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第1章
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丈長の白衣を揺らし、広い洋館内を迷いない足取りで出口へと向かっていく男性。彼はその屋敷の見取り図を、先先代からのよしみで既に把握していた。
グラールから新たに引き抜いた使い手がいること、かつての実験の被験者がいること。
それらを結社リーダーから聞かされ、医者は今回の派遣業務を例外的に請け負ったのだが。
純粋な使い手の検体を採取できたのは予定通りだったにしても、まさかその被験者というのが、実験の最終段階まで進行の後、失踪したあの実験体のことだとは。
十二番。
紋章術や魔導器との関わりが薄く、本来なら、それらに対して拒絶反応を示すのが一般的な人間――ジェネラル。それでいて、少女は、魔導具を導入する器として、異例の適性の高さを見せた特異体だった。
当時、あの施設内では鍵の候補として最も有力視されていたために、男性は少女が、既に鍵へ転化している可能性すら考慮していた。彼女のほどの器だ。万全な設備を整えた上で再度実験を行なえば、あるいは、晴れて正規の模造品として生まれ変われるのかもしれなかったが。
医者は胸中でかぶりを振る。
――あの少年が付いていたのでは、駄目だ。
どうしてこうも結社関係者と言うのは普通の人間がいないのだろうか。
男性の脳裏で、鮮やかな金髪とは対照的に、猜疑心と敵意を湛えたようなほの暗い紅眼が浮かんだ。
一目でわかった。あれが一筋縄でいくはずがない。
その上、彼は自分の血液を検体として採取されることには異を唱えなかったというのに、少女のことに関しては特に敏感になるきらいがあるらしい。
グラールの実験体と、元グラールの使い手。
興味深い組み合わせではあるものの、努めて分け入りたい関係性とは言い難かった。
男性は、少年の片手がずっとベルトに回されたままだったのを、内心でこれ以上ないほどに警戒していたのだ。何らかの凶器を隠し持っていた可能性は十分にあったし、相手は紋章術の使い手。ジェネラル――いわゆる一般人を殺すのに、それほどの労力は伴わないはずだ。
それに、恐らくあの少年は、目的のためであれば、良心の呵責など感じない性質の持ち主だ。
心中穏やかでないとは、まさにこのことだった。
――これだから、結社関係者はご遠慮願いたい。
命がある内にさっさと失礼しよう、とこの結社の通信部に扉の開錠を申請しようとした時だ。
男性が取り出したケータイが震えた。
振動のパターンからして、電話着信だ。こんな時に誰だ、何てことは残念ながら考えるまでもなかった。
男性は眼鏡のブリッジを押し上げると、通話ボタンを押した。
『こら、ヤブ医者! 詐欺師! 冷血漢! いたいけな少年少女に、まるで奈落の谷底に突き落とすような入れ知恵をしておいて、ただでお家に帰るつもりだな!?』
受話器を耳から離しておいて正解だった。
ケータイが爆ぜんばかりに、結社リーダーの大音声を届けてきた。
「……失礼。少々、電波状況が悪いようなのですが」
『しらばっくれるんじゃないぞ、ソエスト。経過を見るだけ! 二人にはズバリ言わない! と言うオレとの固い約束はどうしてくれた。針を呑め。今すぐ呑め。万本呑め』
ソエストと名指された医者は、エイレンの大声に、眼鏡越しの両眼をこれでもかというほどに歪める。
「職業柄、お教えしないわけにもいきませんでしたので」
『お前のトークにはビブラートというもんが足りない。二人とも、迷子の子猫ちゃんのような顔をしていたぞ』
オブラートの間違いではないのか、とソエストは猛烈に気になったが、一々エイレンの口上をまともに取り合っていたのでは、体力が持たないということを、彼はずいぶん前に経験済みだ。不問に付すことにする。
何より、エイレンもまた彼らにずいぶん肩入れしている様子だ。下手に刺激して話をこじらせたくはなかった。
『それで、今日、見てみてどんな風だ? ソエスト。精霊がミントを冒すと思うのか?』
「その精霊という呼称が、私は好ましくないのですが。以前、申し上げた通りですよ。いくら精霊と同調しようが、ある一定まででしょう。もしくはその限度を超えることが、器を壊すことと同義か――」
あくまでも推測の域は脱しませんが。
電話越しの沈黙に、ソエストは素っ気無く付け足した。
「それと。初代はどうされますか。ご希望であれば、隔離病棟の最深部に移って頂くことも出来ますが」
エイレンは答えなかった。
いや、答えられなかったのだろうか。
彼が言葉を失う瞬間というのは、いつも隠し事を言い当てられた時だ。
ソエストに言わせれば、エイレンは根が純粋すぎた。隠せもしないのに、隠そうとするからこういうことに――余計に傷を広げることになる。
「セラが死んだ以上、あれをどうするも自由ですよ」
何の感情も訴えない、からっぽな言葉だった。
ソエストは、そう告げるように努めていた。
受話器の向こうで、少しの空白。
返った声は、普段の彼からは想像も付かないほどに、静けさを帯びていた。
『ちゃんと名前で呼んでやってくれ』
名前――。そんなものを、彼女は持ち合わせていただろうか。
ソエストは、今も隔離病棟の一室で、ぼんやりと虚空を眺めているであろう幼い少女を思う。
名前があるとすれば、〝初代〟だ。
人体実験の第一の被験者であり、実験創始者の仮の娘。そして、本来なら生き別れていたはずの、セラの半身。
セラと彼女は一卵性双生児だった。しかし、セラだけが生来の紋章術を有していたことが悲劇を呼んだ。ただそれだけのことが、彼女等の全てを狂わせてしまったのだ。
生来の紋章術と遺伝情報。
その密接な関係性を有力説として学会に君臨していた研究者に、二人の存在が知れたことが事の発端だった。彼女等の両親は、研究対象としてグラールに二人を差し出すことを求められたが、それを拒否。その後、結社間の抗争に巻き込まれ、無残に命を落とした。
グラールが、事故を装って殺害したことは明確だった。
両親を失った二人は、名目上は研究者の養子として引き取られたが、その実体は悲惨なものだった。
魔導具の精霊を宿すことによる、鍵の模造。
それが、紋章術を持たないジェネラルでしか実現不可能だとわかったとき、白羽の矢が立てられたのが、彼女だったのだ。
鍵の模造という異例の試みは、当時、成功すれば世紀の革新となり得た。その上、双子の一方を実験体として用いてしまえば、有力説にひびが入る恐れも減る。研究者はそれを踏まえた上で、実験体として養子を差し出したのだろう。
セラは里親である研究者とグラールに、激しく抵抗した。
何としても彼女の手を引いて、結社などとは無縁な世界へと連れ出そうとした。
しかし、紋章術を用いても、所詮は子供の悪あがきだった。
数多の使い手と紋章術師によって、セラは敗北した。
彼女は実験施設へと幽閉され、グラールに逆らった子供がどうなったのかは、本人にしかわからない。
それを最後に、彼女等は生き別れるはずだった。
数年後、セラがグラールへと所属しなければ。
ソエストは幼い頃、突然家にやってきて兄妹となった双子の顔を、今でもよく覚えている。
まるで戦地へと送り出された兵士のように、敵意と疎外感をまとっていた。そして、恐らく誰よりも術師結社を憎んでいた。――紋章術を、七つの鍵を憎んでいた。
それにも関わらず、何故セラはあそこまで、両親の仇であるグラールに忠誠を尽くす紋章術師となれたのか。動機があるとすれば、ひとつだ。セラは、グラールの技術力でしか、半身を救えないことを理解していた。
だからこそ、グラールを支えることがセラの全てだったのだ。
多くの失敗と犠牲を経ることで、やがては鍵の模造品を作り出すその技術が向上することを、そして、彼女を救い出す術になることを、信じていたのだろう。
ソエストの目には、それが最後の望みだと、縋っているようにすら見えていた。
「……初代は初めから、手の施せる状態ではないのですがね」
黙り込んだケータイ。
医者は、今はない仮初の家族へと語りかけるようにこぼした。
グラールから新たに引き抜いた使い手がいること、かつての実験の被験者がいること。
それらを結社リーダーから聞かされ、医者は今回の派遣業務を例外的に請け負ったのだが。
純粋な使い手の検体を採取できたのは予定通りだったにしても、まさかその被験者というのが、実験の最終段階まで進行の後、失踪したあの実験体のことだとは。
十二番。
紋章術や魔導器との関わりが薄く、本来なら、それらに対して拒絶反応を示すのが一般的な人間――ジェネラル。それでいて、少女は、魔導具を導入する器として、異例の適性の高さを見せた特異体だった。
当時、あの施設内では鍵の候補として最も有力視されていたために、男性は少女が、既に鍵へ転化している可能性すら考慮していた。彼女のほどの器だ。万全な設備を整えた上で再度実験を行なえば、あるいは、晴れて正規の模造品として生まれ変われるのかもしれなかったが。
医者は胸中でかぶりを振る。
――あの少年が付いていたのでは、駄目だ。
どうしてこうも結社関係者と言うのは普通の人間がいないのだろうか。
男性の脳裏で、鮮やかな金髪とは対照的に、猜疑心と敵意を湛えたようなほの暗い紅眼が浮かんだ。
一目でわかった。あれが一筋縄でいくはずがない。
その上、彼は自分の血液を検体として採取されることには異を唱えなかったというのに、少女のことに関しては特に敏感になるきらいがあるらしい。
グラールの実験体と、元グラールの使い手。
興味深い組み合わせではあるものの、努めて分け入りたい関係性とは言い難かった。
男性は、少年の片手がずっとベルトに回されたままだったのを、内心でこれ以上ないほどに警戒していたのだ。何らかの凶器を隠し持っていた可能性は十分にあったし、相手は紋章術の使い手。ジェネラル――いわゆる一般人を殺すのに、それほどの労力は伴わないはずだ。
それに、恐らくあの少年は、目的のためであれば、良心の呵責など感じない性質の持ち主だ。
心中穏やかでないとは、まさにこのことだった。
――これだから、結社関係者はご遠慮願いたい。
命がある内にさっさと失礼しよう、とこの結社の通信部に扉の開錠を申請しようとした時だ。
男性が取り出したケータイが震えた。
振動のパターンからして、電話着信だ。こんな時に誰だ、何てことは残念ながら考えるまでもなかった。
男性は眼鏡のブリッジを押し上げると、通話ボタンを押した。
『こら、ヤブ医者! 詐欺師! 冷血漢! いたいけな少年少女に、まるで奈落の谷底に突き落とすような入れ知恵をしておいて、ただでお家に帰るつもりだな!?』
受話器を耳から離しておいて正解だった。
ケータイが爆ぜんばかりに、結社リーダーの大音声を届けてきた。
「……失礼。少々、電波状況が悪いようなのですが」
『しらばっくれるんじゃないぞ、ソエスト。経過を見るだけ! 二人にはズバリ言わない! と言うオレとの固い約束はどうしてくれた。針を呑め。今すぐ呑め。万本呑め』
ソエストと名指された医者は、エイレンの大声に、眼鏡越しの両眼をこれでもかというほどに歪める。
「職業柄、お教えしないわけにもいきませんでしたので」
『お前のトークにはビブラートというもんが足りない。二人とも、迷子の子猫ちゃんのような顔をしていたぞ』
オブラートの間違いではないのか、とソエストは猛烈に気になったが、一々エイレンの口上をまともに取り合っていたのでは、体力が持たないということを、彼はずいぶん前に経験済みだ。不問に付すことにする。
何より、エイレンもまた彼らにずいぶん肩入れしている様子だ。下手に刺激して話をこじらせたくはなかった。
『それで、今日、見てみてどんな風だ? ソエスト。精霊がミントを冒すと思うのか?』
「その精霊という呼称が、私は好ましくないのですが。以前、申し上げた通りですよ。いくら精霊と同調しようが、ある一定まででしょう。もしくはその限度を超えることが、器を壊すことと同義か――」
あくまでも推測の域は脱しませんが。
電話越しの沈黙に、ソエストは素っ気無く付け足した。
「それと。初代はどうされますか。ご希望であれば、隔離病棟の最深部に移って頂くことも出来ますが」
エイレンは答えなかった。
いや、答えられなかったのだろうか。
彼が言葉を失う瞬間というのは、いつも隠し事を言い当てられた時だ。
ソエストに言わせれば、エイレンは根が純粋すぎた。隠せもしないのに、隠そうとするからこういうことに――余計に傷を広げることになる。
「セラが死んだ以上、あれをどうするも自由ですよ」
何の感情も訴えない、からっぽな言葉だった。
ソエストは、そう告げるように努めていた。
受話器の向こうで、少しの空白。
返った声は、普段の彼からは想像も付かないほどに、静けさを帯びていた。
『ちゃんと名前で呼んでやってくれ』
名前――。そんなものを、彼女は持ち合わせていただろうか。
ソエストは、今も隔離病棟の一室で、ぼんやりと虚空を眺めているであろう幼い少女を思う。
名前があるとすれば、〝初代〟だ。
人体実験の第一の被験者であり、実験創始者の仮の娘。そして、本来なら生き別れていたはずの、セラの半身。
セラと彼女は一卵性双生児だった。しかし、セラだけが生来の紋章術を有していたことが悲劇を呼んだ。ただそれだけのことが、彼女等の全てを狂わせてしまったのだ。
生来の紋章術と遺伝情報。
その密接な関係性を有力説として学会に君臨していた研究者に、二人の存在が知れたことが事の発端だった。彼女等の両親は、研究対象としてグラールに二人を差し出すことを求められたが、それを拒否。その後、結社間の抗争に巻き込まれ、無残に命を落とした。
グラールが、事故を装って殺害したことは明確だった。
両親を失った二人は、名目上は研究者の養子として引き取られたが、その実体は悲惨なものだった。
魔導具の精霊を宿すことによる、鍵の模造。
それが、紋章術を持たないジェネラルでしか実現不可能だとわかったとき、白羽の矢が立てられたのが、彼女だったのだ。
鍵の模造という異例の試みは、当時、成功すれば世紀の革新となり得た。その上、双子の一方を実験体として用いてしまえば、有力説にひびが入る恐れも減る。研究者はそれを踏まえた上で、実験体として養子を差し出したのだろう。
セラは里親である研究者とグラールに、激しく抵抗した。
何としても彼女の手を引いて、結社などとは無縁な世界へと連れ出そうとした。
しかし、紋章術を用いても、所詮は子供の悪あがきだった。
数多の使い手と紋章術師によって、セラは敗北した。
彼女は実験施設へと幽閉され、グラールに逆らった子供がどうなったのかは、本人にしかわからない。
それを最後に、彼女等は生き別れるはずだった。
数年後、セラがグラールへと所属しなければ。
ソエストは幼い頃、突然家にやってきて兄妹となった双子の顔を、今でもよく覚えている。
まるで戦地へと送り出された兵士のように、敵意と疎外感をまとっていた。そして、恐らく誰よりも術師結社を憎んでいた。――紋章術を、七つの鍵を憎んでいた。
それにも関わらず、何故セラはあそこまで、両親の仇であるグラールに忠誠を尽くす紋章術師となれたのか。動機があるとすれば、ひとつだ。セラは、グラールの技術力でしか、半身を救えないことを理解していた。
だからこそ、グラールを支えることがセラの全てだったのだ。
多くの失敗と犠牲を経ることで、やがては鍵の模造品を作り出すその技術が向上することを、そして、彼女を救い出す術になることを、信じていたのだろう。
ソエストの目には、それが最後の望みだと、縋っているようにすら見えていた。
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