。基本的に相反と相乗の二つだったかな」
「……あの、クロノさん?」
「確か、火と水、地と風は相反するんだ。相乗関係については――今はどうでも良いか。生きて帰れたら話す」
「…………」
「それで、なんだけど」
彼は金髪を砂交じりの風に揺らし、煙たげに目を細めると。
「作戦は変わらない。ただ君は奴の紋章術を打ち消してほしい。俺が引き付けるから」
慣れた風にナイフを片手で回して見せた。
ようやく彼の思惑を察したミントは、息を呑んだ。ふるふると首を振る。
「そんな! ナイフだけで引き付けるなんて――」
「ああ、もちろん紋章術も使う。紋章術を相手にナイフ一本じゃ、丸腰と同じだし。まあ、奴の気を引くための小道具かな」
当然だろ、といつものように苦笑するクロノ。
言うまでもない、彼は嘘をついていた。
この空間では紋章術は使えない。
二度目の嘘。
今度は出まかせとはいかないだろうと、そうとわかっていて、これほどまでに自然な言い草を貫ける少年は、相当に底意地が悪いに違いなかった。
「奴が純粋な魔導具なら、真逆の属性を体に直接干渉させれば、大人しくなるはずだろ。……と言うか、なってくれないと困る。もう時間がない」
「……でも、それで、あの人は大丈夫なんですか?」
「いや、俺は奴より君の方が危ないと思うんだ」
そんなの構っていられません、と言いたげに目付きを強めるミント。
それを遮るように、彼の言葉は率直に伝えられた。
「地に相反するのが風ってことは、風に相反するのも地だ。上手くいけば良いけど、対になる属性同士、相殺し合ったら君も――」
「大丈夫です」
躊躇ない口調。
クロノは思わず見つめ返した。ラズベリー色に揺らぎはない。
ミントも奴と同じように四大元素である風を操ることが出来る人間ではあるが、それはグラールの実験によって無理矢理に埋め込まれた、不安定な紋章術の可能性がある。しかも、例え首尾よく奴を黙らせることが出来たとしても、互いに相殺し合ったりしたら、その結果、彼女にどんな影響が及ぶかもわからないのだ。
砂原が、鳴動した。
ビリビリと背骨に電流が走るようだった。
魔導反応もここまでくると、もはや殺気も良いところだ。
この状況で何を根拠にそんな目をしているのだろうと、彼女に対して単純な疑問を抱いたクロノだったが。
「クロノさんがいるから、大丈夫です」
ミントは、とても柔らかく笑った。
今まで見てきた中で、一番穏やかな表情だった。
二の句が継げなかった。
だから、彼も思わず笑い返してしまう。
「……まあ、何とかなるか」
君もいるし。
とんちんかんな軽口を口際に、クロノはナイフのグリップを握り直した。
攻撃はしない。……いや、出来ない。
この切っ先が届く前に、紋章術の餌食だ。
でも、何故だろうか。不思議と恐怖はなかった。そして、迷いも。
――囮も二度目だからかな。
ふと笑みを零すと、彼は勢い良く砂上を蹴った。
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