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第1章
051
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「でもまあ、まさか鍵を殺しちゃうなんて、思い切ったことやるよねー」
「そうね。今までのガエブルグの動向から考えても、少し不自然だわ」
椅子に腰掛けて足をぶらぶらさせているナツメ。
ビビアンが円卓の木目に転がったエンブレムを見下ろし、物憂げに答える。
「ガエブルグの動向って……聞いたこともないですけど」
ずいぶん詳しいんだな、と口にされないクロノの問い掛け。
彼が所属していたグラールは数ある結社の中でも情報力に長けていたが、社内で、ガエブルグの動きはおろか、その名を聞くことすらなかったように記憶している。三大結社内で噂も立たなかったということは、元から目立った動きを見せない組織なのかもしれない。少なくとも、ビビアンいわく、本来なら鍵を殺すという暴挙に出るような結社ではないそうだが。
「通信部のトップともなると、色々な情報が入ってくるのよ。ガセネタも含めてね」
「あ、そっか。ビー、これからは情報屋で食べていこうよ」
「そうしたいところだけれど……。命がいくつあっても足りなそうだわ」
何やら、ビビアンは本気で転職を考慮しているように見えた。
難しい顔で、童顔を見つめ返す。
彼女たちは、グラールはもちろんのこと、カリバーンに対しても特別な愛着を感じていないのだろうか。
結社リーダーたるエイレンも、別段、二人の不誠実な会話を咎める様子もない。と言うより、クロノのつれない態度にほとんどいじけているようだった。エイレンは部屋の隅っこで花占いでも始めそうに、しょんぼりと円卓を見つめている。
ちなみに、好き嫌いなら占う必要もない。クロノは言うまでもなくエイレンに好意がない。
自分の目的の為に利用する他者を集めたところ。
カリバーンの特殊な方針が、彼等の統一性のなさをありありと表しているようだ。
こんな調子で一応は組織として機能している上に、七つある内の鍵のひとつをちゃっかり所持してしまっているのだから驚きだ。鍵と結社の志を崇拝している組織にしてみれば、さぞ傍迷惑な不良一味だろうと思う。クロノはこの結社が、グラールの厳格さに耐えられなくなった落ち武者の集いのような気がしてならなかった。
「『白雪姫』の情報が出回ったときは、真っ先にグラールを疑ったけれど。聖杯はタカ派でも、解明されていない謎をいきなり壊すような、無謀な手段は取らないわ」
「……けど、今回の件で、グラールも強攻策に出やすくなったはずですよね」
少年の言葉に、一同がそれぞれ反応を示した。
鍵を殺すことが、他の鍵にどのような影響を及ぼすのか。
もしグラールがそれを憂慮して、今まで強引な手を講じずにいたのだとしたら、今回のガエブルグの行動は、彼らの背中を押すことに他ならない。何せ、今までは、七つの鍵の内いずれかが欠けることが、他の鍵を連帯的に殺す――あるいは、全ての鍵を無力化する恐れもあると考えられていたのだ。
だが、実際に『白雪姫』が殺害されたことで、その推論は否定された。
どんな影響を受けているにしろ、『白雪姫』が失われても、残りの鍵は存在し続けている。その事実が、七つの鍵に対して慎重な姿勢を取ってきたグラールに、何らかのアクションを起こさせる可能性もある。
しかし、クロノの真剣な懸念に、元グラールの童顔術師は、にやりと企み顔を見せた。
「平気だよ。多分グラールは、そんなにすぐ動ける状態じゃないからさー」
「根拠でもあるんですか」
「だって、セラちゃんと私っていう紋章術師と、通信部トップのビーでしょ。それにグッチ君と、私たちに付いて来られるくらいの中堅のみんなが、リアフェールの抗争で一度にいなくなっちゃったんだよ。いくらグラールでも、体制を整えるのにおおわらわだよ」
指折り数えて言いながら、和服をひらひら靡かせ、クロノの隣席へと蝶のようによってくるナツメ。
この期に及んで本名を呼ばれないガンズを、なんとなく気の毒に思いながらも、クロノはツッコミを待ち望んでいる彼女を受け流した。もう食い付いてくれる本人もいないのだという事実に、ナツメは少しつまらなそうな――どこか寂しそうな顔を見せたが。
「ホントは、クロノ君の脱退も、けっこう問題になったんだよ」
彼女の思わぬ事後報告に、言われた本人は驚きを露にする。
「いや、それはないですよ。平の使い手がどうなろうと、グラールには影響がないし」
「それが、天下の紋章術師には影響があったのよ。私が情報操作をする前に、貴方を過労での脱退ということにしたのは、セラだったんだもの」
――ますますわからない。
何を考えていたんだ、とクロノはかつての上司と懐のシガレットを思う。
いつの間にかエイレンが顔を上げて、話に聞き入っていた。
セラの名前に反応したであろうことは、言うまでもない。
結社リーダーは、ようやく耳を傾ける気になったようだ。
「セラちゃんもゲッツ君も、ぶきっちょだったもんねー」
「ええ。環境が過酷すぎた所為かしら。グラールには、普通の人がいなかったわ」
昔の大恋愛でも話すように、感慨深い声で語るビビアン。
クロノは二人の会話に相槌を打つでも頷くでもなく、不意に机上に目を落とした。
何か独りで抱え込んでいるような、考え込んでいるような、どこか影の差した面持ち。
その姿がどう映ったのだろう。
椅子に乗ったナツメの後ろで、不安そうな顔を向けるミント。
彼は、ふと呟いた。
「本当に死んだんですよね?」
一同が、言葉を呑んだ。
円卓を包む空気が、さっと温度を失う。
「どうしたんだ、クロノ。お化けが苦手だと言ったのはお前だぞ」
いつそんなことをクロノ本人が言ったのか。
しかし、いわれのないエイレンの思い込みにも、彼は否定する素振りすら見せなかった。
メンバーの視線を一身に受けながら、独り言のように続ける。
「……何か引っかかる。グラールの連中が殉職してから、回収するまでの手際が良すぎた。街中での抗争だったから、一般人の手に使い手の遺体が渡らないように、急いだのかもしれないですけど――」
それにしたって早すぎる、と。
クロノは頭を抱えるように、金色の前髪をくしゃりと掴んだ。
「大体、上層部の人間がなんでわざわざ現場に来てたんですか。まるで、連中があそこで殉職するのを知ってたみたいなタイミングでしたよね。偶然にしては出来すぎてる」
無表情に漏らす少年に、誰もが言葉を失ったかに見えた。
確かにそうなのだ。
クロノの言わんとしていることは、元グラールの人間であるカリバーンのメンバーには手に取るようにわかったに違いない。むしろ、言うまい、考えまいとしていた彼等の代弁を、クロノが担ってしまったようなものだった。
本当に死んだのか。繰り返すクロノ。
そんな中、口をつぐんでいた少女が、独り声をかけた。
「あの、クロノさん。……落ち着いてください」
ミントの静かな声音に、視線を上げる暗紅色。
ほとんど怪我人を労わるような、心配げな彼女を捉えた。
クロノは苦笑混じりにかろうじて頷いたが、椅子から乗り出したナツメに顔を覗き込まれる。
「クロノ君さー。ちょっと考えすぎかもね。そんなに力入れてたら、肩凝るよ」
「……それが取り柄なんですよ」
「貴方って初めから、裏の裏まで考える人だったものね」
だから彼とタッグを組まされたんじゃないかしら。
ビビアンのいらぬ一言に、少年はため息をつく。
確かにガンズが相手では、正しく指示が伝わったのかどうか、通信部も気が気でない気持ちになったのだろうが。
クロノ、と斜交いから朗らかな呼び声。
彼が目をやると、赤髪の青年がヒマワリのようににかっと笑いかけた。
「もうここはグラールじゃないからな。安心して良いぞ!」
――どういう理屈なんだ。
呆れを通り越して疲れた風な顔で、エイレンを見やるクロノ。
彼はメンバーの注目の中、素っ気無く返答した。
「……見ればわかりますよ」
さもどうでも良さげな対応を返したというのに、何故かエイレンは満足げに頷いた。
素直じゃないな、などと思われているのかもしれない。
エイレンの持つ能天気な思考回路が嫌というほど洞察できたが、面倒なのでクロノは何も言わない。
「そうね。今までのガエブルグの動向から考えても、少し不自然だわ」
椅子に腰掛けて足をぶらぶらさせているナツメ。
ビビアンが円卓の木目に転がったエンブレムを見下ろし、物憂げに答える。
「ガエブルグの動向って……聞いたこともないですけど」
ずいぶん詳しいんだな、と口にされないクロノの問い掛け。
彼が所属していたグラールは数ある結社の中でも情報力に長けていたが、社内で、ガエブルグの動きはおろか、その名を聞くことすらなかったように記憶している。三大結社内で噂も立たなかったということは、元から目立った動きを見せない組織なのかもしれない。少なくとも、ビビアンいわく、本来なら鍵を殺すという暴挙に出るような結社ではないそうだが。
「通信部のトップともなると、色々な情報が入ってくるのよ。ガセネタも含めてね」
「あ、そっか。ビー、これからは情報屋で食べていこうよ」
「そうしたいところだけれど……。命がいくつあっても足りなそうだわ」
何やら、ビビアンは本気で転職を考慮しているように見えた。
難しい顔で、童顔を見つめ返す。
彼女たちは、グラールはもちろんのこと、カリバーンに対しても特別な愛着を感じていないのだろうか。
結社リーダーたるエイレンも、別段、二人の不誠実な会話を咎める様子もない。と言うより、クロノのつれない態度にほとんどいじけているようだった。エイレンは部屋の隅っこで花占いでも始めそうに、しょんぼりと円卓を見つめている。
ちなみに、好き嫌いなら占う必要もない。クロノは言うまでもなくエイレンに好意がない。
自分の目的の為に利用する他者を集めたところ。
カリバーンの特殊な方針が、彼等の統一性のなさをありありと表しているようだ。
こんな調子で一応は組織として機能している上に、七つある内の鍵のひとつをちゃっかり所持してしまっているのだから驚きだ。鍵と結社の志を崇拝している組織にしてみれば、さぞ傍迷惑な不良一味だろうと思う。クロノはこの結社が、グラールの厳格さに耐えられなくなった落ち武者の集いのような気がしてならなかった。
「『白雪姫』の情報が出回ったときは、真っ先にグラールを疑ったけれど。聖杯はタカ派でも、解明されていない謎をいきなり壊すような、無謀な手段は取らないわ」
「……けど、今回の件で、グラールも強攻策に出やすくなったはずですよね」
少年の言葉に、一同がそれぞれ反応を示した。
鍵を殺すことが、他の鍵にどのような影響を及ぼすのか。
もしグラールがそれを憂慮して、今まで強引な手を講じずにいたのだとしたら、今回のガエブルグの行動は、彼らの背中を押すことに他ならない。何せ、今までは、七つの鍵の内いずれかが欠けることが、他の鍵を連帯的に殺す――あるいは、全ての鍵を無力化する恐れもあると考えられていたのだ。
だが、実際に『白雪姫』が殺害されたことで、その推論は否定された。
どんな影響を受けているにしろ、『白雪姫』が失われても、残りの鍵は存在し続けている。その事実が、七つの鍵に対して慎重な姿勢を取ってきたグラールに、何らかのアクションを起こさせる可能性もある。
しかし、クロノの真剣な懸念に、元グラールの童顔術師は、にやりと企み顔を見せた。
「平気だよ。多分グラールは、そんなにすぐ動ける状態じゃないからさー」
「根拠でもあるんですか」
「だって、セラちゃんと私っていう紋章術師と、通信部トップのビーでしょ。それにグッチ君と、私たちに付いて来られるくらいの中堅のみんなが、リアフェールの抗争で一度にいなくなっちゃったんだよ。いくらグラールでも、体制を整えるのにおおわらわだよ」
指折り数えて言いながら、和服をひらひら靡かせ、クロノの隣席へと蝶のようによってくるナツメ。
この期に及んで本名を呼ばれないガンズを、なんとなく気の毒に思いながらも、クロノはツッコミを待ち望んでいる彼女を受け流した。もう食い付いてくれる本人もいないのだという事実に、ナツメは少しつまらなそうな――どこか寂しそうな顔を見せたが。
「ホントは、クロノ君の脱退も、けっこう問題になったんだよ」
彼女の思わぬ事後報告に、言われた本人は驚きを露にする。
「いや、それはないですよ。平の使い手がどうなろうと、グラールには影響がないし」
「それが、天下の紋章術師には影響があったのよ。私が情報操作をする前に、貴方を過労での脱退ということにしたのは、セラだったんだもの」
――ますますわからない。
何を考えていたんだ、とクロノはかつての上司と懐のシガレットを思う。
いつの間にかエイレンが顔を上げて、話に聞き入っていた。
セラの名前に反応したであろうことは、言うまでもない。
結社リーダーは、ようやく耳を傾ける気になったようだ。
「セラちゃんもゲッツ君も、ぶきっちょだったもんねー」
「ええ。環境が過酷すぎた所為かしら。グラールには、普通の人がいなかったわ」
昔の大恋愛でも話すように、感慨深い声で語るビビアン。
クロノは二人の会話に相槌を打つでも頷くでもなく、不意に机上に目を落とした。
何か独りで抱え込んでいるような、考え込んでいるような、どこか影の差した面持ち。
その姿がどう映ったのだろう。
椅子に乗ったナツメの後ろで、不安そうな顔を向けるミント。
彼は、ふと呟いた。
「本当に死んだんですよね?」
一同が、言葉を呑んだ。
円卓を包む空気が、さっと温度を失う。
「どうしたんだ、クロノ。お化けが苦手だと言ったのはお前だぞ」
いつそんなことをクロノ本人が言ったのか。
しかし、いわれのないエイレンの思い込みにも、彼は否定する素振りすら見せなかった。
メンバーの視線を一身に受けながら、独り言のように続ける。
「……何か引っかかる。グラールの連中が殉職してから、回収するまでの手際が良すぎた。街中での抗争だったから、一般人の手に使い手の遺体が渡らないように、急いだのかもしれないですけど――」
それにしたって早すぎる、と。
クロノは頭を抱えるように、金色の前髪をくしゃりと掴んだ。
「大体、上層部の人間がなんでわざわざ現場に来てたんですか。まるで、連中があそこで殉職するのを知ってたみたいなタイミングでしたよね。偶然にしては出来すぎてる」
無表情に漏らす少年に、誰もが言葉を失ったかに見えた。
確かにそうなのだ。
クロノの言わんとしていることは、元グラールの人間であるカリバーンのメンバーには手に取るようにわかったに違いない。むしろ、言うまい、考えまいとしていた彼等の代弁を、クロノが担ってしまったようなものだった。
本当に死んだのか。繰り返すクロノ。
そんな中、口をつぐんでいた少女が、独り声をかけた。
「あの、クロノさん。……落ち着いてください」
ミントの静かな声音に、視線を上げる暗紅色。
ほとんど怪我人を労わるような、心配げな彼女を捉えた。
クロノは苦笑混じりにかろうじて頷いたが、椅子から乗り出したナツメに顔を覗き込まれる。
「クロノ君さー。ちょっと考えすぎかもね。そんなに力入れてたら、肩凝るよ」
「……それが取り柄なんですよ」
「貴方って初めから、裏の裏まで考える人だったものね」
だから彼とタッグを組まされたんじゃないかしら。
ビビアンのいらぬ一言に、少年はため息をつく。
確かにガンズが相手では、正しく指示が伝わったのかどうか、通信部も気が気でない気持ちになったのだろうが。
クロノ、と斜交いから朗らかな呼び声。
彼が目をやると、赤髪の青年がヒマワリのようににかっと笑いかけた。
「もうここはグラールじゃないからな。安心して良いぞ!」
――どういう理屈なんだ。
呆れを通り越して疲れた風な顔で、エイレンを見やるクロノ。
彼はメンバーの注目の中、素っ気無く返答した。
「……見ればわかりますよ」
さもどうでも良さげな対応を返したというのに、何故かエイレンは満足げに頷いた。
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